株式会社広島銀行/株式会社ひろぎんホールディングス

ひろぎんアプリを中心にSalesforce Marketing Cloudで実現する デジタルコミュニケーション

Salesforce Marketing Cloudでデジタルコミュニケーション施策をシナリオ化。
スマホを通してお客様に寄り添うコンシェルジュに。
非金融サービスを提供するコミュニケーションも視野に取り組みを開始。

株式会社広島銀行(以下、広島銀行)は、スマホアプリをB2Cデジタルコミュニケーションの中心と位置づけています。口座をご利用の個人のお客様の4人に1人が使用しているひろぎんアプリは、2023年7月にデザインを一新しリニューアル。また同時にSalesforce Marketing Cloudと連携しコミュニケーション機能を実装することで、ユーザーにとってより親しみやすく便利なアプリへと進化させます。
Salesforce Marketing Cloudの採用の背景と、今後のマーケティング機能活用の展望について紹介します。
 
 

1. ひろぎんアプリがデジタルコミュニケーションの中心

広島銀行は、広島、岡山、山口、および愛媛の4県においてビジネスを展開し、地域経済を支えています。預金量や顧客数などの指標において、トップ10に入る有力地銀。デジタル戦略は自行の方向性を明確にした上でドラスティックな改革を続けており、中でも2022年末に発表された共同利用システム「MEJAR」への移行計画は業界内外から驚きを持って受け止められました。

顧客向けのデジタルを通した価値提供の中心は、スマホで提供している「ひろぎんアプリ」です。2016年にリリースしたこのアプリは、口座開設機能からスタートし、2019年2月に残高照会機能を追加。現在も機能追加しながら進化を続けています。2016年当時は “口座開設時に使われるだけ”の口座開設アプリが主流であった中で、同行の「口座開設後もアプリで顧客とつながり続ける」というコンセプトは斬新なものでした。

ひろぎんホールディングス 執行役員 グループ営業戦略部 営業統括グループ長 堀井 利英氏は、「私たちは、主要営業地域に住んでいるすべてのお客様と長期的な信頼関係を築き、さまざまな取引をしていただきたたいと考えています。私たちとの関係がすばらしいものであれば、個人のお客様にファンでいていただけることはもちろん、お子様、お孫様と世代を経てもこの地域との関係を維持できるかもしれません」と話します。「日本は人口減少期にあり、地方経済も厳しい状況です。お客様の域外への転出は資産の流出と言えますが、いずれは戻ってきていただけるかもしません。関係を続けることで、そのひとつのきっかけになりたいのです」。

その後もアプリは機能追加を続け、いまではデジタルチャネルの中心になっています。口座をご利用の個人のお客様の4人に1人がアプリを利用、そのうち約74%の方が月に1回以上利用しており、ダウンロード数も順調に伸びています。

2023年7月、このアプリに新たなマーケティング機能が追加されました。Salesforce Marketing Cloudを活用し、アプリ内にバナーやポップアップ画面などで銀行からのお知らせを配信するだけでなく、お客様1人ひとりのニーズに合う(属性や行動ログからニーズがあると判断した)情報コンテンツを配信する仕様になっています。

 
 
 
 

2. デジタルのさらなる活用を目指す方針でMAの機は熟した

広島銀行では、長くマーケティングオートメーション(以下、MA)の導入を課題の1つとしてきました。ホームページやアプリ、ATMなどに属性に応じてバナーを表示するといった対応は実施していたものの、メールやSMSの配信は手動で行われており、自動化することで作業負担が下がるという期待と、何よりデジタルチャネルでのお客様の行動ログを把握することで、お客様のニーズをつかみたいという課題を持っていたためです。

ひろぎんホールディングス グループ営業戦略部営業統括グループ 営業戦略室 担当課長 谷本 知春氏は、「アプリ立ち上げ当初、担当は私1人で、アプリの立ち上げから企画運用を行っていました。その後、アプリの企画・運用チームは3名程度にまでになりました。アプリを軸としたデジタルマーケティングについて具体的に検討を開始し始めたのは2年程前でホールディングス体制になったばかりのころです。過去にもMA導入について検討し、情報収集をしたこともあるのですが、導入・運用となると片手間でできるものではなく、それなりの人数も体制も、またツールや分析のスキルも必要です。組織として決定してもらい、覚悟を持って取り組まなければならないため、タイミングを探っていました」と振り返ります。

2020年代に入ってFintechが注目を集め、アプリの存在感は年々増してくるなか、経営陣がデジタルのさらなる活用を目指す方針を示したことで、機は熟しました。デジタルマーケティング実施に向けた機関決定を受け、具体的な検討に入るとともに、ソフトウェアの選定に入りました。選定についてはコンサルティング会社と契約し、既存で使用していたMAツールの拡張利用を含め複数のソフトウェアについて検討したうえで、第三者であるコンサルティング会社のアドバイスを踏まえてSalesforce Marketing Cloudを利用することに決定しました。

「アプリを中心にデジタルコミュニケーションを実行するという視点に立つと、SDKやAPIを活用し、やりたいことが柔軟に実現できるSalesforce Marketing Cloudが最適だという結論に達しました。チャネル横断でシナリオを作成できますし、アプリ向けの機能も標準で備わっています。他ツールと連携できる点も魅力で、総合的にも高評価でした」(谷本氏)

開発には約1年の期間をかけました。アプリにMarketing Cloud MobilePushのSDKを組み込んで通知を送れるようにし、またAPIを活用し、お客様ごとにセグメントされた情報配信ができるページをアプリに構築しました。「開発には、アプリベンダー様、コンサルティング会社様にもご協力いただき、タイトなスケジュールで実装できたのも皆さまのおかげです」(谷本氏)
その中で、コミュニケーション施策についても口座開設のお礼シナリオや住宅ローンシミュレーション後のプロモーションバナー掲出などステップ数が少ないものに加え、金融商品のニーズ把握を目的に年代や貯蓄額などで分岐をするジャーニーを作り込んだシナリオも用意。稼働時には5種類のマーケティング施策を自動化するシナリオを組み込んでスタートしました。

 
 
 
 

3. 法人向け営業/マーケティングにも展開へ

運用開始後にまず着手したいのは、今回のデジタルマーケティングで目指す“顧客とのリレーション構築”を図るKPIの最適値を探ることです。“顧客とのリレーションが深まる”という言葉が何を指し、どのように指標化すればよいのか?これまで取引の増加を目指したコミュニケーションが主体だった同行にとって、リレーションを深めるためにはどのような施策が求められるのか、お客様に何を提供していくべきなのかを常に考え続けなければなりません。

経験的には、「預かり資産が多ければ多いほどリレーションが深い」とは言えず、日常的にひろぎんの口座をご利用いただきつつ、金融商品ニーズが発生した際にひろぎんを選択いただけるお客様を増やしていきたいと考えています。今後は、Salesforce Marketing Cloudによって顧客の行動を詳細に把握することで、ニーズのある顧客像をより明確にすることも期待できます。

前述した定期預金や投資信託などの金融商品をおすすめする際にも、セグメントを絞ったバナーの配信やアプリで提供する情報の出し分けも実現できます。その後は、ユーザの反応を探りながら反応に応じたプロモーションを実行します。ライフステージに合わせた提案をするためには、年代や性別など銀行が持っている以外のタイムリーな情報で判断し実行する必要があり、そういった顧客情報把握がこれからの取り組み課題です。

また、同行は、現在の「トータルポイントサービス」をリニューアルし、新たに「ひろぎんポイント」をリリース予定です。
従来のATM手数料を中心とした優遇サービス(トータルポイントサービス)の提供に加えて、「ひろぎんアプリ」をご利用いただいている方を対象に、お取引に応じた「ひろぎんポイント」が貯まるサービスです。貯まったポイントは、国内で提供されている主要な共通ポイントや地元企業が提供するポイントに交換できるスキームを準備中です。今後は、そのポイントサービスとも連携し、アプリ内の行動に応じてポイントを付与したり、アプリを通じてポイントの還元を行ったり、またポイントの付与状況もアプリでお知らせするなどのコミュニケーションを検討しています。

このプロジェクトは、ひろぎんホールディングスにおいて最初の本格的なMA導入になります。証券やリースなどグループ会社での利用も視野に入っており、今回のB2C領域への適用に続き、広島銀行の法人向け営業/マーケティング活動への展開も検討していく予定です。

堀井氏は、「法人が強くなることは、地域が強くなることと同義です。デジタルとリアルを組み合わせた新しいやり方で、地域の活性化にさらに貢献したいと考えています」と話してくれました。

 
 
※ 本事例は2023年7月時点の情報です
 

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