株式会社イビコン

製造業にありがちな属人的・御用聞き営業から、論理的な法人営業スタイルの確立へ

Sales CloudとAccount Engagementでカスタマージャーニーを可視化、地域別だった営業組織も機能別に再編し、社内の意識変革を推進

全国約100社の同業企業と連携し、オリジナルの課題解決型コンクリート二次製品を製造・販売する株式会社イビコン。ここでは営業活動が属人化しており、協力会社や設計会社に対して「論理的な営業手法」を提示できないことが、大きな課題になっていました。この問題を解決するために導入されたのが、Sales CloudとAccount Engagementです。

これによってカスタマージャーニーを可視化すると共に、リードを確実に売上へとつなげられる仕組みを構築。営業組織も地域別から機能別へと再編し、社内の意識変革も推進しています。これによって、属人的な「御用聞き営業」から、「可視化・言語化」できる営業へとシフト。今後はこの仕組みを協力会社にも展開し、リード情報の共有などを進めていくことが視野に入っています。

 
 

1. 協力会社の販売を支援するため、営業手法の「言語化」が必要に

地域住民がより快適に、より安全に、より安心に生活を送れる環境づくりに貢献したい。このような思いから、道路などの社会資本整備で使用されるコンクリート二次製品の製造・販売を手掛けているのが、株式会社イビコン(以下、イビコン)です。同社の製品は全国約100社の協力会社(イビコンの同業企業)が取り扱っており、安全な道路づくりや路面の排水性の確保、景観の保護などに役立てられています。

「コンクリート製品には大きく2つの課題があります」と語るのは、イビコン 代表取締役の清水 義弘 氏。第1の課題は「重くて安い」ため、遠くまで運ぶのが難しいことだと説明します。「汎用品であれば、トラックに満載しても25万円程度の売上にしかならず、遠くまで運べば2割位が運賃で消えてしまいます。そのため半径100km以内が一般的に搬送可能な商圏エリアとなっています」。

もう1つの課題は、汎用品は全国で激しい競争にさらされており、大きな付加価値を生みづらいということです。そのためイビコンでは40年以上前から、多様な場所に短時間でガードレールを設置できる「自在R連続基礎ブロック」など、自社オリジナルの「課題解決商品」に力を入れていたと語ります。

「これらのオリジナル商品は、コアとなる資材(主に金属部品)を当社で製造し、それを全国の協力会社に提供、そこでコンクリート二次製品へと加工して販売されています。全国6拠点の営業所が各地でサポートしてきました。このような方法で10年前からオリジナル商品の販売割合を増やし続けており、現在では利益ベースで8割を占める戦略的ビジネス領域になりました」。

その一方で、オリジナル商品の営業に関して、いくつかの課題があったとも振り返ります。

「当社独自のオリジナル商品なので、各営業所の営業担当者が手探りで営業活動に取り組んでいました。その具体的な活動内容は、役所を訪問して設計図面に当社商品を入れていただく、設計を受注した建設コンサルタント会社に提案する、工事を受注した施工会社に営業を仕掛ける、というものですが、商品ごとに売り方が異なっており、営業活動そのものが属人的になっていたのです。そのため約100社の協力会社の中には具体的な提案方法が分からず、イビコンの営業担当者に依存しているケースも少なくありませんでした」。

そもそもコンクリート二次製品の会社の多くは、主に汎用品を扱ってきたこともあり、オリジナル商品の訴求に関する知見がないことが多いと指摘するのは、イビコン 執行部 代表執行役員で、カスタマーサクセス部 部長とDX事業部 部長も兼務する渡邊 朋胤 氏。このハードルを乗り越えていくには、具体的な営業手法を「言語化」し、その方法で成果が出ることを「エビデンス」で示す必要があるのだと語ります。

「しかし営業手法が属人化したままでは言語化できません。このままではオリジナル商品のビジネスに限界がくると危惧していました」。

 
 
 
 

2. Salesforceの事例は理想の姿、その実現を目指し採用を決定

この問題の解決に向け最初に取り組んだのが、マーケティングの強化でした。2021年12月に、他社のMAツールが導入されています。そこに至るまでの背景について、渡邊氏は次のように説明します。

「実は10年ほど前にホームページを再構築し、会員登録制で当社商品のCADデータをダウンロードできるようにしました。その後にコロナ禍がきたこともあり、こちらから営業をしなくともお声がけいただける機会が増えていました。このようなホームページから流入したリードを売上につなげるため、まずはMAツールでシナリオベースのナーチャリングを行い、商談につながりそうなリードをリスト化して、営業担当者に提供することにしたのです」。

この取り組みによって「見込み客数」などのマーケティングKPIは一気に向上。これを梃子に「マーケティングから営業を変える」ことを目指したものの、結果的には思うような成果が出せなかったと言います。営業担当者に提供したリストはなかなか使われず、最終的な業績には変化が見られなかったのです。

ここで清水氏はMAツールも含め、情報基盤全体をSalesforceへと移行することを決断したのです

「この頃に知り合いの社長からSalesforceが紹介されたことをきっかけに、陣屋様などレガシーな産業における改革事例なども勉強させてもらったのですが、まさに当社が実現したい理想の姿だと感じました。これまでの当社の営業は、人と人との関係性だけで成り立っていました。これも重要ではありますが、それ以上に大切なのは必要な情報を必要なところに届ける仕組みを作り、それによってお客様の状況やニーズに応じた柔軟な対応を、全社で実施できる体制を確立することです。営業担当者が属人的に御用聞きを行う営業スタイルからの脱却を、業界全体に先んじて実現しようと考えたのです」。

Salesforceの導入を決めたのは2022年10月。Sales CloudとAccount Engagementが同時に導入されています。その後すぐにAccount Engagementの活用を開始し、10月の展示会で入手した名刺のメールアドレスに「お礼メール」を配信。その数は1か月で600通以上に上りました。その後、既存のMAツールから顧客情報をSalesforceへと移し、自社商品に関係する「お役立ち情報」や「課題解決情報」を盛り込んだメールマガジンの配信をスタート。このような取り組みによって、問合せ件数は以前の5~10倍になったと言います。

2023年5月には、愛知県・三重県を対象に地域に特化したシナリオベースのメール配信にも着手。新規流入したリードに対してまず「お礼メール」を送付し、その1週間後に「県の工事情報」や「イビコン商品の施工事例」などのメールマガジンを配信、これに対して反応があったリード情報をこの地域の営業担当者に渡しています。その後、2023年3月からSales Cloudの活用も本格的に始まっています。

「Account Engagementはシナリオが作りやすく、Salesforceの用語を理解すれば5分程度でシナリオを作成できます」と語るのは、シナリオとメールコンテンツの制作を担当する、イビコン カスタマーサクセス部 セールスサポート課 デジタルマーティング グループ長 兼 DX事業部 グループ長の倉橋 静香 氏です。「配信するメールはHTMLで作成しており、Account Engagementのフォームも組み込んでいます。そのためお客様の反応もすぐにわかります」。

 
 
 
 
 
Salesforce活用以前と比較した問い合わせ件数の増加
 
 

3. 複数の成果を生み出した先行活用、全社展開のため営業組織も再編

「最初に愛知県・三重県でこのような取り組みを始めた理由の一つは、この地域を担当している若手の営業が、会社が目指す方向性を理解して素直に行動に移してくれたからです」と清水氏。ここで成功体験を作った上で、全社に展開していくことを考えていたのだと言います。実際にこの取り組みでは、いくつかの成功事例も生まれています。その1つが、愛知県のコンサルタント会社とのパートナーシップ締結です。

「2023年7月に『設計業務の一部をお手伝いします』というメールを配信したところ、この会社からすぐに『プレゼンしてほしい』という連絡が来ました。プレゼン後には『ぜひ一緒にやりたい』と言っていただき、その後継続的にビジネスでご一緒させていただくことになりました」(渡邊氏)。

また愛知県では2022年に道路の設計基準の変更があり、その情報を盛り込んだメールも大きな反響につながったと渡邊氏。業界内の多くの人が、この変更を知らなかったのです。「設計基準の変更によって、ガードレールのコンクリート基礎が必須となり、当社のオリジナル商品を使う必要性が高まりました。この情報をお伝えしたところ、問合せが一気に増えました」。

このような取り組みと並行して、清水社長は会社の考え方を全社に示すと共に、営業担当者全員との面談も実施。ここで話し合われた内容を踏まえ、さらに大きな決断を下すことになります。それは営業組織全体の再編成です。

「これまでは地域別の組織になっていましたが、これを機能別の組織に再編することにしました。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスに分け、営業リーダーをこれらのグループ長に任命したのです」(清水氏)。

営業組織を再編したのは2023年9月。カスタマージャーニーに着目し、情報を共有しながら各フェーズの対応を行うことで、社内の意識は徐々に変化しつつあると言います。また役割を明確に分けることで、各フェーズで何を行うべきかも明確になり、営業プロセスの可視化・言語化も可能になりつつあります。各グループの活動状況を数値化し、ダッシュボードで可視化する、という取り組みも行われています。

ここで改めてわかったことの1つが、フィールドセールスの関与を必要としない商談が意外と多い、ということです。マーケティングとインサイドセールスでクロージングできる商談は7割程度に上っているため、このような商談の効率化を目指し、Experience  Cloudの導入も進められています。

「現在はまだ目標の1割程度しか実現できていません」と清水氏。今後は社内で確立した仕組みを協力会社にも展開し、リード情報の共有などを進めていきたいと語ります。「コンクリート二次製品の業界は、これまで近視眼的に価格競争を繰り広げてきましたが、私達の本来の仕事はコンクリート製品を通じて『人の命を守ること』です。協力会社と共に成長しながら、社会に貢献する。このような関係を、Salesforceの上で実現していきたいと考えています」。

 
 
 
 
※ 本事例は2023年12月時点の情報です
 

その他のリソース

 

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