株式会社三越伊勢丹

国内首位の百貨店企業がギフト特化型ECサイトを新設 2年でレコメンデーションの売上3.2倍を達成

新サイトを短期間で構築し、セールスフォース・ジャパンの支援で運用を内製化。 最適な商品の提案や並び替え、マーケティング施策の自動化等により、 2年でレコメンデーション経由の売上3.2倍、メルマガ経由の売上4倍等を実現。

グループのコアビジネスである百貨店事業を担う株式会社三越伊勢丹は、長年強みとしてきたギフト市場の変化を受け、ギフト特化型ECサイトの新設を決断。プロジェクトチーム内にECサイト構築・運用の知見がない中、同社は、Commerce Cloud・Marketing Cloudの導入と、運用の内製化に踏み切りました。

そうして短期間でローンチされた新サイト「MOO:D MARK」は、AIのEinsteinの活用による顧客一人ひとりに最適な商品の提案や、Journey Builderによるマーケティング施策の自動化などにより、目覚ましい成果を上げていきます。「システムに初めて触る」ところからスタートした運用チームが、いかにしてそれを実現したのか、その取り組みを紹介します。

 
 

1. ギフト市場の近年の変化を受け、ギフト特化型ECサイトの開設が急務に

日本の百貨店売上高第1位を誇る三越伊勢丹グループ。その一員である株式会社三越伊勢丹は、グループ売上高の約8割を占める百貨店事業において、国内外46の実店舗を運営し、加えて8 のECサイトを展開しています。 その1つとして2019年に開設された「MOO:D MARK (ムードマーク)」は、1980年頃~1990年代半ば生まれのミレニアル世代を主なターゲットとし、グループ内で成長事業として期待されているオンラインギフトサイトです。

同社が「MOO:D MARK」を立ち上げた背景には、昨今のギフト市場の変化がありました。百貨店をコア事業とする同社にとってギフトは、長年大きな強みとしてきた領域です。ただしそれは、お中元やお歳暮などのフォーマルギフトに関してのことで、その市場規模は徐々に縮小しています。一方、カジュアルギフトの市場は年々拡大し、ギフト市場全体としては成長しています。実店舗でのフォーマルギフトの販売を主軸としてきた同社にとって、カジュアルギフトはまさにこれから打って出るべき領域で、そのためにはECの強化が不可欠でした。

また、「MOO:D MARK」の開設には、カジュアルギフトの中でも伸長著しい「ソーシャルギフト」の分野へ参入し、新たな顧客を開拓する狙いもありました。ソーシャルギフトとは、SNSや名刺交換などで知り合い、住所のわからない相手に、SNSやメールなどで商品の受取専用URLをシェアして手軽にギフトを贈れるサービスです。近年注目を集めるこのサービスをギフト特化型の「MOO:D MARK」の中心に据えることで、情報感度の高いミレニアル世代との接点を作り、他の商品あるいは実店舗との架け橋となるようなECサイトの確立を目指したのです。

ただ、新サイトの立ち上げにあたっては、越えなければならない高いハードルがありました。プロジェクトを推進した第1MDグループ ギフトデザイン営業部 企画担当 ムードマーク マネージャーの五郎丸靖子氏はこう振り返ります。

「経営陣から求められたのは、デジタルネイティブで高感度なお客様の関心に沿い、かつ環境の変化に柔軟に対応できるサイトを1年でローンチすること。しかし、最初に集められた私を含む3名のプロジェクトメンバーは、もともと百貨店事業のバイヤーやマネージャーで、それまでデジタル事業に一切関わっていない。ECやシステムについてなにもわからないところからのスタートでした」(五郎丸氏)

 
 

2. Salesforceによる新サイト構築と運用の内製化を決断

そうした状況のもと同社は、新サイトを構築するためのシステムとしてCommerce CloudMarketing Cloudを選び、さらにその運用を内製化することを決断しました。その理由について、五郎丸氏は次のように説明します。

「Salesforceを選定したのは、当社が従来基本としてきたウォーターフォール型ではなく、アジャイル型でクイックに開発でき、かつ自分たちのしたいことを足かせなく実現できる柔軟性があると感じたからです。
また、運用の内製化に踏み切ったのは、もちろんそのほうがお客様や環境の変化に外注より迅速に対応できるからですが、セールスフォース・ジャパンの担当の方から説明を受けて、『システムを触ったことのない私たちでも操作やカスタマイズができる』と思えたことが大きかったです」(五郎丸氏)

「MOO:D MARK」の運営チームは、さまざまな部署から集められた26名で構成され、商品の選定からコンテンツ制作、顧客対応、物流までの全業務をチーム内で完結できることを強みとしています。Commerce CloudとMarketing Cloudを自ら運用することで、その強みを最大限に発揮できる、と五郎丸氏は考えたそうです。

プロジェクトに途中から加わり、Marketing Cloudの運用を担当することとなったマネージャーの塚本雄吾氏もまた、自分たちで新サイトを運営することに不安を感じなかったといいます。

「セールスフォース・ジャパンの担当の方のコーチングを受けながら伴走していただけるので、知識や経験のない私たちでも十分に運用できると感じました」(塚本氏)

そして同社は2019年、当初の計画通り、プロジェクト開始から約1年という短期間で新サイトのローンチまでこぎつけ、チーム内での運用を開始しました。

 
 

3. レコメンデーションや商品の並び替え、メール配信等の施策を最適化・効率化

Commerce Cloudで構築された「MOO:D MARK」の第一の特長は、優れたレコメンデーション機能を備えていることです。

「通常の小売と比べてギフトのビジネスの難しいところは、同じお客様でも、贈る目的やタイミング、相手によって選ぶ商品が違うこと。その点Commerce Cloudなら、AIのEinsteinが、導線・閲覧・購買などのお客様の行動から、そのつど最適な商品を判断して提案してくれます」(五郎丸氏)

また「MOO:D MARK」では、Einsteinの機能の1つである Predictive Sortによって、サイト訪問者の行動をリアルタイムに分析し、商品一覧や検索結果を一人ひとりに最適化した並び順で表示します。さらに、サイト訪問者の閲覧・購買した商品などをもとにABテストを実施し、その結果を踏まえてより効果の高い施策を打つことができます。

「バイヤーの視点から見ても、お客様の求めている商品を適切に見せることができていると感じます。静的なコンテンツや人力では対応できない部分をAIがカバーしてくれていて、Commerce Cloudを導入してよかったと心から思います」(五郎丸氏)

一方、2020年に稼働を開始したMarketing Cloudは、獲得した顧客のリピート購入の促進という面で「MOO:D MARK」の成長に貢献しています。Journey Builderを利用して、顧客の属性や行動にもとづいて分岐するさまざまなシナリオを作成・実行し、顧客ごとに最適化したマーケティング施策を展開しているのです。

たとえば「MOO:D MARK」では、「TODAY IS A GIFT」をテーマの1つに掲げ、日付にちなんだギフトを提案しています。それをJourney Builderのシナリオの1つに組み込み、週1回、ギフトを提案するメールマガジンを自動配信しています。

同様に、誕生日月の顧客に向けたクーポンつきのメールや、会員登録をしたものの購入に至っていない顧客に対するサービス紹介のメールを自動配信し、開封・未開封によってシナリオを分岐させて適切なタイミングで再度メールを送るなど、売上拡大のための施策を行っています。一例として、新商品発売の際、メルマガ会員に特典をつけて先行販売するメールマガジンを配信したところ、非常に大きな効果があったそうです。

「当初はそうした施策を手動で運用していましたが、2021年にシステムを改修し、お客様の属性や購買状況などのCommerce Cloud内の情報をMarketing Cloudに自動連携させたことで、さらに効率的にマーケティング施策を実行できるようになりました」(塚本氏)

 
 
 
 

4. 2年でレコメンデーションの売上3.2倍、メルマガ経由の売上4倍!

そのように順調なスタートを切った「MOO:D MARK」ですが、売上状況や顧客の変化などに合わせ、セールスフォース・ジャパンとの二人三脚で日々改善を重ねています。

「セールスフォース・ジャパンによる活用支援で、機能や設定について教えていただけるだけでなく、サイトの特性やお客様の動向を踏まえた戦略や施策まで一緒に立案していただけて、本当に助かっています」(塚本氏)

「他社サイトにおけるカート投入率・コンバージョン率などのベンチマークとなる数値や、似たような業態の好事例を教えてくださり、“サイトの健康診断”ができるのが非常にありがたいです」(五郎丸氏)

そうした継続的な取り組みと、Commerce Cloud・Marketing Cloudの連携活用により、「MOO:D MARK」は大きな成果を上げています。サイトの売上全体に占めるEinsteinのレコメンデーション経由の売上は、平均で40%、最高で48%を記録。「MOO:D MARK」がいかに効果的なレコメンデーションを実現できているかがわかるでしょう。また、サイトオープン翌年の2020年とそれから2年後の2022年を比較すると、レコメンデーションによる売上は実に3.2倍に伸びています。

一方、顧客数も順調に増加し、2020年と2022年の比較で、サイトの会員数は約3倍、メールマガジンの会員数は約4倍となっています。メールマガジン経由の売上も約4倍となり、サイト全体の売上に占める割合は年々高くなっています。

加えて、Commerce CloudとMarketing Cloudを使いこなすに従い、業務効率化の面でも大きな効果を実感するようになった、と塚本氏はいいます。

「メールマガジンの施策を運用するのに、最初は手作業で1時間ぐらいかかりましたが、自動化によってその時間がゼロになりました。また、会員登録をしたけれども購入していないお客様に対してメールマガジンを配信していますが、作業を自動化できたからこそ可能になった施策です。手作業で毎日1時間とすれば年間365時間かかるので、以前なら到底できませんでした。今後も、カート落ち商品や閲覧商品にもとづくご案内メールなど、よりパーソナルな施策に向けて、実施可能性の幅がどんどん広がっていくでしょう」(塚本氏)

Commerce CloudとMarketing Cloudは、運営チームのメンバーの意識や行動にも変革をもたらしているようです。

「この仕組みを使ってお客様に向けてこういうアプローチやご案内をしたい、この作業を効率化したい、という議論がチーム内で盛んに行われるようになり、そこから新たな施策が生まれるなどしています。たとえば、ソーシャルギフトの受取の有効期限が迫っているご依頼主様に対して、カスタマーサポートから先様へのアナウンス依頼のメールを配信していたのですが、その作業を自動化して効率化するというアイデアは、カスタマーサポートのメンバーから生まれたものです」(塚本氏)

新サイトを迅速に立ち上げて軌道に乗せ、さらにその運用に携わる社員の成長を促しているCommerce CloudとMarketing Cloud。プロジェクトの推進役を務めてきた五郎丸氏は、これまでの成果を踏まえ、改めてSalesforceについてこう語りました。

「システムに一度も触ったことのない人でも、要件定義から開発の設計、運用まで入り込むことができる。自社のアセットや強みをうまく活かすことができ、かつ新規にやりたいことを自由に実現できるメリットを今も日々実感しています」

 
2年でレコメンデーションの売上3.2倍、メルマガ経由の売上4倍!
 
 
 
 
※ 本事例は2023年6月時点の情報です
 

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