京葉ガス株式会社

「オール京葉ガス」として、先回りした顧客対応を可能にするDX施策を展開。

地域密着のガス会社と顧客接点となるサービスショップが一体となり、
顧客満足度を高める取り組みをスタートさせました。

京葉瓦斯株式会社(以下、京葉ガス)は、千葉県北西部の地域に密着した都市ガス事業者として長くビジネスを続けてきました。しかし、電力・ガスの自由化に伴い、ビジネス環境は激変。競合の参入という脅威にさらされる一方、自社の顧客への多様なサービス提供でビジネスの成長機会を獲得することもできるようになりました。そのために、顧客を軸にビジネスを可視化し、顧客対応拠点となるサービスショップと一体となって改革に取り組むことを決意。DXの中核として、Salesforceを顧客データの中心として活用する取り組みを開始。2022年内にサービスショップへのトレーニングを終え、ビジネスの再構築を本格的に進めていく計画です。
 
 

1. トータルライフサポートの実現を目指し、地域のサービスショップと協働

京葉ガスの顧客サービスは、基本的にパートナーである地域のサービスショップを通して提供されます。ガスの開栓に始まり、ガス機器の新設・交換、定期点検、トラブル対応など、顧客が“何か相談したいことや困ったこと”があれば真っ先に連絡するのは、各地域のサービスショップになります。

ただし、多くの顧客は、サービスショップと京葉ガスを同じ会社として認識しています。実際のところ、サービスショップには京葉ガスと資本関係のあるところもあれば、独立した組織になっているところもあります。それぞれが独自に展開するサービスもあり、地域ごとに顧客に提供できるサービスは異なることがあります。

今回のSalesforceプロジェクトで、京葉ガスが期待したのは、サービスショップによるサービスレベルおよび提供サービスの標準化を図り、サービスショップと一体となった“オール京葉ガス”としての顧客体験の向上でした。サービスショップ側も「くらしのかかりつけとして、ガス・電気、住宅リフォーム、生活に必要な機器販売・メンテナンスに加えて、ハウスクリーニング、シニアライフサポートを中心として、お客さまの衣食住に関するさまざまサービスを幅広く展開する」、「お客さまの期待を超える存在になる」という京葉ガスのビジョンを共有しており、さらにデジタル面からの支援を求めていたため、現場の協力体制は整っていました。

京葉ガス情報システム株式会社 取締役 企画開発部長 山口 公晃氏は、「お客さまにさらに寄り添い、その期待を超えるためには、まずお客さまのことを正確に知り、プロフィールや接点情報などを活用したサービスを展開する必要があります。Salesforce Field Serviceを採用してフィールドサービス分野におけるSalesforceのベストプラクティスを取り入れることで、私たちがサービス先進企業に追いつき追い越すための土台作りをできると判断しました」と話します。

ガスの自由化に伴い、電気や介護、ホームセキュリティ、ハウスクリーニングなど、暮らし周りのサービスは拡充してきました。一方、長くインフラを担ってきた企業として、安全性や確実性に重きを置いたビジネスを展開してきたために、お客さまの期待について深く考える文化や行動様式については改革・改善が必要でした。Salesforceの導入を機に、ラインナップするサービスを顧客軸で可視化するとともに、データ分析によって顧客が必要とするサービスを先回りして提案できるような体制へと飛躍することを目指したのです。

「過去にSalesforceを検討していた当時、Customer 360というコンセプトはまだなかったと記憶しています。ただ、私たちがやろうとしていたのは、まさにそれでした」(山口氏)

 
 

2. Salesforceのもつ、CRMのベストプラクティスをビジネスに実装する

京葉ガスでは、Salesforceの導入と並行して、業務のモバイル化およびペーパーレスを推進するプロジェクトも実施していました。その際に、訪問時にスレートPC(業務用モバイルWindows端末)を導入。サービスショップのお客さま接点業務の電子化を段階的に進めています。紙ベースでデータ化されていない情報や、Excelで管理されているもの、サービスショップが独自に管理しており、京葉ガスと共有できていない情報などが対象です。

一方、ガス契約の情報は料金計算と請求を担う基幹システムで管理しているため、契約者情報はデータ化されています。そこで、Salesforceのベストプラクティスを実装し、Salesforceのデータモデルに顧客関連のすべての情報を登録することからプロジェクトはスタートしました。その結果、暮らし周りのサービスなど、すべての情報をSalesforceに集約したことで、1人の顧客を軸に、その顧客が加入しているすべてのサービスを可視化できるようになりました。

京葉ガス情報システム株式会社 企画開発部係長 野村 彰文氏は、「構築したシステムでは、お客さま起点としてどんな契約をいただいているのか、どのような機器が設置されているのか等、Salesforceを見れば1つの画面で視覚的につかむことができます。
それにより、お客さまに次はどのような提案をすればよいか、正確に把握することができるようになりました。」と話します。

「いままでのお客さま情報は、お客さまを起点とした情報ではなく、ガスをご利用いただいている”場所”を起点とした情報だったため、お客さまを起点とした情報の把握には非効率だったのです。」(野村氏)

こうして、京葉ガスはガス料金の計算と請求のための基幹システムと、顧客情報集約プラットフォームとしてのSalesforceという2つの主要システムで業務を回すことになります。顧客関連情報はすべてSalesforceに登録できるようにしたことで、サービスショップが独自に紙で管理する必要はなくなります。業務フローの標準化により、サービスショップの業務も効率化すると考えます。スレートPCからSalesforceにアクセスできるため、現場を任されるスタッフがわざわざ事務所に戻ってシステム登録する必要もなくなります。

システムをまたぐ情報のデータ連携タイミングを待てば、少なくとも翌日には最新情報を利用できるようになるため、サービスショップの店長や京葉ガスの経営者層は、売上情報などを素早く把握できるようになります。担当者の異動や退職の際の情報も漏れなく引き継げますし、顧客が地域内で引っ越したり、転出した人が再び地域内に転入したりするケースでも、過去の情報を参照できます。顧客情報を持ち続けることで、たとえば、以前に販売したガス機器の買い換え提案などを、適切な時期に行いやすくなります。

京葉ガス株式会社  取締役 常務執行役員 江口 孝氏は、「私たちの強みのひとつである対面営業をより効率的に行うためには、あらかじめお客さまのプロフィールや、接点情報などを管理し、それを把握しておく必要があります。
Salesforce CRMの導入により、これまで、属人的になりがちなお客さま情報を、可視化できるようになりました。また、その柔軟性・機動性のある機能により、従来型の経験と勘を頼りにした営業スタイルから、数値・データによる科学的なマーケティング・営業施策への変革を図ることができると考えています」と話します。

 
 
 
 

3. 「オール京葉ガス」として顧客のお客さまの期待を超える存在に

今回のプロジェクトでは、お客さま中心のデータモデルの実装とシステム連携という部分から顧客情報の統合を成し遂げることができました。フィールドサービス部分において、サービスショップの現場担当者が活用を本格的にスタートするのは、2022年中を予定しています。すでにシステムとしては利用できる状態にあり、現在はトレーニングの最中です。利用が開始されると、機器の販売や修理作業のデータなど、あらゆる顧客接点情報がリアルタイムに集約できるようになります。

京葉ガス株式会社 情報システム部システム企画グループマネージャー 勝村 宏司氏 (取材当時)は、「Salesforceはお客さま満足度の向上を目的としたCX・DX実現のためのプラットフォームととらえています。Salesforceを活用し、お客さまの暮らし周りの困りごとなどについて適宜・適切なタイミングで問題を解消するサービスなどを提案することで、お客さまの期待を超えることを目指していきたいと思います。
具体的には暮らし周りのサービスなどの契約数を2030年までに現在比で120%とすることを目標に取り組んでいきます。
ガスの開栓時に直接お客さまとコンタクトできるなど、いわゆる顧客接点の多い業種です。そこからさらにお客さまとの関係性を深め、ご希望・ご要望に真摯に応えるとともに、お客さまの気づかないニーズについても提案活動を行い、いつでも相談してくれるような存在になることが、オール京葉ガスとして目指す姿です。」


マーケティングにおける活用も視野に入っています。課題はお客さまの家族構成やメールアドレスなどのマーケティングに必要となる基本的な情報が不十分なことです。そうしたお客さまの属性情報を収集しながら個々のお客さまにとってお役に立てる営業活動の展開を図ります。その際、既にロイヤルカスタマーとなっているお客さまの属性などを参照して、お客さまに新しい価値をデジタルを通じてお届けできる提案につなげていきます。

すでに、お客さまからの問い合わせには、Salesforceで、過去のお問合せ内容などの接点情報やガス機器販売・修理などの作業の履歴、ご契約いただいてるサービス内容などを参照しながら対応できるようになっています。全サービスショップがSalesforceの活用をスタートすれば、それらの情報はリアルタイムにオール京葉ガスで共有することができ、お客さま対応品質をさらに高めることが期待できます。例えば、携帯電話番号を登録してくれているお客さまには、あらかじめ今回構築したシステムからSMSで訪問時間を送信する機能を設けました。これによって不在時訪問・訪問日時再調整といったお客さまの不便を解消したいと考えています。

勝村氏は、「ガスにとらわれないお客さまに寄り添ったサービスを提供する、という強い気持ちでプロジェクトに取り組んでいます。今はまだスタートを切ったばかりで試行錯誤の繰り返しですが、将来は統合的なデータ分析でよりお客さまを深く知り、お客さまの期待を超える存在になれるよう、オール京葉ガスとして取り組んでいきます」と話してくれました。

 
 
※ 本事例は2022年4月時点の情報です
 

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