京セラ株式会社

最前線の営業情報の全社共有により
ビジネス成長を阻害する「3つの壁」
を打破
人とアメーバ組織を強くする、
京セラのDX戦略

情報武装による個々の社員の能力向上こそがテーマ

ファインセラミック部品を皮切りに、電子部品や携帯電話、太陽光発電システムなどさまざまな分野で、その高度な技術力に基づく顧客への価値提供を通じてビジネスを拡大してきた京セラ。変化の激しい時代にあってその持続的成長を支えているのが、同社の代名詞ともいえる「アメーバ経営」です。その実践によって、市場競争力のある数多くの事業の柱を確立してきました。ただ、特に近年、事業規模が拡大する中で、縦割り組織に見られる“部門間の壁”の問題など、いくつかの課題が浮上していました。そこで同社は、ビジネスの最前線である営業情報の共有をベースとしたDXの推進により、そうした壁を打破していくことを決断し、Salesforceを導入しました。結果、部門をまたがって顧客へ共同提案する動きや、上司の持つノウハウを若手営業担当者へ円滑に伝承する仕組み、顧客からのクレーム情報を営業から品質保証部門や製造サイドへとスピーディに連携する環境を整えました。アメーバ経営が本来持つ強みをさらに高め、進化させていくための体制が構築されています。
 
 
 
 

1. 事業拡大の中で自部門の利益を優先する“部門間の壁”が課題に

 1959年にファインセラミックスを中心とする素材・部品メーカーとして創業した京セラ。その後、半導体部品や電子部品、さらには通信機器、太陽光発電システムなどの完成品、関連ソリューションの提供へと積極的に事業領域を拡大してきました。

 そうした京セラの代名詞ともいえるのが「アメーバ経営」です。「アメーバ経営は、当社の創業者であり、現名誉会長の稲盛和夫が会社経営の実践の中で生み出した経営管理手法。まさに京セラの今日に至る発展の礎をなしてきたものだといえます」と京セラの谷本秀夫氏は紹介します。

 端的にいうならそれは、組織を「アメーバ」と呼ばれる独立採算型で運営される小集団に分け、それら集団ごとにリーダーを任命して、さながら共同経営のようなかたちで会社を経営していくというもの。各リーダーがそれぞれのアメーバの活動にかかわる経営計画や実績、成果を明示することで、全社員が自ずと自分たちの収支を明確に意識するようになり、それぞれの持ち場や立場で持てる能力を発揮して利益確保に取り組む全員参加型の経営手法です。各小集団がアメーバのように自在に分裂したり、結合したりしながら事業環境の変化に対応していく、そうした自由度の高さこそがアメーバ経営の根幹だといえます。

 

 「ただ、近年、会社の規模がどんどん大きくなるに従って、アメーバ経営が本来持っているべき自由度が失われつつあるとの感も否めません」と谷本氏。事業が拡大する中、縦割り組織の弊害ともいえる、例えば自部門の利益を最優先に考えるといった“部門間の壁”のようなものが課題として見え始めてきていたといいます。

 「ある客先で自社の異なる部門の営業担当者同士が期せずして顔を合わせ、お互いの部門が当該顧客と取引のあることを初めて知るといった事態も実際に起こっているのです」と京セラの土器手亘氏は語ります。プロダクトラインごとにビジネスを行っていることが、あちこちで局地戦を戦っている状況を生み出している、お客様に新しい価値を提供するには、総力戦で提案するスタイルに変える必要がある、そういった機運が高まってきたといいます。

 
 

2. 最前線の営業活動で得られる情報共有で“壁”を打破する

 このような部門間の壁の解消を目指して京セラでは、2021年度から組織体制を「セグメント制」へと移行しました。具体的には、「コアコンポーネント」「電子部品」「ソリューション」の3セグメント体制の確立です。「各プロダクトライン間の横連携を強化して、緊密な情報共有を図って、人材の流動性を高めることで、例えばプロダクトラインをまたがる共同提案を可能にするなど、部門間の壁を下げるための施策の一環としてそうした体制変更を行いました」と土器手氏は説明します。

 また京セラでは、そうした部門間の壁とともに、「職制・世代の壁」、要するに上司と部下の間の壁や、さらには営業と製造とを隔つ「製販の壁」にも着目。同様に緊密な情報連携を軸にこれらの壁を取り除いていくことの必要性も痛感していました。

 それに向けて必要なのは、デジタル技術の効果的な活用。谷本氏は「デジタル化の推進なしに、当社のものづくりの進化も考えられません」と強調します。DXの推進をトリガーとして、組織変革・風土変革・社員の意識改革を進めていくことこそが重要であるというのが京セラの考えでした。

 「DXの推進にあたり、最初は、製造部門のシステムの共通化を考えていました。しかし、我々が現在のビジネスの状況を正しく把握するためには、何よりも最前線の営業活動で得られるお客様の製品動向やニーズにかかわる情報を共有することが必要だと考え直しました。そこから業界のトレンドを推し量って、最適なビジネス戦略へとつなげていくことが不可欠だったのです」と土器手氏は語ります。

 すでに述べた3つの壁を打破するための情報連携。これを実現する仕組みの必然性を痛感していた、まさにそうした折り、セールスフォース・ジャパンのインサイドセールスから面会を依頼するメールが土器手氏に届いたといいます。

 「早速、営業担当者に会い、話を聞きました。すると最前線の情報共有化や営業プロセスの確立の重要性など、セールスフォース・ジャパンの語る内容は、私が描く改革イメージとまさに合致するものでした。そうしたことから、あくまでもスピード重視で、特に競合サービスなどとの比較検討も実施することなく、提案されたSales Cloudの導入を即断しました」と土器手氏は振り返ります。

 
 
 
 

3. 情報武装による個々の社員の能力向上こそが最重要のテーマ

 Salesforceの導入により京セラでは、営業担当者が客先へと商談に出向いた際にやりとりした内容や、顧客から入手した情報をすべてSalesforce上に入力。これまで各担当者の手元にしか残らなかった情報が、広く他のプロダクトラインを含む営業組織全体で共有できるかたちが整いました。

 「その結果、まず部門間のハードルが一気に下がりました。情報が見えることで、特に最近では若手メンバーを中心に、共通のお客様に対して部門をまたがって共同提案するといった動きが実際に現れ始めています」と土器手氏はその成果のほどを紹介します。

 またSalesforceは、2つめの職制・世代の壁の打破についても有効な手立てを提供しています。上司は、顧客にかかわる情報や日々の活動内容を踏まえて部下との会話に臨めるため、営業上の次なる一手やプロセスの進め方などについてより的確で濃密なアドバイスができるようになっています。さらに、このように上司の持つ熟練のノウハウが、確実に若い営業担当者へと受け継がれるのと同時に、商談のステージを数字として捉え、次に何をするべきかという、営業プロセスの変革にも有意義なインパクトをもたらすものとなっているといいます。

 「ちなみに、この上下関係の壁を取り払うという観点では、例えば社長自らが、社内SNSなどを通じて、プライベートなトピックスなどの柔らかい内容も含めた情報発信を行うといった活動も行っています。そうしたことも社内の雰囲気、ひいては企業文化、組織風土を変える力となっています」と土器手氏は語ります。

 そして3つめの製販の壁については、特に緊急を要するクレーム情報の共有で取り払われようとしています。最前線にいる営業から切迫感を持って品質保証部門、製造サイドにクレームを共有できる環境をSalesforce上に整えた結果、迅速でタイムリーな顧客対応ができるようになったといいます。

 そのほかにも資材部門では、Salesforce上でサプライヤーの拠点を地図上にマッピング。台風の発生時にその経路からサプライヤーが被災する可能性など、部品調達に及ぼす影響をいち早く把握できるような仕組みも実現しています。これにより、状況に応じて代替品の調達の手配を行ったり、生産を適切にコントロールしたりといった施策をプロアクティブに講じることが可能になるなど、BCP対策の局面でも役立てていく対応も進められています。

 こうしたSalesforceの活用を含めたDXの推進に関し、土器手氏が期待を寄せているのが、デジタル化が業務プロセスの改善や新たなビジネス価値の創造に貢献していくことはもちろん、それ以上にまず若手を中心とする個々の社員がデジタルを活用した情報武装によって、営業力や人間力など、その持てる力を高めていくことだといいます。

 「営業にかぎらず当社社員全体が、京セラに所属して働くことで、そうした能力を向上させ、自社のビジネスはもちろん、お客様、さらには社会に対して、より大きな貢献を果たしていける未来を目指していく。それこそが当社のスタンスであり、Salesforceはまさに、それに向けた取り組みにおいて欠かすことのできない“武器”であると考えています」と土器手氏は強調します。

 
 
 
 
※ 本事例は2022年8月時点の情報です
 

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