「黒字廃業企業」を1社でも多く救済へ M&Aアドバイザーの正しい生産性向上
Sales Cloudの「Unlimited Edition」へのアップグレード、セキュリティ強化、マッチングの効率化と精度向上、データ活用による生産性向上を同時に推進
M&A仲介会社として高い実績を上げ続け、東京商工リサーチの調査で、アドバイザー1人あたりの売上・経常利益を含めた10項目で「業界No.1」を獲得しているM&Aキャピタルパートナーズ株式会社。10年間で60万社が黒字廃業する可能性があるという「2025年問題」の解決に少しでも貢献するため、M&Aアドバイザーのさらなる生産性向上に向けた取り組みが進められています。
そのための重要な基盤となっているのが、Sales Cloud Unlimited Editionです。同社は2014年からSalesforceを使っていましたが、これを2022年10月にアップグレード。セキュリティ強化、譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)のマッチングの精度向上と効率化、そしてデータ活用による生産性向上が推進されています。
1. 「2025年問題」対応で求められるアドバイザーのさらなる生産性向上
M&A仲介会社として譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)の間に立ち、M&Aの成立に向けたアドバイザリー業務を提供しているM&Aキャピタルパートナーズ株式会社(以下、MACP)。2005年に創業してから成約件数・売上高は右肩上がりに上昇しており、成約件数は10年で約10倍に増え、成長を続けています。また、成約案件の譲渡株価総額や譲渡企業の売上高/従業員総数、アドバイザー1人あたりの売上/経常利益など、M&A案件の規模の大きさやアドバイザーの生産性を含めた10項目で業界No.1を獲得しています。
「当社は事業承継や事業成長に悩む中堅・中小企業オーナー様をサポートする、完全独立系のM&A仲介会社です」と自社ビジネスの特徴を語るのは、MACP 執行役員で営業企画部 部長を務める小林 文平 氏。長年心血を注いで育ててきた企業を譲渡するというのは、企業オーナーにとって極めて大きな決断であり、その想いを深く理解し、真摯な姿勢で向き合う必要があるのだと言います。「そのためにはM&Aを提案する『M&Aアドバイザー』には、高度な専門性を持つとともに、企業オーナー様や買い手となる企業様の元に直接足を運び、お客様に寄り添い提案内容を考えることが求められます」。
MACPが多くの企業オーナーに選ばれているのは、このように専門家が伴走し、「正しいM&A」を着手金無料かつ業界内で最も低い手数料率で行っているからだと言えます。その一方で、アドバイザーの生産性が極めて高いことも、MACPの大きな特徴となっています。アドバイザー1人あたりの売上高・経常利益も業界No.1となっており、抜きん出た生産性を実現しているのです。これを下支えしているのが、2014年に導入されたSalesforceです。
2022年まではSalesforceの基本的な機能のみを活用していましたが、それでもアドバイザーにとって、不可欠な情報基盤になっていたと振り返ります。「しかしMACPは今後、近づきつつある『2025年問題』を前に、M&Aによって後継者不在企業を一社でも多く黒字廃業から救わなくてはなりません。そのためにはアドバイザーの生産性を、さらに高めていく必要があります」。
小林氏が語る「2025年問題」とは、団塊世代が75歳以上になることで生じる様々な問題のこと。その中には、経営者の高齢化と後継者不足によって黒字企業の廃業が急増する、という問題も含まれています。
「黒字廃業の可能性がある企業数は、年間で6万社に上ると言われています。これによって2025年までの累計で、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われると推計されているのです。このような黒字廃業からできるだけ多くの日本企業を救っていくには、M&Aによる事業承継をさらに増やしていかなければなりません」(小林氏)。
2. Sales Cloudをアップグレードし、大きく3つの施策を推進
具体的にどうすれば、M&Aの成約件数を増やせるのでしょうか。「大きく2つのアプローチがあります」と小林氏。1つはアドバイザーの数を増やすこと。もう1つは前述のようにアドバイザーの生産性をさらに高め、1人あたりの成約数を増やすことです。
「アドバイザーの生産性をさらに高めていくには、譲渡を希望する企業と譲受候補企業のマッチングを効率化すると共に、それまで行っていたアナログ作業からアドバイザーを解放し、より多くの時間を企業オーナー様との面談に使えるようにしなければなりません。また新しいアドバイザーの人数が増えれば情報漏洩のリスクも高まることにもつながるため、セキュリティをより強化する必要があります。このような課題の解決方法をSalesforceに相談した結果、Unlimited Editionへのアップグレードを中心とした提案をいただきました」(小林氏)。
Sales Cloud Unlimited Edition(以下UE)とは営業向けCRMの上位エディションであり、Enterprise Editionの全ての機能に加え、プレミアサポートや、無制限のカスタムアプリケーション、ストレージ制限の拡張などが提供されるというもの。メール/カレンダーとの連携機能、AIの活用など強力な機能が利用できることも大きな特徴となっています。これに加え、汎用的なデータ可視化・分析を簡単に行え、営業に特化した分析テンプレートを備える「Revenue Intelligence」、さらに、リアルタイムイベント監視、監査履歴、Einstein(AI)による機密データの探索・保護という、3つの機能を備えた「Salesforce Shield」も導入し、セキュリティのさらなる強化を実現しました。
この提案を受け、小林氏は「今後はデジタルを活用したアドバイザーの生産性向上は必要不可欠であり、チャレンジすべき内容」と判断し、2022年10月にアップグレードを実施。その後、大きく3つの施策が進められていきます。
まず行われたのがセキュリティの強化です。その内容について「不正な操作を未然に防止する、不正な操作の検知および通知を行う、インシデント発生時に備えた調査基盤を整備する、という3つの目的を掲げ、Salesforce Shieldによる内部統制強化を進めました」と説明するのは、MACP 営業企画部 IT推進課の栁瀬 開 氏です。「そのために、権限の適正化、トランザクションセキュリティの実装、脅威検知、リアルタイムイベントログの長期保存などを行っています。さらにRevenue Intelligenceに含まれるCRM Analyticsを活用し、ユーザーの操作履歴を可視化するダッシュボードも作成しました」。
これに加えてCTIツールを導入し、コールログの集計・可視化を自動化。企業オーナーなどへのアウトバウンドコールが適切だったかを、アドバイザーや上司が簡単に振り返ることができるようにしています。また、以前はバックオフィス部門で集計作業を行っていましたが、これに必要だった1日1時間の作業時間は不要になり、精度も向上しています。
3. アポ率とマッチング率が向上、アドバイザー1人あたりの案件数も増加
次に行われた主要施策が、譲渡を希望する企業と譲受候補企業のマッチングへのAI導入です。
「以前は週次のマッチング会議を経て、アドバイザーが各自の知見をもとにして、譲受候補企業候補先をノミネートリスト化していました」と小林氏。Salesforce上での検索も可能でしたが、1条件あたりの検索に1~2分かかっており、5万社以上登録されている譲受候補企業から最適な買い手を見つけるには、かなりの時間がかかっていたと振り返ります。
この問題を解決するために活用されているのが、Revenue Intelligenceです。テンプレートの活用によって、検索方法も標準化していると栁瀬氏は語ります。さらに、Revenue Intelligenceに含まれるEinstein Discoveryが過去の成約データを元に、譲受候補先推奨リストを自動的に作成する仕組みも実現。この推奨リストはSalesforceで作成された「候補先打診管理画面」に表示されるようになっています。
「客観性の高い推奨先とアドバイザーの知見を組み合わせることで、より精度の高いマッチングを短時間で行えるようになりました。AIで代替できる作業はAIに頼り、アドバイザーはその他の様々な重要な業務に時間を割き、より集中できるようになっています」(栁瀬氏)。
これと並行して、アドバイザーの負担を軽減する施策として、Salesforceとメール/カレンダーの連携も行われています。Salesforceに活動履歴や活動予定を登録すると自動的にスケジューラーに反映され、逆にカレンダーに予定を入力した場合にはSalesforceに反映されるようにしたのです。
そして第3の主要施策がデータ分析です。ここでもRevenue Intelligenceを活用することで、各アドバイザーの活動状況や成果を可視化。優秀なアドバイザーの活動を抽出することで「どのような活動がより成約に直結するのか」といったナレッジが蓄積されつつあります。「これらのツールの可能性は無限大です」と栁瀬氏。今後はエリアごとの詳細な分析も可能にすると共に、より幅広いデータをアドバイザー自身が分析・活用できるようにしたいと述べています。
「Salesforceの活用を深めることでアポ率とマッチング率が向上、1人あたりの案件数も着実に増えています」と小林氏。M&Aは成約までに時間がかかるため、すぐその成果が得られるわけではありませんが、2025年9月期には240件のM&Aを成立させる計画を立てています。
ここで重要なのが、単に「Salesforceを使う」ことではなく、「徹底的に使い倒す」ことだと指摘。今後もSales Cloud UEの各種機能を「使い倒す」ことで、アドバイザーの生産性をさらに高めていきたいと語ります。
「当社の成約件数は業界でもトップクラスですが、年間6万社と言われる黒字廃業の解消にはまったく追いつけていません。これからもAIとアドバイザーの分業や、データドリブン戦略を推進することで、当社が考える『正しいM&A』の数を増やしていきたいと考えています」(小林氏)