ニデック株式会社

従来の枠を超えた営業の進化を志向する「スリー新DX」、
Salesforceを営業改革基盤に

「スピード」と「ビジネス効果」に徹底的にこだわりながら導入プロジェクトを推進 商談フェーズを再定義し標準言語化すると共に、新たな評価指標も設定し、 潜在顧客への100%アクセスと創出商談の全取りを目指す

※ 本事例は2022年5月時点の情報です
「世界No.1 の総合モーターメーカー」へと成長し、2022年3月期には2兆円に迫る売上を達成したニデック株式会社。2020年12月にDX推進室が立ち上げられ「Nidec DX」というDXへの取り組みが本格化しています。その第一弾として進められているのが、営業部門の業務改革のための「スリー新DX」です。
本プロジェクトはDX推進室の立ち上げと同時にキックオフされ、そのわずか8か月後にSalesforceの初期実装を完了。さらにその7か月後である2022年3月には、80拠点を超えるグローバル展開も完了しています。
グループ全体を対象にしたDX環境がこれだけ短期間のうちに構築できたのは、強い「スピードへのこだわり」があったからです。また「ビジネス成果へのこだわり」も徹底しており、グローバル展開途中の2022年1月には、効果導出に向けた取り組みも始まっています。
 
 

1. 「スリー新DX」で掲げられた3つの「変革のポイント」

「世界一になる!」を目標に掲げ、1973年にわずか4人で設立されたニデック株式会社(Nidec)。世界に先駆けて実用化したブラシレスDC モータをはじめ、「世界初」「世界最小」の製品を続々と生み出し続けることで、様々な分野に貢献する「世界No.1 の総合モーターメーカー」へと成長を遂げました。2022年3月期の売上は連結で2兆円に迫っており、現在は「総合電機メーカー」を目指して事業を拡大し続けています。

このニデックが2020年から本格化しているのが、「Nidec DX」と銘打ったDXへの取り組みです。

「2020年12月にはDX推進室を立ち上げ、3つの観点からDXを推進」しています。その3つの観点とは、営業部門を中心とした「スリー新DX」、製品開発やものづくりに関係する「ものづくりDX」、そして作業の自動化のためにRPAの活用を推進する「社員DX」だと説明します。「これによって2025年には連結売上高4兆円、従業員一人当たりの売上高と営業利益を倍増することを目指しています」。

これらのうち、第一弾として始まった「スリー新DX」について、常務執行役員 最高業績管理責任者 最高営業責任者を務める髙橋 亨氏は次のように説明します。

「スリー新DXの『スリー新』とは、『新市場』の開拓・創出、『新製品』の迅速な投入、『新顧客』の獲得による売上拡大を意味しています。競合との戦いが激化する中、今まで通りのハードワークでは勝てない時代になっており、これからは仕事のやり方のレベルを上げるのではなく、レイヤーを変えて進化していかなければなりません。そのためには、全世界の潜在的な顧客やオポチュニティに100%アクセスする仕掛けを作ると共に、創出した商談を高い確度で受注につなげる必要があります。ニデックには従来から『全取り』という言葉がありますが、これをデジタルの力で強化しなければならないのです」。

 
 

2. 共通言語化と新たな評価指標で「ビジネス効果へこだわる」

このプロジェクトは、「ビジネス効果へのこだわり」を持って進めてきました。「今回のプロジェクトは、システム導入プロジェクトではなく、あくまでも業務改革プロジェクト」(髙橋氏)なのです。

そのためのポイントとして髙橋氏がまず挙げるのが、商談ステージの定義と標準言語化です。「ニデックには幅広い製品群があり、お客様も多種多様です。それぞれビジネスモデルが異なるため、共通化には異論が噴出しましたが、社内の販売プロセスではなく顧客の意思決定プロセスに合わせることで、ステージの共通言語化を実現しました。その結果、従来はステージ3である引き合い以降の状況しか把握できませんでしたが、現在ではステージ1からすべてのステージを視野に入れ、共通言語で議論できるようになりました」。

また評価指標に関しては、短期的な売上目標に加え、新規のスペックイン案件関連の数値目標である「デザインウイン目標」を設定。これによって、ステージ1~2の案件を営業担当者が積極的に創出するモチベーションを高めています。その目的は、受動的な調整型営業から能動的な攻めの営業への変革を加速し、未来の売上を作り出すこと。「もちろんこれだけではなく、途中のプロセスもKPI化することで、戦略的な攻めの営業活動を推進しています」。

 
 
 
 

スリー新DXを目指す上での、変革のポイントとしては、大きく3つが挙げられています。

「第1は『One Platform』であり、全世界に共通の情報基盤を展開し、顧客マスタや事業軸マスタ、製品軸マスタを整備・一元管理します。第2は『One Concept』であり、営業業務のプロセスを全社で統一し、BU(ビジネスユニット)や事業会社が異なっていても、同一の『共通言語』で会話が成立するようにします。そして第3が『One Nidec』であり、顧客を中心にクロスセルやシナジー効果を創出できるように、商談情報を共有できるようにします」。

これらのうち、第1の変革の基盤として採用されたのが、Salesforceです。スリー新DXのプロジェクトはDX推進室の立ち上げと同時にキックオフされており、ここでSales CloudAccount Engagement(旧Pardot)Sales Enablement(旧myTrailhead)CRM Analytics(旧Tableau CRM)Force.com/Event Monitoringが導入されました。

 
 

3. 次の展開を見据えたプロジェクトリードで「スピードへこだわる」

このプロジェクトの進め方の観点では、徹底した「スピードへのこだわり」を持ったプロジェクトリードが大きな支えになりました。

プロジェクトが2020年12月にスタートした後、2021年3月には「構想策定」、2021年8月には「初期実装」、2022年3月には「拠点展開」「定着化」が完了しており、展開途中の2022年1月には効果導出に向けた取り組みも始まっています。これだけのスピード感でプロジェクトを進めるために、各フェーズでは以下のようなポイントに留意したと、経営企画部 DX推進室で室長を務める宇野 明子 氏は述べています。

まず構想策定では、Salesforceからベストプラクティスに関する知見を集めつつ、各BU・各事業会社から積極的に意見を出し主体的に参画できるメンバーをプロジェクトに巻き込んでいます。これによって現場の意見を反映した全体像を短期間で見通すと共に、現場の意識改革も並行して進めてきたのです。またSalesforce導入後の状態を明確にイメージできるように、早い段階で実際に動く活用画面のイメージを作成。これによってメンバー間の議論を活発化させています。

次の初期実装フェーズでは、ビジネスに必須な最小限の機能に絞って早期リリースするスタンスで開発を推進。プロジェクトメンバーの数が限られていたこともあり、小さくスタートして大きく育てていく方針を堅持したと言います。また機能実装の際には情報システム部門に任せきりにするのではなく、ビジネスを深く理解しているメンバーが開発内容に関与することも重視。加えて、プロジェクトをリードした宇野氏自身に海外営業や営業戦略立案の経験があったことも、ビジネスの観点から機能開発する上で大きな貢献を果たしています。

拠点展開では、システム開発プロジェクトには遅れが発生しがちという前提に立ち、本リリースの1か月前にプレリリースを設定。この段階で対象ユーザーによる利用を開始し、本リリースに備えるようにしました。最初の展開対象としては、海外拠点と一部の日本拠点を選定。これは、日本で先行展開した後に「海外では使えない」という議論が発生しがちであることに配慮したと宇野氏は説明します。「パイロット展開の段階で、米国、台湾、中国などのメンバーに参画してもらいました。彼らは非常に飲み込みが早く、海外展開はもちろんのこと、国内展開の円滑化にも貢献してくれました」。

定着化では、メリハリを付けることで、少ないプロジェクトメンバーでの対応を実現。Sales Enablementによる自己学習の実施や、プレリリースによる早い段階での業務内における使いこなしを進めてきました。これによって、日本語・英語・中国語という3か国語の対応、80を超える拠点と1000人を超える営業メンバーへの展開を、コロナ禍の真っ只中で、見事成し遂げたのです。

活用開始後はこれに加えて、定着化状況をモニタリングした上で、役員や営業統括を交えた定期的なフォローも実施。モニター対象のデータとしては、Sales Enablementの学習率、Salesforceへのログイン率、商談等のデータ登録件数などが含まれており、目標に達していない場合には積極的な改善活動が行われました。

Nidec Salesforceのグローバル展開詳細ストーリーはこちら 
 
 

また、商談情報のアップデートも業務プロセスとして新たに構築し、このプロセスはマネジメントによる戦略立案にまで直結しているのだと語ります。

「営業担当者は毎週木曜日までにSalesforceで商談のアップデートを行い、それを金曜日に上長がチェックします。これを各BU・会社・拠点で毎月第一金曜日に取りまとめ、最終報告値として上申されます。その内容をSalesforceのダッシュボードで見ながら、マネジメント会議が実施されるようになっています」(宇野氏)。

これらの取り組みによって、迅速かつ的確な経営判断がスピード感を持って行えると同時に、現場レベルの施策でも複雑性の排除ができシンプル化できていると宇野氏。日報・週報にQuipを使い脱Excel化ができたことで、情報共有のあり方が変わり、現場の負荷も大幅に軽減できたと言います。さらに人工知能のEinsteinによるスコアリングも活用しており、これも営業現場から高い評価を受けています。今後は営業だけではなく開発など他部門でもSalesforceを活用し、営業・開発のさらなる連携強化を目指したいと語ります。

「スリー新DXは、ニデックのDNAである3Q6S(ニデック社員の行動規範)や永守イズムをベースに、Salesforceのプラットフォームの力を融合させることで、営業チームを進化させています」と髙橋氏。「ビジネスを創り、確実に受注し、お客様との接点を繋ぎ続けるために、営業活動全般のプラットフォームであるSalesforceの活用は、引き続き進化させていきます」。

 
 

4. Salesforceとともに未来を切り拓く、Nidec DXはさらにその先へ

このDXプロジェクトの推進にあたっては、構想策定から定着化フェーズに至るまで、ニデックにとって最も信頼できるパートナーならびにテクノロジーのプロフェッショナルとしてSalesforceがともに歩んできたことにより、グローバル17カ国80拠点に15ヶ月で業務変革を一気に計画しスピーディーに展開することができました。

具体的には、スリー新DXプロジェクトの立ち上げの段階から、ビジョンの策定と戦略づくり、構築、運用・展開と定着化、さらには営業現場へのトレーニングまで踏み込んで、幅広く一貫したSalesforceプロフェッショナルサービスの強力な支援のもと、全社一丸となって取り組みました。Salesforceのもつ世界中のベストプラクティスを最大限に活用することにより、ゼロから要件をシステム化するのでなく、Salesforce導入後のイメージを早い段階で営業チームと開発チームが共有することで、より一層スピード感を持った業務変革の実現と展開につながっています。  

さらに、Salesforceでミッションクリティカルの運用支援に定評のあるSignature Success Planを活用することにより、年3回のスムーズなバージョンアップによる機能拡張はもちろん、複数のSalesforce製品の利用で複雑になりがちな状況下において、日々発生する課題に対しても迅速かつ確実な対応策を講じることができました。あわせて、Tableauの運用を支援するTableauプレミアムサポートも活用し、この課題に対しても、迅速に相互連携を図ることにより対応することができました。このようにそれぞれのサポートの活用により、クロスクラウド全体としてのシステムの安定稼働とビジネスの継続の実現を可能にしました。

これからも、ニデックとSalesforceは、Nidec DXのその先を見据えて、ともに未来を切り拓き、進化を続けていきます。

 
 
 
グローバル17カ国80拠点への業務変革を15ヶ月で実現
※ 本事例は2022年5月時点の情報です
 

その他のリソース

 

Blog

Sales Change Makers データが導く営業の未来 -成長し続ける企業・組織の極意-(Day 2)開催レポート

Webinar

Salesforce×キーエンス 勝てる営業組織の作り方を徹底解説

eBook

事例で読み解く製造業のDX

 
 

最新情報と斬新なアイデアを
メールでお届けします