株式会社大林組

デジタル業務基盤による大改革を断行、生産性の向上と組織知の最大化を実現

職員の創意工夫と努力に依存する業務プロセスを根本から再構築。 営業見積から着工、竣工を経てアフターサービスまで一気通貫的に定型業務を遂行するシステムとして、Salesforceによるデジタル業務基盤「BizXBase」を「建設」

 

部門間の情報伝達と共有を軸に業務プロセスを再構築した大林組。国内建設事業の工事計画情報取得を起点に業務情報を一元管理し、部門を越えた連携を実現しました。デジタル業務基盤を足掛かりに、さらなる業務の効率化、データ活用の促進にも尽力しています。

背景となる情報

「MAKE BEYOND つくるを拓く」をブランドビジョンに掲げ、大林組は1892年の創業以来、日本の建設業界を牽引。2022年には、全社のデジタル化とガバナンス強化を目的に、従来の情報部門とBIM推進部門、さらに、2019年から活動していたデジタル変革プロジェクトチームを統合した「DX本部」を設置しました。
DX本部の役割は、全社的な立場からデジタル変革を立案し、その戦略推進・管理を通じて、大林グループの収益向上と持続的な発展を達成することです。建設業界は、長年培われてきた商習慣が根強い業界であり、業務プロセスや情報管理の方法が、企業間はもちろん企業内でさえ統一されていないという課題を抱えていました。DX本部は、こうした課題への対応とともに、建設事業の基盤強化に資する全社的な業務プロセスの再構築(BPR)に取り組み、その一環として、デジタル業務基盤「BizXBase」をSalesforce Platformで構築しました。
 

“応札時の社内決裁では、従来は紙書類の回覧後、営業企画担当がExcelに入力していました。 現在はシステム上で営業担当が作成し回覧するため、後作業は0になりました。”

中嶋 潤 氏

株式会社大林組 DX本部 BPR部長

 

導入の意義

「BizXBase」の構築で目指したのは、再整理した業務プロセスと一体となるシステムです。業務の手続きや承認方法を全店で共通化(定型化)するシステム機能を整えることで、これまで暗黙知とされてきた仕事の進め方のノウハウや業務知識の蓄積・継承を目指しました。個人の努力に依存する非定型業務が大半を占める状況を脱し、とくに若手職員がより創造的な業務に集中できる環境を整備しようとしたのです。

導入の効果

従来は各本支店や部門で異なっていた業務の進め方や情報管理方法が標準化され、全店で一貫した業務プロセスが確立されました。営業活動の報告方法や部門間の情報伝達の方法が統一され、各本支店で同じ書式と手順で遂行できるようになりました。さらに、業務情報の重複入力が随所に発生していましたが、情報を一元化したことで、ミスの減少とともに作業時間の短縮が図られています。

これまで、業務毎に個別システムへ入力していた情報や書類作成に用いていた表計算シート(Excel)が「BizXBase」(Salesforce)に集約されたため、各システムから出力したExcelを目視確認し手作業でつなぎ合わせる作業の大部分が削減されました。また、システム内で電子承認や回覧が完結するため、紙を使用し、複数のシステムをまたぐ承認プロセスが大幅に簡素化され、進捗状況がリアルタイムに把握できるようになりました。

紙書類で管理していた過去の案件情報や進捗状況などを、システム上で参照できるようになりました。これにより、営業担当者は必要な情報を迅速に取得し、効率的な営業活動を行えます。また、常にSalesforce上で詳細な情報を確認できるため、情報収集を担っていた企画部門の負担が実質ゼロになりました。さらに、年間目標や実績、見込みなどの数値集計が自動化され、リアルタイムに把握できます。

管理職が部下の進捗状況や目標達成状況をシステム上でリアルタイムに把握することで、問題や遅延を早期に発見し、直接の対話を持ち、迅速に対応策を協議、実行することが可能になります。これにより、データにもとづいた的確な判断と指示を出せるようになり、マネジメントの質をアップデートする契機となるでしょう。

個人や部門で個別に管理していた情報を、全社で共有できる環境が整いました。これにより、業務情報や各種データを部門横断で利活用する意識の醸成が期待されます。現状では、旧来の保守的な価値観がいまだ優勢ですが、データ活用の事例紹介や手法の講習を通じて、将来的には会社全体のデータ本位のマネジメントが定着することを期待しています。

事例のまとめ

  • 実際に動く“モノ”を見せて、議論に乗ってもらう
    数あるクラウドベースの業務管理システムの中から大林組がSalesforceを採用した主な要因の1つに「モックアップの作りやすさ」がありました。建設業界では、「動くモノを見ないと、実感が湧かない」との声をよく聞きます。その点、Salesforceは、業務情報を入力する項目の配置や画面遷移、レポート出力などをモックアップで示しやすく、意見を引き出し易い利点がありました。

  • 各プロジェクトに関するデータを一気通貫で管理できる環境に
    2024年度中に、主要3事業である建築、土木、不動産開発においてBizXBaseを展開します。将来的には、事業間の業務および情報連携を模索するとともに、現状は個別のシステムで管理している業務情報を集約し、工事案件に関する業務情報や業務成果を統合して、組織知の最大化を目指します。

  • Trailhead」で学び、ローコード・ノーコードでユーザーとの合意形成時間を大幅削減
    当部職員だけでなく、協力スタッフとともに「Trailhead」を活用し、Salesforceの機能や可能性を効率的に学べました。「業務」と「システムの機能・構成」を理解している職員がBPRに取り組むことで、各業務部門と円滑にコミュニケーションを図れています。適切な業務フローに即した画面遷移をモックアップで示すことで、積極的な意見出しを促しつつ、迅速な合意形成により、現在の展開スピードに至っています。

  • DAP(Digital Adoption Platform)で利用者の定着化とサポート負荷軽減を実現
    Salesforce使用の定着化を支援する方策としてDAPを導入しました。これにより、業務担当者はリアルタイムで操作ガイダンスを受けられるようになり、とくに営業領域での問い合わせ対応の負荷が大幅に減少しました。また、ポップアップ型のアナウンス機能により、従来のマニュアルでは伝えきれなかった特徴的な機能の利用においても、容易にユーザーに伝えられるようになりました。

  • 「Salesforce Einstein」を活用して仕事のやり方自体をアップデートする
    BIツールを用いたデータの可視化は進んでいます。今後は、一歩進んで、SalesforceのAI(人工知能)「Salesforce Einstein」を用いた傾向分析や受注予測、顧客への提案支援につなげていきたいと考えています。蓄積されたデータから新たな示唆を得て、AIとの対話型での業務を遂行するなど、業務プロセスのさらなる進化を目指します。

 
 
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※  本事例は2024年6月時点の情報です。
 

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