株式会社船場

Salesforceの全社利用を背景に
Net Zero Cloudで効率的な排出量算定を実現

全社員にSalesforceアカウントを付与し、業務改革と定着化を実現。
Net Zero Cloudを用いたScope1・2算定を通じて、集計作業にかかる膨大な工数の削減を実現するとともに、Scope3での活用にも期待。

70年以上の歴史を誇る内装業界の老舗にして、DXをはじめとする先進的な取り組みでも知られる株式会社船場は、2022年、「エシカルとデジタルの実装」という経営戦略を打ち出し、同     年に温室効果ガスの排出削減目標「SBTイニシアティブ」へのコミットメントを表明。そして、Scope1・2・3の温室効果ガスの排出量削減につなげるSalesforceのソリューション、Net Zero Cloudの導入に踏み切りました。
その決断の背景には、同社が長年Salesforceを全社的に活用し、成果を上げてきた事実がありました。実は同社は2014年頃まで、社内システムに起因する多くの課題を抱えていたのです。それらをSalesforceでいかに克服し、さらにはNet Zero Cloudの活用にまで至ったのか、同社の歩みを紹介します。
 
 

1. Salesforceで循環型社会の実現とDXによる働き方改革を推進

株式会社船場は、大型商業施設や飲食店などの商空間、オフィス、教育、ヘルスケア、ホテル、余暇施設といった幅広い分野の空間創造について、企画からデザイン、設計、施工までの全プロセスを一貫してサポートする内装業大手です。1947年に大阪経済の中心地・船場で陳列ケース店として創業して以来、70年以上にわたって実績を積み重ね、歴史を刻んできた同社は、業界のリーディングカンパニーとしてはもちろん、循環型社会の実現やDXによる働き方改革に積極的に取り組む先駆的企業としても広く知られ、2021年には「TOKYOテレワークアワード」大賞も受賞しています。

同社のそうした先進性を端的に示しているのが、Salesforce各種製品を活用したさまざまな取り組みです。同社は、2014年に導入したSalesforceを全社で利用し業務改革を推進。さらに2022年には、環境データを可視化し、温室効果ガスの排出量削減につなげるソリューションNet Zero Cloudの利用を開始しています。では、そもそもなぜ同社はSalesforceを導入し、さらにそこからNet Zero Cloudの活用へ至ったのでしょうか? その経緯を改めて振り返ってみましょう。

 
 

2. Salesforceで業務効率化を実現、全社員に利用されるインフラに

同社は2013年、上場準備のため新たに法務部門を立ち上げ、同時にIT環境の見直しに着手しました。執行役員でDX本部長兼法務・総務担当の岩本信蒔氏は、当時の状況をこう説明します。

「上場に向けてITの強化に乗り出したのですが、課題は山積していました。その1つがワークフローシステムの問題。当時は国産のオンプレミス型システムを利用していましたが、柔軟性や拡張性の低さにより、承認の権限の設定などが難しく、更新も全然されていない状態で、ほとんど機能していませんでした。
開発プロパーの人材が社内におらず、将来的にも雇えないかもしれないという前提で、システムのリプレイスを検討し、候補に挙がったのがSalesforceでした。前職のIT企業で、開発部長がSalesforceについて『とてもいいシステムだ』と熱く語っていたことが強く印象に残っていたからです」(岩本氏)

岩本氏はさまざまなソリューションを比較検討し、最終的にSalesforceの導入を決断。選定の決め手となったのは、カスタマイズ性と非常に多くのパートナーがアプリや支援を提供しているパートナーエコシステムでした。

「当社には約400名の社員がおり、グループ会社もあるので、それぞれの業務に合わせて自由にカスタマイズできなければなりません。その点、簡単に開発できて柔軟性のあるSalesforceは最良の選択だと思いました。また、Salesforceはパートナーを大事にしていて、開発から運用まで手厚く支援してくれるので、社内に技術者がいなくても活用できそうだということも、決め手の1つになりました」(岩本氏)

2014年、Salesforceを導入した同社は、全社員にSalesforceのアカウントを付与。顧客・物件管理や勤怠管理、稟議管理、スケジュール管理、帳票発行など、従来のワークフローシステムでは滞りがちだったさまざまな業務を変革、効率化していきました。その推進役を担ったDX本部の小谷口瑠美氏はいいます。

「当初、社員のSalesforceログイン率は60%程度でしたが、多くの業務に不可欠なインフラとなった現在ではログイン率はほぼ100%。『見積書への押印のためだけに出社する必要がなくなって便利』『稟議の“スタンプラリー”が不要になって業務が早くなった』という声がたくさん上がっています。2022年度だけで、全社で1万時間を超える業務時間の削減効果があったと試算しています」(小谷口氏)

現在、Salesforceコミュニティにおいて中心的存在として活躍する小谷口氏。実は2019年まで派遣社員として同社で働いていましたが、社内システムの説明会に楽しそうに参加する同氏の姿を目撃した岩本氏から“スカウト”され、正社員として推進担当になったのだそうです。

「Salesforceで得た体験をTrailblazerとしてイベントなどで話して多くの方と知り合い、いろいろな知識を吸収しています。Salesforceと関わることで、まさにリスキリングができたわけです。また、他社の皆様とつながっていく、当社のことを知っていただく機会を作れることの意義は、会社にとっても非常に大きいと感じています」(小谷口氏)

 
 
 
 

3. SBT認定取得に向け、Scope3まで管理できるシステムが必須に

全社員がSalesforceを活用して成果を上げる中、同社は2021年、DX本部とエシカルデザイン本部を創設。さらに2022年発表の中期経営計画において、「Good Ethical Company」をビジョンに掲げ、「エシカルとデジタルの実装」という戦略を打ち出しました。その背景には、残業規制の強化や、ベテランの技能者が大量離職する時期が迫っているなど、建設・内装業界特有の課題があったといいます。さらに、コロナ禍による社会活動の制限や、世界情勢の不安定化に伴う資材・燃料価格の高騰など、市場環境が厳しさを増していることも戦略策定の要因となりました。

「そうした状況に対応し、今後も成長していくには、働き方の変革や業務の効率化、利益率の向上を図る“守りのDX”だけでなく、エシカルとデジタルの融合により新たなビジネスモデルを創出する“攻めのDX”が不可欠です。そこで当社は、空間創造で培ってきた人・地域・自然環境への思いやりの姿勢やサービスをデジタルの力で社会に広め、その想いに共感していただけるパートナーを増やし、サプライチェーン全体で循環型社会の共創を目指そう、と考えたのです」(岩本氏)

同社は、エシカルとサステナブルの目指すところは同じであるという認識のもと、2022年9月、温室効果ガスの排出削減目標「SBTイニシアティブ」へのコミットメントを表明。2024年までにSBT認定の取得を目指すとしました。

ただ、目標達成までの道のりは長いと思った、と小谷口氏はいいます。2022年時点で同社がサステナブル関連で推し進めていたのは、再資源化や地球環境等に配慮した素材「エシカルマテリアル」の使用率を高め、廃棄物量を減らすことなどに限られ、温室効果ガス排出量の算定・管理にはゼロから取り組む必要があったからです。

「自社による温室効果ガスの直接排出を算定するScope1、他社から供給された電力     などの使用にともなう間接排出を算定するScope2はExcelなどでできるかもしれませんが、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出を管理するScope3は難しいと感じました。当社は内装業をメインの業務としているので、多くのサプライヤーや施工業者と取引があります。その排出量まで管理するには、専用のシステムが必須だと思いました」(小谷口氏)

 
 

4. Net Zero Cloud導入から半年でScope1・2算定を実現

2年後のSBT認定取得に向け、Scope3までの算定・管理を実現する。同社がそのためのソリューションとして選んだのがNet Zero Cloudでした。採用の理由について、小谷口氏はこう話します。

「他社のシステムでは避けがたい3つの問題をクリアできると考えたからです。まず、当社ではすでに全社員がSalesforceを日常的に利用していたので、使い慣れた画面で入力でき、教育の時間や手間がかからないこと。それから、今後、算定のためにさまざまなデータ入力が必要になったとき、Salesforce製品なら他のシステムと容易に連携できること。さらに、Scope3で社外の方にご協力いただく際、Community CloudやSlackなどを利用して、外部からでもスムーズにデータ入力できること。もちろんそれ以外に、廃棄物や水資源を管理するなどの充実した機能も魅力でした」(小谷口氏)

2022年、Net Zero Cloudを導入した同社は、エシカルデザイン本部を中心に、コーポレート部門や各事業部などを巻き込んで、Scope1・2の算定から取り組み始めました。DX本部に所属しエシカル専任担当を務める下岡周平氏は、プロジェクトの内容をこう説明します。

「私を含め、4部署9名で構成される推進チームが、月2回の定例会や社内Webセミナーを開催してSBTの意義やNet Zero Cloudの取り組みを丁寧に説明していきました。二酸化炭素は目に見えず匂いもないので、自分たちの業務とどう関わりがあるか、削減することにどのようなメリットがあるかを伝えるのが難しいところです。温室効果ガス削減の取り組みが、当社の推進している循環型社会の共創やエシカルデザインに非常に密接に関わっていることや、グローバルなトレンドとして投資判断の重要な基準となっていることなどを繰り返し伝え、社内に地道に浸透させていきました」(下岡氏)

推進チームによるそうした努力と工夫に加え、Net Zero Cloud の利用定着化に貢献したのが、Salesforceパートナーとして構築を担当した株式会社ウフルの手厚いサポートです。

「温室効果ガス排出量算定のノウハウがまったくない中、すでにSBT認定を取得しているウフル社の方が、システム構築だけでなく、運用面でも伴走しながらいろいろとアドバイスしてくださり、本当に助かりました」(小谷口氏)

さらに、普段から全社でSalesforceを利用してきたことが推進力となり、Net Zero Cloudを活用したデータの入力・集計作業はスムーズに進行。導入から約半年後には、グループ会社を含めてScope1・2を算定できる状態にまでこぎつけたのです。

 
 

5. 集計作業にかかる工数の削減効果をすでに実感、排出量算定のノウハウを活かす新たな展開も視野に

温室効果ガスの排出量算定や削減の取り組みは、売上や利益に即座につながるものではありません。しかし、ビジネスの取引条件として重視される傾向が世界的に強まる中、今後の企業成長に欠かせない活動であるといえます。その意味で、Net Zero Cloudの導入による定量的な効果はすでに出始めている、と下岡氏はいいます。

「導入当初、Net Zero Cloudの利用と並行して、Excelによる集計も進めていたのですが、Scope1・2の排出量のデータをすべて統合し、全体状況を把握する作業に膨大な工数がかかっていました。その作業が自動集計によって不要になっただけでも、全社で年間約120時間の削減効果があったと試算しています。今後、Scope3サプライチェーン全体の温室効果ガス排出源や数値管理に着手するうえで、主要なサプライヤーだけで160社を超えるお取引先様にご協力いただければ、より大きな効果が出てくると考えています」(下岡氏)

Net Zero Cloudの導入は、同社の企業イメージや顧客の反応にも好影響を及ぼしている、と岩本氏は実感しているそうです。

「循環型社会の実現や温室効果ガスの排出量削減に関心はあるものの、実際になにをすればいいかがわからず悩んでいるお客様は非常に多くいらっしゃいます。そうしたお客様に対して、Net Zero Cloudという目に見える形での取り組みと定量的な成果をお見せできることは、当社に関心を持っていただく上で、説得力と訴求力を持つ重要な要素となっていくと考えています」(岩本氏)

2024年のSBT認定取得を目指し、現在、全拠点における廃棄物量の可視化、およびScope3の各カテゴリーの可視化を進めている同社。今後、Net Zero Cloudの利用を通じて蓄積されたノウハウを活かしてコンサルティングサービスを提供するなど、幅広いビジネス展開を視野に入れています。

「Net Zero Cloudを介して他社の皆様とさらにつながっていくのが目標」という小谷口氏は、Net Zero Cloudの利点について改めてこう語ります。

「Salesforceを全社的に活用している企業なら、その延長線上の作業としてデータを入力し、あるいは、入力することなくすべてをつなげて可視化できます。特に、Scope3まで算定したいと考えている当社のような企業にとって、Net Zero Cloudはほぼ唯一の選択肢ではないでしょうか」(小谷口氏)

一方、岩本氏は、E(環境)だけでなくESG(環境・社会・ガバナンス)全体をカバーできるようになるというNet Zero Cloudのアップデートを受けて、Salesforce未導入の企業でもNet Zero Cloudを採用するメリットは大きくなっていくのでは     、と話します。

「当社でのESGの取り組みはスタートを切ったところでありますが、ESGの取り組みが企業価値を高める重要な戦略となっている昨今、その情報をすぐに開示できるのと、半年かかってしまうのとでは全然違ってきそうです     。そういうESGの視点で評価したとき、Net Zero Cloudは、どのような企業にとっても今後の経営における強力な武器となり得る、非常に優れたシステムだと考えています」(岩本氏)

 
 
※ 本事例は2023年4月時点の情報です
 

その他のリソース

 

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調査レポート

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