営業情報を単一プラットフォームに統合、データに基づく活動の浸透をベースに
老舗産業用金物メーカーが印した
営業DXへの大きな一歩
アナログな情報管理からの脱却が成長のカギ
産業用金物の開発・設計・販売で知られるタキゲン製造。同社ではビジネスを遂行するうえで重要な指針となる、各営業担当者が作成する日報の円滑かつスピーディな共有を皮切りに、営業プロセスのデジタル化を目指してSalesforceを導入。ひとつのプラットフォーム上に顧客情報や日報など、すべての営業情報を集約して全社で共有できる仕組みを実現しました。あわせて営業活動の目的や手法をデータ化することで、感覚に頼ることなく、データに基づいて活動するという営業担当者の行動変容を促すための各種の仕組みも実装しました。加えて、顧客からの問い合わせ内容や社員から寄せられるビジネス上のアイデア提案も一元管理。誰もが閲覧/評価できるほか、その分析によってカタログや商品の改善、新商品開発につなげていくことを支援する環境も実現しています。Salesforceは、同社のDXを駆動するビジネス成長に向けた取り組みにおいて不可欠な存在と位置づけられています。
1. 円滑な営業情報の共有やスピード感の欠如が切実な課題
錠前や蝶番、ステー、ハンドルといった産業用金物の領域で、国内市場を牽引するメーカーとして知られるタキゲン製造。同社が開発・設計・販売を手掛ける製品は、配電盤、分電盤、キュービクルなどの密閉用筐体に欠かせない部品群であり、カタログ品だけでも8000種類以上を数えます。その適用領域は、電気、水道、ガスなどの生活インフラから、自動販売機や自動改札機、太陽光発電設備や各種プラント、鉄道、飛行機、船舶などの交通インフラ、携帯基地局などの通信インフラに至るまで、大きな広がりを見せています。なかでも鍵付きハンドル用の錠前である「No.0200(通称「にひゃくばん」)は、まさに知る人ぞ知る業界の標準キー。「盤のキーといえばタキゲンの200番」といわれるほどの高い普及率を誇っています。
1910年の創業以来、122年もの歴史を積み重ねてきた同社のビジネスに貫かれているのは、「ないモノは創ればいい」という精神です。顧客から新たな要望が寄せられれば、「即断実行」の果断さをもって積極的に新製品の開発に取り組むほか、顧客からの特注品、試作品の要望に、1個からでも対応するというスタンスはまさに同社ならではのもので、顧客からも絶大な評価を得ています。
そうしたビジネスを支えているのは、タキゲン製造で伝統的に行われてきた、営業担当者による日報です。各人から上長へ提出される日報は、顧客ニーズの宝庫であり、月1回全社の支店長が集まる経営会議における情報交換、情報共有の源泉となる非常に重要なものです。しかしここには大きな問題が潜んでいました。
「そもそも経営会議の月1回というサイクルでは、そこで共有できる情報量にも限りがあり、現在われわれに求められているビジネスのスピード感にそぐわないところがありました。また、各人の日報はExcelファイルやグループウェア経由、なかには手書きなどバラバラのスタイルで提出されており、経営会議に臨んで支店長が、いざ必要なデータを抽出するのに、作業上大変な困難が強いられていました」とタキゲン製造の藤村嘉祐氏は語ります。
さらに、新型コロナウイルスの感染蔓延を契機として同社では、別の側面でもアナログな情報運用をめぐる課題に直面していました。具体的には、コロナ禍を受け、テレワークへ舵を切ろうと考えた同社の現場に残る、FAX受注の問題です。これについてタキゲン製造の水門公成氏は「当社には、FAX経由で注文されるお客様がまだかなり多くいらっしゃいます。当然、その注文処理には出社が前提となるため、テレワーク推進を阻む1つの要因となっていたのです」と説明します。
このような状況にあってタキゲン製造では、ペーパーレス化、脱Excelを図り、営業プロセスのデジタル化を推進していくことこそが、ビジネススピードや業務生産性の向上、ひいては会社の成長に不可欠であるとの思いを強くしていきます。「従前のアナログなやり方では、必要なときに適切な情報が見えず、結果当社が代々受け継いできた『ないモノは創ればいい』の精神もやがては形骸化されていってしまうのではという危機感すらありました」と藤村氏は言います。
2. 単一プラットフォーム上に営業情報を統合、デジタル化の一歩を踏み出す
同社では、そうした課題感を長らく抱き続けてきましたが、2021年3月頃、あるきっかけからセールスフォース・ジャパンの営業担当から「話を聞いてほしい」との申し出が藤村氏に対してあったといいます。
「会って話を聞いてみると、Salesforceを使えば、ひとつのプラットフォームに、すべての営業情報を統合、全社で共有することができ、当社の情報共有にかかわる課題をトータルに解消し得るとのことでした。コロナ禍の中で課題感が切迫していた状況にあって、セールスフォース・ジャパンは、我々の問題点をすべて解消してくれる、まさに“夢のようなベンダー”だと感じたというのが率直なところです」と藤村氏はそのときのことを振り返ります。
そこでさっそく藤村氏は、セールスフォース・ジャパンに提案されたSales Cloudの導入について社長に直談判。折しも会社のほうでは、DXの推進が重要なテーマとして掲げられている状況でした。そうしたことも1つの背景要因となって、難なくSalesforceの導入にかかわる社長の承諾を取り付けることができ、それはまさに「即断実行」を旨とする同社らしい俊敏な意思決定でした。
なおタキゲン製造では、Salesforceの採用を決めた直後に、中期経営計画において「2025target300」、すなわち「2025年までにDXの力で売上300億を達成する」というビジョンを打ち出しています。そうしたDXの駆動力として、Salesforceにも大きな期待が寄せられました。
3. 3つのオブジェクトの実装でデータに基づく営業活動の実践を支援
Salesforceの導入により同社が目指したのは、円滑かつスピーディな営業情報の共有をベースに、これまでのアナログな情報管理の中で取りこぼしていた顧客ニーズなどをしっかりと拾い上げて、売上につなげていくことです。そうした考えに則り、同社では主に3つのオブジェクトをSalesforce上に実装しました。
1つは、「活動の記録オブジェクト」。これは、すでに述べた同社の営業情報の源泉である、各営業担当者による日々の報告をSalesforceで行うものです。「当社の場合、従来から日報の提出を徹底していましたから、幸い、定着化の問題は発生しませんでした」と水門氏。現在、同社におけるSalesforce上での日報入力率は99%を達成しているといいます。
日報を戦略的に活用する同社の取り組みとして注目されるのが、上長が日報の採点を行う運用がとられていることです。「例えば、自分の考えを明確に述べているか、事実関係を正確に伝えているかといった記述上の視点、およびお客様企業のキーマンに会えているか、製品にかかわる要求をしっかりヒアリングできているかなど活動内容の視点の双方で採点を行っています」と藤村氏は説明します。
これら採点結果は、一定期間で集計されて各担当者自身の評価にも活かされることになります。こうしたことが、各担当者の間に日々の日報入力を定着させ、報告内容のブラッシュアップや日々の営業活動の強化を目指すうえでの重要なモチベーションになっているものといえます。
「また、このオブジェクトには営業活動の目的や手法をデータ化し、感覚に頼るのではなくデータに基づいて活動するという、営業担当者の行動変容を促すための各種の仕組みも実装しています」と水門氏は説明します。
さらに、作成された日報は、関係する支店や営業担当者に直ちにChatterで共有されます。必要な事項についてタイムリーに確認を求めることができる、スピードアップのための工夫です。
2つ目は「お問い合わせ記録オブジェクト」です。ここでは、顧客から受けた問い合わせをデータとして蓄積し、誰もがスピーディかつ正確な問い合わせ対応ができるようになることが目指されています。
「蓄積されたデータの内容を分析して、カタログや商品の改善、新しい商品開発につなげていくというデータ活用の推進もこのオブジェクトにおける重要なポイントとなっています」と水門氏は説明します。
そして3つ目が「アイデア提案オブジェクト」です。同社では1975年から、アイデア提案制度を展開してきました。「この制度では、全社員が半期に製品開発や業務改善に関する新規アイデアを提出することが求められていますが、提出されたものをデータとして管理していなかったため、ビジネスが拡大し社員が増える中で、評価側の作業も追いつかなくなり、制度自体が形骸化してしまっている感がありました」と藤村氏は言います。
そこで、このオブジェクトによりアイデア提案の管理をSalesforce上で行えるよう整備。誰がどういう提案をしたのか全社員が閲覧できるようにし、キーワード検索の仕組みも整えました。「その結果、2021年の1年間で採用された提案が数件程度に過ぎなかったものが、2022年に入って半年程度の間に数十件以上の採用提案が現れる結果となりました」と藤村氏。まさにSalesforceを使った制度運用が、アイデア提案に向けた社員のモチベーションを大幅に向上させたものといえます。
製造業DXデモ
タキゲン製造株式会社 編
産業用金物の開発・設計・販売で知られるタキゲン製造。日報の円滑かつスピーディな共有を皮切りに、営業プロセスのデジタル化を目指してSalesforceを導入しました。このデモンストレーションでは同社のSalesforceの活用についてご紹介しています。
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4. キャンペーン管理による新規顧客開拓
そのほかにも同社では、Salesforceのキャンペーン機能を使って、自社が出展した展示会において得られた見込み顧客をフォローするための仕組みも構築しています。従来は、来場者リストをExcelで管理していましたが、キャンペーンオブジェクトによって見込み顧客をSalesforce上で一元管理できる仕組みを実現しました。あわせて名刺の登録についても、Scan to Salesforceを利用することで入力項目の統一化を図っています。
「お客様のリストは優先度別に管理され、営業担当者が自分の担当顧客からどういう要望が寄せられていて、その優先度がどうかといったことをSalesforce上で直感的に把握でき、速やかにお客様のフォローが行えるようになりました。また、営業マネージャーも、担当者の対応状況を容易に把握可能。進捗が思わしくなければ組織として対応していくといった対策により、お客様を確実にフォローしていける体制が整っています」とタキゲン製造の横尾朋子氏は紹介します。
今後もタキゲン製造では、Salesforceのさらなる活用を通じて、営業活動における、なお一層の効率化と品質向上に注力していく構えです。あわせて同社では、Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)の本格活用に向けた準備も進めており、マーケティングオートメーションとの連動による営業活動の高付加価値化に向けた取り組みも推進していくことになります。タキゲン製造の掲げる「2025target300」のビジョン達成に向け、まさにSalesforceは同社にとって欠かすことのできないプラットフォームになっているといえます。