顧客同士の“絆”の深化を不可欠な駆動力と位置付け
モビリティカンパニーへの変革を目指す

顧客同士の“絆”の深化を不可欠な駆動力と位置付けモビリティカンパニーへの変革を目指す

法人向けカーリース事業を軸にビジネスを展開するトヨタレンタリース新埼玉。埼玉県という地域に根ざしたビジネスを展開する同社では、顧客との“絆”を強固にしていくことこそが、ビジネスの維持・拡大において最重要のテーマであると認識。その一環として、同社は法人顧客間の“ビジネスマッチング”を展開しています。そこで、個々の顧客をより深く理解するため、契約情報や商談、訪問履歴といった情報にとどまらず、営業担当が収集した顧客の趣味嗜好や家族構成、さらには信用調査会社のサービスと連携した企業情報なども広範に取り込んだ顧客情報基盤をSalesforceで構築。各顧客に対して適切なタイミングで必要な営業アプローチを行いながら、「お客様のお困りごと」をマッチングサービスで解決する仕組みを実現させました。情報の多寡で顧客セグメンテーションを行うというユニークな営業アプローチ、評価制度で、契約継続率を向上させるといった成果を享受しています。

1. 法人顧客のビジネスに寄与する“マッチングサービス”を展開

カーリース、レンタカー事業を軸に、中古車販売や損害保険代理店、携帯電話販売代理店などの事業を行なっているトヨタレンタリース新埼玉。埼玉トヨペットホールディングスグループの一員として、埼玉県という地域に根ざすかたちでビジネスを展開しています。その主力事業であるカーリースについては、埼玉県下の約2000社にものぼる企業に対しサービスを提供しています。

「当社のサービス内容はここ10年くらいの間に大きく様変わりしてきています。従来のように単にモノとしての自動車をお貸しするというだけではなく、例えば燃料やETC、運転日報等の管理にかかわる支援や、安全運転講習会の実施など、法人が自動車を利用する際の困りごと全般を解決するソリューションサービスメニューを提案するようになっています。ビジネスパートナーとしてお客様企業を支えるべく、サービスの拡充を図っているところです」とトヨタレンタリース新埼玉の山田敬輔氏は紹介します。

こうした同社の方向性はまさに、クルマを造って販売する「自動車会社」から、「移動」に関するあらゆる情報やサービスの提供を目指す「モビリティカンパニー」へと自社を変革していこうとするトヨタ自動車のビジョンとも軌を一にするものだといえます。

中でも、トヨタレンタリース新埼玉の取り組みにおいて、とりわけ特徴的なのが、地域の法人顧客のビジネスに寄与する“マッチングサービス”を展開していることです。具体的には、営業活動の中で知った、「お客様のお困りごと」を解決し得る事業者を自社の顧客リストの中から紹介するといった活動を行っています。

「お客様同士がつながることで、それぞれのお客様に喜んでいただき、ひいては当社とお客様の“絆”も深めていく活動です。我々はこれを“商縁”と表現しています。あくまでも『お客様のために』という当社の事業理念にもとづくもので、当然、紹介に際して手数料をいただくという類のものではありません。そうしたお客様との“絆”をより強固にしていくことこそが、結果的にこの埼玉県という市場にしっかりと根を張り、ビジネスを維持・拡大していくうえでの重要な基盤になってくるというのが当社の考えです」。

 
 

2. アナログな手法による顧客、営業プロセスの管理のシステム化を目指す

もちろん、そうしたトヨタレンタリース新埼玉のコンセプトを実現するには、個々の営業担当者だけではなく、全社として個々の顧客をいかに深く理解するかが重要なポイントとなります。十数年前より同社では、法人顧客ごとに「カスタマーカード」というものを作成して、情報管理を行っていました。カードには交換した名刺を貼付し、契約情報や取引履歴はもちろん、例えば社長や意思決定者の趣味嗜好や家族構成など、それこそありとあらゆる情報を記載します。それをホワイトボードとマグネットを使って見える化、組織内の誰もが閲覧できるかたちで運用していました。

「これを当社では『アピールボード』と命名しました。これは要するに、そこを見れば各営業担当者の作業状況がひと目でわかる、つまり担当者目線でいえば自らが顧客へのアプローチなり商談をどれだけ進めているかを上長やチームに対してアピールできるということになります」。

これら2つの独自施策の運用を続ける中、カスタマーカードについては内容の拡充を十分に図ることができない、といった問題、アピールボードについてもホワイトボード7面を使った管理になっていて煩雑感が拭えない、個人情報保護といった問題に直面。そこで、Salesforceを活用したシステム化に着手することにしました。

「Salesforceを採用した理由としては、当社のこうした顧客や営業プロセスの管理にまつわるアプローチが、ゼロベースではなくSalesforceが提供する既存の仕組みのカスタマイズによって柔軟に実現できることがあげられます。さらに、数多くの企業がセールスフォース・ジャパンを利用しシステムを構築されている事例がとても参考になり非常に大きなインパクトを受けました」。

 
 
 
 
 
 

3. 情報の多寡にもとづく顧客セグメントによる営業アプローチが成果をもたらす

Salesforceの導入により同社では、まず営業プロセスの管理という側面において、個々の法人顧客に対して、適切なタイミングで必要な営業アプローチが可能な仕組みを実現しています。リース契約満了の数カ月前に担当営業が顧客にコンタクトしてサービスの更新にかかわる案内を行い、確実に継続いただける体制を作るなど、営業力を強化していきました。

また、そうした各営業担当者が日々実施すべきタスクについて、Salesforceのダッシュボード上で常に可視化できるようにしました。担当者がある作業の完了報告を行えば当該タスクの色が変わり、さらにそれを上長が確認してコメントするとさらに色が変わるといった進捗をわかりやすく視認する工夫も行っています。もちろん、作業の漏れや遅延が発生した場合は、確実に担当者にアラートが飛ぶようになっています。

一方、かつてカスタマーカードで管理していた顧客情報は、Salesforceでより網羅性高く管理していきました。契約情報や商談、訪問履歴、さらには顧客から直接収集したさまざまな情報に加えて、帝国データバンクの企業情報を連携させたり、あるいは全国のトヨタレンタリース向けに基幹システムとして展開されている車両管理の仕組みのデータも取り込んだりして運用しています。

「当社では、顧客から収集した情報の多寡を“絆”を示す指標とし、S、A、B、Cのランク付けを行う仕組みをSalesforce上に実装して、営業活動に役立てています」と紹介します。契約車両台数や売上規模ではなく、そうした情報の多寡、すなわちエンゲージメントの深さを用いて顧客セグメンテーションを行っている点は、まさに同社ならではのアプローチで、注目を集めています。

この徹底的な顧客エンゲージメント強化で得たデータが、まさに、既に述べた“商縁”活動のナレッジベースになっています。顧客の困りごと(例:駐車場のポールが折れている)に応じてSalesforceでキーワード検索(例:看板・標識機製造企業)、問題の解消に最適な商品やサービスを取り扱う企業を顧客の中から速やかに抽出して紹介。顧客同士を結びつけ、そこにビジネスが生み出される仕組みを構築し、顧客ロイヤルティの向上に役立てています。

こうした取り組みによりトヨタレンタリース新埼玉では、元来、全国のトヨタレンタリース各社の中にあっても高水準を維持してきた契約継続率をさらに向上させるという成果を上げています。

「今後は、グループ会社である埼玉トヨペットとの協業で、同社が有する約2万社の法人顧客の情報も今回のSalesforceの基盤に取り込んで統合し、サービスの共同利用を進めていくべく、その可能性を模索しているところです」と考えます。

一方、先ごろトヨタ自動車では、二人乗りの小型BEV車であるC+podの提供を開始しており、この製品はリース契約専用となっています。そこでは、モビリティ社会におけるカーボンニュートラルの実現を念頭に、リースアップ後の車両を確実に回収し、搭載されている電池の「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)を積極的に推進していこうというスキームが描かれています。「こうした取り組みにも見られるように、今後、法人を中心に車をリースで利用していくという流れがさらに加速していくことは間違いなく、当社としてもお客様に向けた、さらに高付加価値なサービスの創出を目指していくことになります」と山田氏は強調します。これらの取り組みの推進が、さらなる“商縁”の規模拡大につながっていくことはいうまでもありません。

 
※ 本事例は2021年12月時点の情報です
 

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