Salesforceで保険契約業務のデジタル化を実現
入力業務を月間100時間削減
少人数の金融会社で行うDX推進
Salesforceを活用した代理店ポータルの構築により、
従来の紙ベースの業務プロセスが抱えていた非効率性を解消。
社内、代理店、契約者の3者に業務効率向上と新たな価値をもたらす
1. 少人数体制でも短期間でDXを実現
バイク・自転車向け会員制ロードサービスやレンタル、シェアリングエコノミーサービス、さらには各種保険など、二輪に特化した商品・サービスの提供を行うZuttoRideグループ。同グループ内で、車両保険、盗難保険などの損害保険分野の保険商品を取り扱っているのがZuttoRide少額短期保険です。バリエーションに富んだ補償プランの提案、商品力を武器に保険加入者の数を順調に増やしています。
2019年2月に設立された同社では、当初、自社のECサイトによって保険の募集を行っていましたが、事業拡大のため代理店チャネルを追加。その直後から、代理店の取り扱い件数が急増する中で、紙ベースでの契約申し込みも必然的に増加。事務スタッフ6名という限られた人手の中で、対応しなければならないことが喫緊の課題でした。
代理店側で受け付けた保険申し込みの内容は、ファクシミリ(FAX)でZuttoRide少額短期保険に送付されていました。それを受けて到着確認や記載内容のチェック、内容に不備があった際の修正にかかわるやり取り、記載方法についての問い合わせなど多くの作業が発生しました。当然、紙ベースで受け付けた申し込み内容は人の手で基幹システムに入力することになり、こうした作業も担当者の負荷となっていたのです。
「取り扱い件数が増加するにつれ、担当者の業務負荷は増大の一途をたどり、とくにトップシーズンなどは、多忙をきわめている状況でした。一方、代理店様にもFAX送信の手間はもちろん、申込書の控えなど紙ベースで管理してもらわなければならないなど、不便をおかけしていることも大きな課題でした」と同社代表取締役の岡田志乃氏は語ります。
契約受付業務に関する一連のプロセスを電子化する。この決断が不可欠であると考えた同社では、代理店向けのポータルの構築を検討していたところ、とあるWebセミナーの参加をきっかけに、Salesforceからの提案を受けました。
「人員の業務負荷の高まりに切迫感を持っていた当社の状況では、短期導入が実現できるSalesforceはきわめて魅力的でした。さらに追加機能やAppExchangeを利用すれば、ビジネスニーズに応じたシステム拡張が容易に行えることからも、Salesforceの選定が最善であると考えました」と岡田氏は採用理由を説明します。
ただし一方では、大手保険会社などで導入されることが多いSalesforceだけに少数精鋭体制の同社ではオーバースペックにならないか、そんな懸念があったといいます。
「これは実際に導入してみて感じたことですが、企業規模が小さいということは、ライセンス数も少なくて済みますし、それまで業務にかけていた人的工数を削減することができるため費用が割高ということはありませんでした。導入早々のタイミングで、かけている費用以上に効果が出ているため、コスト面での不満はいっさいありません」と岡田氏は当初の懸念を払拭した現実を語ります。
また、前職でシステム構築の経験があり同社の監査役を務める琴岡健太郎氏も「オーバースペックでは全くありませんでした。むしろ、Salesforceには保険業界向けの標準機能が備わっているため、スピーディに業務効率化を進めるには適切なソリューション選定であった」と評価をします。
2. 定型業務からの解放。売上向上にかかわるクリエイティブな業務に注力
2022年1月末にSalesforceの導入を正式に決めたZuttoRide少額短期保険は、その後、半年程度のシステム構築の準備を経て、同年7月にシステムを本格稼働させました。今回のプロジェクトでは、Service CloudとExperience Cloudの活用により代理店ポータルを立ち上げ、そのポータル上で代理店が契約申し込みを行える形を整えました。別事業を本業としている代理店がポータル利用に困らないよう、Knowledge機能を使ってFAQ集も用意しました。さらに、帳票化の仕組みとしてAppExchangeで提供されるoproartsも活用しています。
結果として、代理店からFAX送信された契約申込書の受付や内容チェックにかかわる担当者工数は大幅に削減できました。ポータル上の入力インターフェースに、内容の不備が生じにくくなるようデザインで工夫したほか、入力時の自動チェック機能なども功を奏しています。
さらに、代理店がポータル上で入力した内容をoproartsで請書として帳票出力し、Salesforce経由で基幹システムでデータ連携できるフローを構築。担当者が再度基幹システムに手入力するといった作業も不要になりました。
「トップシーズンを例にとれば、従来、担当者は月間100時間あまりを代理店とのやり取りに費やしてきましたが、今回のシステム構築により、そうした業務がほとんどなくなりました」と岡田氏は成果を強調します。
こうして担当者は、保険業におけるコア業務である、法令改正に向けた学習や資料づくりなどの対応により多くの時間を投入できるようになったといいます。自らの業務スキルの研鑽にも注力できる余力が生まれました。「いわば定型的な作業から解放され、クリエイティブな仕事に向かえるようになったわけです。そのことが、担当者をストレスから解放し、仕事に対するモチベーションを高めることにもつながりました」と琴岡氏は語ります。
一方、今回の新システムの稼働は、取引先の代理店にもメリットをもたらしています。契約申込書をFAXで送付するような紙ベースでの運用をする必要がなくなりました。また、各契約の内容はもちろん、代理店自身の挙績も含め、ポータル上でリアルタイムに参照できるような仕組みが整備され、代理店からも高く評価されています。
3. Salesforceの他業務への適用により、さらなるビジネス価値の創出
ZuttoRide少額短期保険はSalesforceの活用により、今後はさらなるビジネス価値の創出に力を入れていく考えです。すでに、開発の取り組みも進められています。「まずは、保険のエンドユーザーである契約者様に向けた利便性の向上を図っていこうとしています」と琴岡氏は話します。
具体的には、SalesforceのExperience Cloudを活用して、個々の契約者向けのマイページをブラッシュアップします。これにより、契約者がマイページを利用して、自らの保険契約の内容確認や、万一事故が発生した際の報告などが行えるようになります。
「契約者向けマイページでは、SalesforceのEinstein ボットの活用により、AIチャットボットを実装します。契約内容の確認や事故報告、さらには契約内容の変更なども含め、AIチャットを通じて契約者の要望を的確にガイダンスし、自己解決していけるような仕組みを実現します。契約者様の満足度向上とともに、ZuttoRide少額短期保険という会社にいっそう親近感を覚えていただけると考えています」と琴岡氏。
「ZuttoRideグループは、“困っている人を助ける”を原点に、『For All Riders.~すべてのライダーのために』を経営理念に掲げています。グループ全社が二輪車に特化したサービスを取り扱うため、二輪に対する知識力、商品力は負けていません。当然、ZuttoRide少額短期保険では、“こんな保険が欲しかった!”“こんなサービスがあって助かった”と1人でも多くのライダーに喜んでいただける保険を作り続けていきます。そのためにも、定型業務の効率化や今後の新たなサービスを支えるSalesforceは欠かせません」と岡田氏。続けて次のようにSalesforceへの期待を語りました。
「当社では、さらにグループ全体で連携してマーケティングに活用していくなど今後の活用の可能性を感じています。導入前に懸念していたコストの問題やオーバースペックの心配は全くの杞憂でした。もっと早く導入していればと今は思います。もしも導入に悩まれている企業がいらっしゃったら、まずは着手してみることをお勧めします」(岡田氏)