第3章:どのように顧客とエンゲージするか
顧客中心のビジネスプロセス
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古いプロセスをそのままデジタル化することはできません。
ビジネスプラクティスとはいわば各企業に備わった習慣であり、効果的な拡張を可能にする反復可能な行動のことです。製品中心の世界におけるビジネスプラクティスでは製品の製造、マーケティング、販売、サービスのやり方が最適化されています。顧客中心の世界では、それに加えて、さらにそうした活動を顧客の視点からも考えなければなりません。
目指すべきゴールは、従業員の負担を減らすことで、顧客の負担を減らすことです。
うまく構成された顧客体験はかつてないほど重要になっています。ここでは、調査で明らかになった事実をいくつか挙げます。
- 販売担当者 — かつては取引を成約に導くだけでしたが、 今では何よりも顧客満足度の追跡が主眼となっています(英語)。
- パフォーマンスの高いマーケターのほとんど(88%)は、組織を横断して 顧客体験向上のための取り組みを率先している と答えています。
- 情報テクノロジー(IT)部門のリーダーも、 顧客体験を最優先事項に挙げています。
ビジネスプロセスを顧客中心に再設計することは、ビジネスを単なる販売活動ではなく、人の役に立つための活動と捉えることを意味します。これはすなわち、顧客のインサイトを活用することで、一人ひとりに合わせたレコメンデーションを提示するなど、よりパーソナライズされた体験を提供するということです。さらに顧客接点を合理化することで、顧客の余計な時間と手間を省くことにもつながります。
優れた体験を提供する唯一の方法は、従業員がカスタマージャーニーのあらゆる段階をサポートすることです。たとえば、単に取引の手順を減らすところから初めて、最終的に『取引全体をシームレスにする』ことも可能です。
例えば、Uberはタクシーに乗るときの体験を一新しました。Uberはまずあらゆる問題点を洗い出し、可能な限りそれらを取り除くことに成功。その結果ユーザーは雨の中でタクシーを呼ぶことも、支払いで待たされることもなくなりました。と同時に、ドライバーは乗客を簡単に見つけられるようになりました。このように、顧客と従業員の体験を向上することで、Uberは業界に革命をもたらしたのです。
「新たな習慣が日々生まれています。驚いたのは、Sonos.comにアクセスする多くの顧客は、製品を視聴したり実際に見ないまま購入したりしているということです。私たちのようなビジネスでは、顧客が製品を実際に見て聴かないと売れない、というのが常識でしたが、それを覆したことになります。安い製品ではありません。モデルによっては800ドルもします。顧客はブランドを信頼し、ブランドと直接関わり合うようになっています」
Patrick Spence氏
Sonos最高経営責任者
片付けるべき用事(Jobs to Be Done)を定義する
顧客が企業に期待する大きな要件は、その時「片付けるべき用事(Jobs to Be Done:JTBD)」を常に解決することです。ハーバードビジネスレビューによると、顧客のJTBDとは「顧客が与えられた状況で片付けようとしている進捗事項であり、顧客が達成したいと望んでいる作業」です。
顧客のJTBDを定義することで、顧客のニーズを満たしやすくなり、顧客の需要に合わせてビジネス手法を再構成できるようになります。そうすることで、製品ではなく、顧客の方に常に重点を置くことができます。
その結果、顧客の全体像を把握し、製品やサービスの利用状況を確認して、現実的な問題を解決できます。時間をかけて顧客の実際の姿を学び、そうした行動を取る理由を明らかにしましょう。
始めましょう:まずは1つの顧客接点から取り組む
顧客に話を聞くと、きっとあなたの会社の不便な点や不便な顧客接点の例を挙げてくれるでしょう。すぐにチーム全体でその問題に携わっているステークホルダーを集めて、解決方法を模索しましょう。その際は1つの顧客接点とそれに対処するためのチームと時間に集中して取り組むべきです。
例えば、何か問題があったときに、なぜお客様に電話してもらわなければならないのでしょうか。事前に問題を特定し、その解決に向けて能動的に対応するのは不可能なのでしょうか。そんなことはないのです。適切なデータとプロセスさえあれば、お客様がキャンセルされたことに気づく前に、航空会社はお客様をキャンセルされた便から代替便に変更するようにできるはずです。
顧客の立場に立って、顧客が何を、いつ、なぜ望んでいるのか想像しましょう。顧客が苦労せずに目的を達成できるようにする方法を考えてください。
実行すべき主なアクション
- 対象となるペルソナと独自の行動を明らかにする
- ユーザーのニーズへの理解を深める専門家のグループをつくり、製品、マーケティング、プロセスにフィードバックできるようにします。
- 顧客基盤を小規模なペルソナグループに分割することで、メッセージング、製品開発、関係管理をカスタマイズしやすくします。
- それぞれのペルソナに合わせてジャーニーマップを作成し、体験の各段階のJTBDをまとめます。
- 自社の力を最大限発揮できるようにする
- 1つのチームとして、信頼できる唯一の情報源とカスタマージャーニー通じて顧客に対応できるようにします。
- 自社と顧客の間のあらゆるやり取りで、一貫した追跡を可能にします。
- そのデータを製品と機能の短期および長期的なロードマップに反映します。
- パーソナライズされたカスタマージャーニーをどんな規模でも提供できるように最適化する
- チャネルの枠を越えてコミュニケーションできるプランを開発し、顧客とエンゲージします。
- 従業員全員が顧客とのやり取りを閲覧できるようにすると同時に、顧客と直接やり取りする機会も与えます。
- データポイントを統合し、顧客体験の全体像を把握できるようにします。