変革のためのハンドブック
発想を転換し、縦割り部署を連携させ、顧客を中心に据える方法を学びましょう。
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Bret Taylor
Salesforceプレジデント兼最高執行責任者
Salesforceプレジデント兼最高執行責任者
世界的なパンデミックにより、個人の生活や仕事のほぼあらゆる側面で変化が加速しています。
依然として先行きがまったく見えない中で、私たち誰もが最善策を模索しています。
顧客を含めた私たちみんなが学んだ重要なことは、すでに始まっていた変革が、新型コロナウイルスによってさらに加速されたという事実です。その結果として顧客中心主義への転換、従業員や顧客への対応方法の再考、従業員エクスペリエンスの重要性、それに加えてデジタル化によって、どこでも仕事ができる世界に向けた自己改革などがさらに促進されました。
しかし、それらの実現に向けては従来の考え方、縦割り構造、レガシーシステムが障壁として立ちはだかります。テクノロジーはこれらの解決に役立ちますが、それだけでは決定打になりません。単に古いやり方を新たなテクノロジーに適用するだけでは、チームメンバーたちが優れた顧客体験を大規模に提供しはじめるような劇的な変化は起こらないのです。
私は劇的な変化、変革の実現にはリーダーがテクノロジー、製品、部署、システムといった社内的な視点ではなく、顧客中心の視点で物事を考える必要があることに気づきました。
もちろん「言うは易し、行うは難し」です。このハンドブックがそんな変革を確実に推進する指針になれば幸いです。あらゆる規模や業界の組織に所属する数千人の最高責任者レベルのリーダーとの作業を通じて、企業が顧客中心の体制へと確実に進化するために必要なパターンが浮かび上がってきたものがまとまっています。
金融サービスのCEOやB2Bテクノロジー企業のCIOだけでなく、変化を検討しているあらゆるリーダーが本書を読むことで、顧客をビジネスの中心に近づくためのきっかけを得ることを願ってやみません。
Bret Taylor
目次
このガイドで変革を加速する方法
提供する製品やサービス、あるいはチームの連携方法において根本的な転換を実現することは、大規模で複雑に見えるかもしれませんが、このガイドで解説している各ステップに従うことで、計画を立てて進化を遂げることが可能です。このガイダンスは、Salesforceが21年の歴史の中で経営リーダーとの数千に及ぶ作業セッションやプロジェクトで学んだことがベースとなっています。
リーダーが今まさに直面しているのは、「単に今まで通りに対応するだけでなく、抜本的な見直しをもとに、差別化に繋がる方法をとるためにはどうすればよいのか」という疑問です。しかしたとえどのような未来になったとしても、顧客中心の思想と構造を築くことは、顧客のニーズを中心に部門、従業員、ステークホルダー間の結束を高めることにほかなりません。
顧客、パートナー、従業員と自社のビジネスとの関係性を高め、将来起こるかもしれない危機に耐えうる会社にするためにはどうすればよいのでしょうか。
このハンドブックでは、フィードバックループとイノベーションサイクルの中心に顧客を据えるアプローチに焦点を当てています。あらゆるリーダーが今すぐ始めることができる、「後悔しない」ための行動が記載されています。
この変革を推進するために、このハンドブックに繰り返し登場する2つの重要な言葉を覚えておきましょう。それは「マインドセット(Mindsets)」と「ディシプリン(Disciplines)」です。
マインドセット: マインドセットとは、人々の行動を形作る共通の前提条件です。企業の停滞や、前進に大きく影響します。
ディシプリン: ディシプリンとは、顧客中心を実現するビジネス手法です。従業員、部門、パートナーを団結させて、組織全体で顧客のニーズに対応することを可能にします。
どんな業界や職務であっても根本的な課題はたいてい同じであることが多く、顧客第一主義の改革を推進するための重要なステップも同じです。本書では6つの章でどこから考え始めればいいのかのポイントや実践的なヒントを紹介しています。
第1章:デジタル変革という必須課題を満たせるかどうかは
それぞれの意識次第
パンデミックは大規模な変化を加速していますが、そこから学んだ重要な事実は、業界によって人々の運命が左右されることはないということです。
実際、あらゆる業界には勝者と敗者が存在し、その成否は各企業の行動によって左右されます。デジタルへの移行を決断したリーダーと、「オールドノーマル」への回帰をひたすら待つリーダーの間には、業績の差が存在します。一般に、企業はいずれかの対応を取ります。
改善意識のアプローチとは、事態の成り行きを静観する姿勢です。従業員はデジタル化されておらず、顧客の新たなニーズを予測したり、顧客が所有するデータを解釈したりする術を持ちません。さらに、リーダーはデジタルを理解していません。その結果、最悪の危機の中で成長率は下降し、経済が全体的に回復しても、他社よりも回復幅ははるかに小さくなります。
これは、脱却意識を持つ企業とは明確な対比となります。脱却意識を持つ企業とは、新型コロナウイルス以前からデジタル化を推進してきた企業です。Amazon、Netflix、Zoomはその典型です。完全にデジタル化した世界を想定して構築された組織です。顧客の進化するニーズを中心とし、スピード、シンプルさ、パーソナライズされた体験に絞り込んで組織を編成しています。
多くの顧客は、いわゆる進化の意識を持っています。もともとはデジタルネイティブではなかったものの、自らの顧客のニーズへの焦点を入念に合わせなおしています。ほとんどの企業は新型コロナウイルス以前からデジタル化を開始していますが、今回の危機により、古いお役所仕事が一掃され、想像もできなかったスピードで変革が進んでいます。
こうした企業は、「この働く拠点を問わないデジタルファーストな世界で自分自身を見直す」という明確な必須課題を掲げています。
デジタル変革を通じて進化と成長を達成し、成功を収めている企業には、5つの顧客中心のディシプリンがあります。これらは、すべてがデジタル化された新しい時代において成功するために非常に重要であり、お客様がすべてのSalesforce製品で実現できる価値を最大化するための支援をSalesforceカスタマーサクセスチームが行う際の基盤にもなっています。