自動車業界のトレンド

500名の業界リーダーの知見に基づく、カーユーザーの”うれしい”体験を創り出すデジタルの必要性

 

エグゼクティブサマリー

自動車業界はデジタル化によって歴史的な転換期を迎えています。自動車が自律走行(英語)するコンピューター(英語)となりつつあることがそれを示しています。消費者はこれまでディーラーのショールームで自動車を購入していましたが、今ではオンラインで購入することも可能です。かつては整備士による確認が必要だった不具合もネットワークを介してシステム更新できるようになっています。

このようなイノベーションを目の当たりにすると心が躍ります。しかしながら、企業側の視点でみると変化が激しく先行きが不透明になりつつあるとも言えます。世界規模での研究開発投資や環境保護への対応が収益を圧迫しており、利益率を維持するのが難しくなっています。

Salesforceは、自動車業界の課題を把握するために自動車メーカー、カーファイナンス会社、ディーラーのキーマンにインタビューを実施しました。このレポートでは、企業が利益と持続可能性と両立する上で直面するリスクやチャンスについてご紹介します。

このレポートでは、Salesforceの業界専門家が、世界各地の自動車メーカー、カーファイナンス会社、ディーラーの500名の従業員に以下のテーマでインタビューを実施しました。

・デジタルカスタマーエクスペリエンスの取り組みの進展
・ファーストパーティデータの重要性が増している理由や背景
・電気自動車関連の投資が収益に与える影響

本レポートは、2022年4月20日から5月16日に実施したダブルブラインド調査によるもので、自動車業界のディレクター以上の意志決定者の回答をもとに作成しています。回答者には、北米、南米、欧州、アジア太平洋の回答者が含まれており、第三者機関により情報を取得しています。数値を小数点以下の数値を四捨五入しているため、合計値が100%にならない場合があります。割合の比較では、四捨五入前の数値を使用して算出しています。

パート1

「快適なドライブ」にはほど遠い顧客体験

 

現状と乖離がある企業の認識

消費者の多くが自動車を探したり、価格を調べるためにCars.comのようなデジタルマーケットプレイスを利用するようになっています。パンデミック、在庫の不足、物価の上昇などの影響もあり、ディーラーのショールームを訪れる消費者は減っています(英語)

この変化に対応するために、自動車メーカー、カーファイナンス会社、ディーラーは、小売業界が提供しているようなデジタルエクスペリエンスを強化するようになっています。この取り組みでは、在庫の確認だけでなく、希望するオプションや装飾部品の選択、ローンや融資の申し込み、納車や返却の予約が含まれています。購入後の体験も変化しています。ローンの管理、リースの延長、サービス更新のダウンロード等を全てオンラインで済ませることができるようになっています。

 
「ディーラーと自動車メーカーがDXを推進する上で本当に効果があるのは、お客様がディーラーで価格の合意をしたり、契約を完了したりする上でのストレスや時間を削減することです。」
Vicki Poponi(Salesforce VP・自動車インダストリーアドバイザー)
従来の購買体験に満足していない99%の顧客(英語)にとってこのような変化は歓迎するべきことです。しかしながら、残念なことに本調査では企業の自己評価よりも実際のデジタルジャーニーが進んでいないという結果が出ています。本調査では73%の企業が自社のDXの取り組みは他社より優れていると考えているのに対し、McKinseyの最近の調査(英語)では、物理的なタッチポイント(顧客が不満を持つやり取り)がいまだに購買体験の多数を占めているとの結果が出ています。さらに同調査では、ほとんどの購買交渉がディーラーのショールームで行われているのに対して、多くの顧客が表示価格のままで購入できるオンラインの価格見積りに関心を持ち、ローンや下取りの申請をデジタルでできるように強く希望していることがわかっています。
DXや革新的なソフトウェアの導入ができていると自己評価する企業の割合
次の分野のデジタル化・パーソナライゼーションに関する自己評価が平均以上・平均よりはるかに優秀と回答した企業の割合

消費者は価格の透明性と整合のとれた融資の情報を求めているが、企業は顧客の期待に応えられていない

多くの顧客にとって自動車の購入は支払い可能な金額を理解するところから始まります。ローンシミュレーターのような計算ツールは、この検討に役立ちます。しかしながら、自社のオンラインツールが平均よりはるかに優秀だと評価したカーファイナンス会社はたった27%でした。

さらに好ましくないことに、実際に顧客が支払う価格とウェブサイトの掲載価格が常に一致していると答えた回答者の割合は24%でした。74%の消費者(英語)が誠実なコミュニケーションと情報の透明性がパンデミック前よりさらに重要となっていると回答しており、これは深刻な問題だと言えます。

オンラインのカーファイナンス及び関連サービスについての自己評価で平均よりはるかに優秀と回答した企業の割合
 

購買プロセスの複雑さはEコマース機能の課題

自動車の購買プロセスは複雑です。そのため、アパレルのようなEコマース取引が簡潔な他の業界と比較して、自動車業界のデジタル体験は遅れ(英語)をとっています。本調査でもその複雑性が顕著になっています。1/5以下の自動車メーカーとディーラーしか自社のデジタル店舗が魅力的でモバイルフレンドリーだと回答していません。また、ほぼ同数の企業がオンライン在庫の正確性に問題があると回答しています。

ディーラーの回答では、顧客がオンラインにおける新車のオプション選択にも課題があるとされています。例えば、79%がオンラインでの装飾部品や色の選択が難しいと答えています。取引完了までにかかる時間に改善の余地も大きく、迅速な購入体験を提供できていると答えた自動車メーカーとディーラーは21%だけでした。

オンラインでの自動車・部品販売に関する自己評価で平均よりはるかに優秀と回答した企業の割合

購入後の体験も改善が必要

下取り、注文、カーファイナンスなど新車販売に係るプレイヤーの数を考えると、顧客が購買を完結するまでの顧客体験が複雑になるのは説明がつきます。一方で、アフターセールスの顧客対応の簡素化も求められています。しかしながら、現状では購入後のデジタル体験が課題である企業が多いと言えます。79%の自動車メーカーとディーラーがデジタルチャネルでのアカウントや問合せ内容へのアクセスに問題があると報告しています。同様に、75%のカーファイナンス会社が、オンライン、テキストメッセージ、または電話でアカウントや問合せ内容にアクセスする際に問題があると報告しています。
 
 
 
 

次ページ パート2:自動車企業は正しいデータ戦略によって顧客体験を改善できる

 

わかること:

  • 企業がゼロ・ファーストパーティデータを必要とする理由
  • 顧客データの統合がコミュニケーションのパーソナライズにって重要である理由
  • コネクテッドカーのデータが将来の道標となる理由
 
 

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