第4次産業革命で変わる製造業の未来
顧客中心の“つながる”モノづくり
これまで多くのメーカーは、製品を中心にバリューチェーンを構築し、高い競争力を発揮してきました。より高機能で品質が高い製品を、効率的かつ安価に製造し、それをタイムリーに顧客へ販売することで、ビジネスを拡大してきたのです。しかし最近では製品のコモディティ化が進み、機能や品質で差別化することは困難になってきました。また価格や製品を市場に投入するタイミング(Time to Market)も、アジア地域の企業が成長することで、激しい競争にさらされるようになっています。
顧客の価値観も大きな変化を遂げています。「素晴らしい製品を手に入れる」ことに加え、それを通じて得られる「体験」を重視するようになっているのです。このことは、これからのメーカーは「もの」づくりだけではなく、顧客にとって魅力的な「こと(体験)」づくりも行うことで、他社と差別化を図らなければならないことを示しています。B2Cはもちろんのこと、B2Bの世界でも同様です。企業ユーザーも製品そのものではなく、それによって得られる価値を求めるようになってきているのです。
このような背景の中、IoTやAIなどの技術革新により顧客と強固な関係を築くことが可能となり、製造業が「こと(体験)」づくり、言い換えれば「サービス化」を目指しやすい環境が整ってきました。電子工学やITがもたらした第3次産業革命に「インテリジェンス」が加わった「第4次産業革命」は、製造業の産業構造を大きく変えていくことになるといわれています。
このようなビジネスモデルの変革は、すでに日本でも始まっています。日本能率協会コンサルティングの調査によれば、国内製造業で「サービス化を検討したことがある企業」は68%に上っており、実際に「取り組んでいる企業」も61%となっています。しかし「成果が出ていると感じている企業」はわずか4%。取り組みは進んでいるものの、なかなか成果が得られない状況にあることがわかります。
なぜ変革への取り組みが実を結ばないのでしょうか。IoTやAIを活用したビジネスモデルの変革を行う前に、取り組んでおくべきことがあるからです。それはバリューチェーン全体を「顧客視点でつないでいく」ことです。
それはどのようなことなのでしょうか?まずは最初に行うべき 3つのフェーズをご紹介します。