IoT/AI 時代のいまこそ考える、製造業における
サービス業務のありかた
解決に時間がかかる?製造業のサポートサービス
多くの製造業の「サービス業務」に存在する問題
- 解決に多くの手間と時間がかかっている
- 顧客の過去の問い合わせ履歴がすぐにわからない
- 顧客の問い合わせ方法(電話、メール、SNSなど)ごとにシステムが異なる
- 顧客が自己解決できない
期待を超えたサービス「感動体験」で売上増大
一般的に、継続的なビジネス成長には、高額なマーケティング費用を費やして新規顧客を開拓することより既存顧客のライフタイムバリュー(LTV)を増大させるほうが効果的といわれています。このLTVの最大化に大きな威力をもたらすのが、製造業者に対する「評価」で、購入した製品に満足していただくのはもちろん、「このメーカーの他の製品も購入したい」「他の人にもぜひお薦めしたい」という「NPS(Net Promoter Score:顧客推奨度)」を高めれば、売上増大につながっていくといいます。
しかし一方で、このような「顧客ロイヤルティ」を獲得するには「当たり前の体験」だけではなく「感動の体験」を提供しなければならないともいいます。この顧客体験のレベルは、大きく5段階に分かれると指摘されています。まずレベル1が商品として不可欠な「基本価値の提供」。レベル2は顧客が当然だと期待する「期待価値の提供」。レベル3は顧客が「ここまでしてくれたらいいな」と考える「願望価値の提供」です。レベル1~3までの体験により、顧客の期待に応え、ある程度の顧客満足を高めることは可能です。しかし顧客体験を感動の領域まで高め、結果、自社のファンとなってもらい、再購入やリコメンドまでのユーザーに育てていくには、顧客の期待を超えた体験として、レベル4の「予想外価値の提供」や、レベル5の「共感、信頼、愛着」を目指す必要があります。
製造業の現状のサービスのレベルは?
では、一般的な製造業者が持っている問題に立ち返り、保守サービスを例に考えてみましょう。
製造業にとっての保守サービスは、製品の故障に伴う修理対応など、ネガティブなものが多くを占めています。ここで顧客の期待を超える対応ができれば、何も問題がなかった場合に比べ逆に高いNPSにつながる可能性がある一方、レベル3以下の顕在化されたニーズへの対応に不備があれば、顧客満足度の低下につながっていきます。もちろんそんなことが起こらないよう、サービス業務を行うコールセンターやお客様相談室(または、営業部や品質管理部、技術管理部)はインシデントの対応ルールを持っています。しかし、そこに非常に煩雑で手間のかかるプロセスが存在しているケースは少なくありません。
レベル3に「すぐに修理してくれた」とあるように、修理対応には迅速さや正確さが求められます。そのためには、不具合の詳細情報、技術情報はもちろん、顧客情報、契約内容などが必要なほか、B2Bビジネスであれば、その顧客と現在進行中の案件情報や関係する社内外関係者一覧など、参照すべき多岐にわたる情報を、即座に入手できる環境が求められます。しかしこの情報が各部署、各システム、各フォルダに分散していると、収集に多くの手間と時間がかかり、対応スピードが遅くなります。また、これらを表計算ソフトで管理してメールで関係者とやり取りするコミュニケーション方法だと、対応履歴が抜けたり、伝えるべき人が漏れてしまったり、ファイルが先祖返りしてどれが最新かわからなくなったりし、正確性にも問題が生じてきます。結果、顧客の生産ライン停止などという最悪な事態を招けば、顧客満足度の低下は免れず、ビジネスに悪影響を与える可能性すら出てきます。このリスクは、今すぐに回避しなくてはならない問題です。
競合他社はもう取り組んでいる。すべての製造業が今行うべきこと
一方で「感動体験」を生み出しNPSを向上させるサービスとはどのようなものでしょうか。顧客の予想以上に迅速に正確にトラブルを解決したとしても、もし顧客が過去にも同じ体験をしていたり、もしくは障害が致命的であったりした場合には、NPS向上にはつながらないといいます。ここで有効なのが、IoTやAIの活用です。IoTを活用して現場から各種データをセンシングし、分析結果から不具合を予兆し事前に顧客に連絡する予防保守が行えれば、トラブルを未然に防ぐという予想外の価値に顧客から感謝され、NPS向上に大きく貢献する可能性があります。
AIの活用も期待できます。例えば修理現場で想定外の状況が発生しても、従来だったら持ち帰り対応となり顧客を落胆させたかもしれませんが、心配には及びません。新たに見つかった問題をAIに問い合わせることで、どのような作業が必要なのかといった指示をその場で受けられるからです。こういった感動体験が顧客をロイヤルカスタマーに醸成し、その結果、製造業者はものづくりから「ことづくり」へと進化していくことができます。ただし忘れてはならないのは、AIが指示できるのは、技術情報はもちろん、マーケティングや営業、カスタマーサポートなどすべてのバリューチェーンにおけるあらゆる情報が顧客を中心に一元的に蓄積され、そこから最適な解を導き出せる場合だけです。
クレームや取引停止などのリスクを回避するにも、そして顧客ロイヤリティを向上しことづくりの製造業者になるにも、顧客情報を中心に、サービス業務に必要なインシデント情報、過去のインシデント情報、契約情報、商談情報、関係者情報が整備され一元的に管理できている必要があります。これには、CRMの活用が有効です。
貴社のサービスレベルは1〜5のどのあたりにあるでしょうか。サービス業務にまつわる情報管理の整備は、製造業にとって喫緊の課題であることは間違いありません。今すぐCRMの活用を検討すべきでしょう。