株式会社クレスト
株式会社クレスト
成長の陰で山積していた課題
事業承継を機にSalesforce導入
1987 年設立の株式会社クレスト(東京都港区)は、企業の屋外広告等を制作するサイン事業からスタートし、店舗や商業施設の屋内外広告等を手がけるデジタルサイネージ事業を主軸として、堅実に業績を伸ばしてきた。
デジタルとITを活用した伝統産業のイノベーションを推し進めるべく、造園業と植物を中心としたリテールストア「インナチュラル」の運営も手がけ、自社自身で積極的にテクノロジーの活用をしている。
そんな同社に転機が訪れたのは2010 年。現代表取締役社長の永井俊輔氏が、創業者である父から事業を承継したのだ。会社の着実な成長の陰で、当時、社内には課題が山積していた。たとえば、営業担当者が見積書などを各自のPCにExcel形式で保存していたため、担当が変更になったりすると、過去の案件についての情報がうまく引き継がれず、そのまま埋もれてしまう。請求書についても、経理部門がExcelの請求書発行用伝票を会計ソフトへ手入力し、さらにそれを別の会計ソフトに入力しなければ発行できない。また、案件成立の情報が共有されず、高額案件が発生しても、そのことを営業担当者が社内で公言しない限り、上司や同僚のフォローを受けられない。そうした課題を解決すべく、2012 年に永井氏はSales Cloudの導入を決断したのだ。
案件・行動情報を可視化・数値化
1年間で売上成長率が10%から30%に
導入後、永井氏がまず取り組んだのは、Sales Cloudの利用の社内定着化だ。そのための工夫として業務に必要な機能をSales Cloud上に構築し、それを使わなければ業務が進まないようにした。
「たとえば営業活動では、これまで紙ベースで保管していた商談から受注に至るまでの記録をSalesCloud上で管理するようになり、誰がどんな商談を行ったかを簡単に把握できるようになりました。また、リード分析によって、どのキャンペーンがどの程度の効果を上げたかを数字で評価できるようになったのも大きい。以前のように感覚や経験に頼らず、データにもとづいたキャンペーンの実施が可能になりました」(永井氏)
同時に、ダッシュボード機能や社内SNS Chatterを活用し、アポ獲得数や受注数などの業績評価指標を全社で共有することによって、会議の時間が大幅に短縮されただけでなく、経営側が的確な指示やアドバイスを行えるようになった。さらに、社員の行動や業務のノウハウが可視化・数値化された結果、皆が業績向上に必要な行動を理解し、高い競争意識を持って仕事に臨むようになった。
そして、従来5~10%で推移していた同社の年間売上成長率は、Sales Cloud導入の1 年後、一気に30%まで向上したのだ。
Account Engagement (旧Pardot)へのリプレイスで
誰もがMAを使えるように
さらに同社は、見込み客の発掘・育成を強化するため、2019 年2 月にAccount Engagement (旧Pardot)の運用を開始。もともと同社は、2014 年に導入した他社のMAをSalesCloudと連携させ、成果を上げていた。しかし、機能やユーザインタフェースが複雑で習熟に時間がかかり、またSales CloudとMAはあくまで別のシステムであるため、それぞれにログインしなければ必要な情報を把握できないなど使い勝手が悪い、といった課題があった。
「当初はMA利用者が私だけだったので問題なかったのですが、マーケティングの人員を増やそうとしたとき、使い方を教えるだけですごく時間がかかってしまいました。新入社員相手ならなおさらです。弊社ではすでにSales Cloudが基幹システムになっているのだから、他社のMAよりSales Cloudとの親和性が高く、直感的で使いやすいAccount Engagement (旧Pardot)に今からでも切り替えるべきだ、と考えました」(永井氏)
Account Engagement (旧Pardot)導入で、課題は一気に解消された。インサイドセールス部門の誰もが簡単に、Account Engagement (旧Pardot)のスコアリング機能を使って見込み客のWebページの閲覧状況などを把握しつつ、Webサイト経由で取得した見込み客のメールアドレス等をもとにアポイントを取得し、営業担当者に引き渡せるようになったのだ。
導入6年後に売上3倍増!
組織の成長は次のフェーズへ
Account Engagement (旧Pardot)が同社にもたらした最大の成果は、システムの習熟に要するコストが大幅に下がったこと。そう話すのは、同社取締役で経営管理本部長の峯拓也氏だ。
「SFAとMAを同じベンダーで統一し、その中ですべてを完結できるようになったメリットは大きい。新入社員に対し、SFAとMAをSalesforceというひとつのツールとして教えられるので、たった半年でSFAとMAの両方を使える人材を育成できる。組織全体の体力強化につながりますし、社員のキャリア形成にも大いに役立っています」(峯氏)
「結局、MAのようなツールは日々進化するので、『そのときなにができるか、できないか』ではなく、『なにが会社のコアになっているか』で決めなければならないと痛感しました。弊社のようにSalesforceがコアになっているのであれば、他社製品と比較検討する必要すらない。それが私の結論です」(永井氏)
Salesforce導入当初、約10 億円だった売上は、営業担当者の数を増やすことなく、6 年後には30億円、実に3 倍に跳ね上がった。新人営業が一人前に成長するまでの期間は約4 分の1に短縮されたという。
「IT 投資による業務効率の最適化がほぼ完了したので、人への投資という次のフェーズへ進み、組織のさらなる成長を実現する予定です」(永井氏)