株式会社サンゲツ
“営業業務は95%電子化することで一気に効率化され、月間2,500 時間の工数を削減できました。全社的にも紙の年間使用量を大幅に減らすことができています”
働き方やパートナーとの繋がりを改革し
プラットフォーム化を推進
業界最大手の老舗が挑む強く効率的な営業体制の再構築
従来、ビジネスにおけるITの活用は、紙の電子化や電話受付のWeb化など、単なるシステム化による業務効率化にとどまっていました。しかし、現在の企業に求められているのは、かつてないビジネスモデルや顧客体験、他社との差別化といった新たな価値を生み出し、ビジネスをよりよい方向へと変革する「デジタルトランスフォーメーション」です。そして、Salesforceでまさにそれを推進しているのが、株式会社サンゲツ(愛知県名古屋市)です。
1849 年創業の老舗である同社は、その長い歴史において着実にビジネスを拡大し、インテリア業界最大手の専門商社としての地位を確立しました。しかし、2014 年当時、社内には、順調な成長の陰で見過ごされてきた課題が山積していた、と情報システム部情報システム二課の森祐輝氏はいいます。
「営業担当者は日々、施主、ゼネコン、設計事務所、代理店、内装業者などに対して全方位的に営業活動をしながら、社内業務として単価処理やクレーム処理などもこなさなくてはならない。そういう自己完結型営業や、訪問件数重視の古い管理体制が限界に達していました。また、なにをするにも“紙対応”で、机の上には申請書などの“紙”が積み上げられている。業務の効率化と営業体制の再構築が急務でした」(森氏)
そこで同社は、「強い営業・効果的な営業・効率的な営業」の実現を目標とする中期経営計画を策定し、課題を一括して解消できるプラットフォームとして、Sales Cloudの全社導入を決断しました。
95%電子化で営業業務を効率化 営業担当者の働き方も劇的に変化
同社はまず、営業に関する全情報をSales Cloudに入力し、顧客情報や活動情報、案件の進捗状況を可視化。一貫性のないシステムでは困難だった、ダッシュボードで随時状況把握ができるようになり、データにもとづく的確な営業活動が可能になった、と森氏はいいます。
同時に取り組んだのが、ワークフローの電子化です。営業本部本部長室長の冨田一哉氏によると、申請業務を紙で行っていたかつては、年間約1,800万枚もの紙が使用され、最終決裁までに1か月を要することもあったといいます。そうした非効率的な状況は、Salesforceによって一変しました。
「営業業務は95%電子化することで一気に効率化され、月間2,500 時間の工数を削減できました。全社的にも紙の年間使用量を大幅に減らすことができています」(冨田氏)
さらに、営業の働き方自体を大きく変えたのが、”機動営業”の実現です。営業担当者には毎日の必須業務として、通常の日報の記入のほか、商品単価の入力や承認、クレーム処理などがあります。従来はそれらをオンプレミスのシステムで行っていたため、事務所に戻らなければ完了できませんでした。
営業本部本部長室の中野慶介氏によれば、それらの業務すべてがクラウド化されSalesforceで繋がった結果、営業の働き方は劇的に変化したそうです。
「それは単に、モバイルでどんな場所でも仕事ができるようになり、残業や休日出勤が激減したということではなく、全データが可視化され、タイムリーに情報共有できるようになったことによって、よりコミュニケーションが活発になり、事前準備や出先でも確認がしやすい環境が整ったことが非常に大きなメリットなのです」(中野氏)
代理店・仕入先と「繋がるサンゲツ」"お客様"に対する意識改革が進行
変わったのは社内だけではありません。「繋がるサンゲツ」という考えのもと、2016 年に導入されたCommunity Cloudが、代理店や仕入先との繋がり、あるいはその働き方にも変化をもたらしました。代理店は、Community Cloudで構築された代理店向けポータル「サンゲツネット」を通じて、商品検索や在庫確認、送り状の問い合わせ、出荷証明書の発行など、さまざまな作業をWeb上で自ら完結できるようになったのです。
「従来は、代理店様からのお問い合わせはすべて電話やメールで非効率的でした。今は、弊社の営業担当へ問い合わせなくても在庫などの情報をWeb上で確認できるので、代理店様としても効率よく業務を進められるようになったはずです。もちろん弊社側も、『サンゲツネット』が月間約150 万回利用されている分、業務負担は格段に軽減されています」(森氏)
商品の仕入先との情報共有には、「サンゲツコネクト」というポータルを用意。ExcelやFAXで行っていた仕入先との納期交渉や回答などを一元的に管理できる仕組みを整えました。
「担当者のExcelを確認しなくても、社員間で仕入れに関する情報を共有できるようになりました。人に依存しない、新入社員でも対応できる業務体制になったわけです」(中野氏)
壁装、床材、ファブリックといった各事業部で異なっていたプロセスも標準化されたといいます。さらに、こうした代理店・仕入先との繋がりの変化は、同社にとっての”お客様”という概念そのものをも変えつつあります。
「従来弊社は、商品の販売先である代理店様や内装業者様を”お客様”とし、今もそのビジネス構造自体は変わりません。しかし、Salesforceのセキュアな環境で、顧客情報や戦略情報を共有し、繋がりを強化した結果、お客様に対する考え方が、単なる”お客様”から、一緒にビジネスを作っていく”パートナー”へと変化してきています。むしろ、弊社にとっての”お客様”は、直接販売する対象ではないけれども、建築案件において弊社の商品を採用するかどうかを決定している、設計事務所やゼネコン、内装業者、施主といった方たちであるはずだ、と。弊社では今、そういう意識改革が進んでいます」(冨田氏)
そうした変化は、カーテンを販売する子会社、株式会社サンゲツヴォーヌにおいて新たな取り組みを生み出しつつあります。顧客であるインテリアコーディネーターの趣味嗜好をMAツールのAccount Engagement (旧Pardot)を利用して把握、営業の効率化はもちろん、それを商品開発にも活かそうとしているのです。
効率化だけにとどまらない、デジタルトランスフォーメーションを成し遂げつつある同社。その歩みは特筆すべきものとして、1 世紀半以上に及ぶ同社の歴史に刻み込まれることでしょう。