PDCAサイクルとは?運用のコツと事例を使ってわかりやすく解説
PDCAとは、4つのステップで業務管理を高める手法
PDCAとは、業務の品質や効率を高めることを目的とした業務管理手法の1つです。業務上のプロセスを4つに分けて実行することにより、業務品質や効率の向上を図ります。
また、継続的な業務の効率化を図ることを目的としているため、「PDCAサイクル」とも呼ばれ、スピーディな効率化を進めていくために「PDCAを高速で回す」というように使われています。
PDCAの概念と歴史
PDCAの基礎となる考え方を1950年代に作ったとされているのが、アメリカ合衆国の統計学者であるウィリアム・エドワーズ・デミングです。ビジネスの現場で用いられるようになったのは、1990年代の終わり頃から。
現在は、企業における事業や施策の管理、国や自治体における政策管理、品質マネジメントシステムに関する国際規格のISO9001やISO14001などにも用いられています。
PDCAはもともと、製造業のための統計的品質管理手法で、生産プロセスにおける課題点の特定と改善をするための考え方でした。やがて製造業以外の分野でも用いられるようになり、事業や施策の管理手法として一般化しました。
PDCAの4つのステップ
PDCAの4つのステップはそれぞれ下記のような意味を持ちます。
- Plan/計画
- Do/実行
- Check/評価
- Action/改善
それぞれを、以下で詳しく解説します。
1. Plan/計画
2. Do/実行
3. Check/評価
4. Action/改善
PDCAのメリット
PDCAには主に次のメリットがあります。
- 目標達成への計画力を養える
- 業務に集中しやすくなる
- 業務の改善点が把握しやすくなる
- 経験から学ぶ力が身につく
目標達成への計画力を養える
PDCAを導入すると、目標達成に向けて具体的に計画・行動する力の育成が可能です。
PDCAを回すときは、Actionで前回の改善点をふまえながら、再度Planで現実的な目標の設定、また、それを実現するための方法を考えます。これらを繰り返すことで目標を達成するための最適な道筋を考える力が養われ、高いパフォーマンスを発揮できるようになります。
業務に集中しやすくなる
PDCAを利用することでやるべきことが明確になるため、業務により集中しやすくなります。
PDCAでは目標と目標達成のための行動をあらかじめ計画します。計画に沿って行動すればよいので、次に何をすべきか迷うことがありません。何をすればいよいか考え込まない分、すべきことにしっかり集中できます。
業務に集中することで業務効率も向上するでしょう。
業務の改善点が把握しやすくなる
PDCAでは定期的に目標・計画とのズレを見直すため、業務の課題や改善点を把握しやすくなります。
PDCAにはPlan、Doの次にCheckがあり、これまでの成果を客観的に評価して現状を分析します。現状を正しく判断する段階を踏むため、各自の課題や改善点としっかり向き合うことが可能です。
経験から学ぶ力が身につく
PDCAでは改善点を取り入れながら行動していくため、失敗に対しての対策や行動してうまく行ったことが学びや経験となり、突発的な事案でも即座に対応できる力が身につきます。
ActionではCheckで評価した内容にもとづいて改善をします。Checkで評価するのは成功した部分だけではありません。失敗も合わせてすべて客観的に評価します。前回の反省をふまえた行動を積み重ねていくことで、自分の経験から学ぶ力を育てられます。
時代遅れ?PDCAのデメリット
PDCAには次のようなデメリットもあるため、注意が必要です。
- 改善までのサイクルに時間がかかる
- 新しいアイデアが生まれにくい
- PDCAの実践に労力がかかる
- 会議が増える
改善までのサイクルに時間がかかる
PDCAを回すときは改善まで時間がかかる点に注意しましょう。
PDCAにおける改善は必ず評価を行ったうえで実施します。評価はPDCAの中でも非常に重要な段階であり、改善点を思いついたからといって評価のスキップはできません。
時間をかけてしっかり評価しながら改善していくフレームワークのため、業種や職場の状況によっては時間がかかりすぎてしまい、実用的ではないことがあります。
新しいアイデアが生まれにくい
PDCAは過去を評価して改善していく方法のため、新鮮なアイディアは生まれにくい傾向があります。
PDCAでは基本的に過去の活動を反映して計画や目標を立てます。前例により得られる改善点はあるものの、真新しいアイディアは生まれにくいでしょう。また、前例がほとんどない場合では効果的にPDCAを回せません。
新規事業のように新しいアイディアが多く必要な場面では、PDCAはあまり向いていないといえます。
PDCAの実践に労力がかかる
PDCAの実践自体が負担になることもあります。
計画から改善までの各プロセスをきちんと行う場合、それなりの時間と手間がかかります。本来の業務遂行の妨げに感じることもあるでしょう。
PDCAが負担になってくるとフレームワークが形骸化してしまい、結果が伴わないものとなってしまいます。PDCAを回すこと自体が目的にならないよう注意してください。
会議が増える
PDCAを回すには継続的な振り返りが必要なため、会議が多くなります。会議が多いと各メンバーの時間を消費してしまうので、会議が負担にならないよう注意が必要です。
また、会議の多さに慣れてしまうと、課題や改善点を見つけるための場ではなく、単なる現状の報告会となってしまうリスクがあります。なぜ集まるのか、なぜ話し合う必要があるのかが不明瞭にならないようにしましょう。
PDCAが失敗する原因と対策
4つのステップを再検証してみる
まずは、4つのステップに問題がないかを確認しましょう。問題点の例として以下のようなことが考えられます。
- 「Plan」に時間をかけすぎている
- 「Do」が「Plan」どおり行えていない
- 「Check」と「Action」に些細な軌道修正が多い
PDCAサイクルをスムーズに回すには、すばやく、正確な遂行が重要です。この点はPDCAサイクルを取り扱う習熟度にも左右されるため、業務改善と合わせて、PDCA管理の改善も継続的に行っていきましょう。
「Plan」で設定したハードルの高さは適正か?
「Do」をきちんとクリアできているか?
「Check」を十分に行えているか?
「Action」で迷いすぎていないか?
さらにPDCAの効果を高めるポイントは?
1)目的・目標を明確に設定しておく
2)状況を定期的にチェックし、レポートする
3)継続的に回し続ける
4)Checkに適したツールを活用する
Checkは、PDCAの目的である「改善」の基礎となる重要な段階です。それだけに正確なチェックが求められますが、実情としてはリソースが足りなかったり、スキルが足りなかったりといった問題もあるでしょう。
たとえば、営業部隊の業績改善が目的ならば、SFA(Sales Force Automation)のような業務支援ツールを利用することで、営業活動の一元管理や顧客情報の管理などCheckに必要な作業を効率よく行えます。PDCAの評価に欠かせないKPIの管理も得意分野で、チェック精度の向上とリソース節約を同時に実現できます。
5)タスクを管理する
PDCAはタスク管理を重視しましょう。Planで細かく計画を作成しても、Doの段階で計画通りに実行できなければ意味がありません。
Planにもとづいたタスクを作り、1日・1週間・1ヶ月単位でやるべきことをリストアップしましょう。ほかのメンバーにも見えるかたちでタスクを共有しておくと、タスクの実行し忘れを予防できます。
6)実現可能な計画に限定する
計画を立てる際は実現可能な計画であることを重視しましょう。
実現が難しい計画だとモチベーションが続きません。実現できない計画を立て続けるとPDCAを回す意味を見失ってしまい、かえって業務効率が低下してしまいます。
過去のデータだけに頼らず、個人の能力や意見も反映して現実的な計画を立てましょう。
7)結果をマニュアルに記載する
結果はマニュアルに記載し、次の計画に活かしましょう。
うまくいったこと、失敗したことなどを業務マニュアルに追加していくと、知見が増えて次の計画や実践の精度向上に役立ちます。細かく記録をとることで成功パターンが見えてくることもあるでしょう。
とくに、改善して効果があったことはきちんと記録に残し、社内で共有すると会社全体の生産性や業務品質の向上につながります。
8)失敗は細かく分析する
失敗は必ず細かく分析し、次の計画に活かしましょう。
失敗したことは原因が明らかになるまで分析することが大切です。細かく分析することで改善点が具体的になり、次回の目標設定や計画に役立てられます。
なぜ失敗したのか、どのような選択・判断ミスがあったかを分析し、より効果的にPDCAを回せるようにしましょう。
PDCAサイクルの成功事例
事例1:リアルタイムPDCAで生まれた、いくつものメリット
180以上の国に拠点を持ち、2,000を超えるブランドを展開するグローバル企業であるネスレ。その日本法人であるネスレ日本株式会社は、高い認知度を誇りつつも、新製品を発売する際には、常にブランド想起に注力してきました。 しかし、月次・週次データの分析に膨大な時間がかかったり、媒体統括部が作成した資料をマーケティング部が読み解けなかったりと、多くの無駄な時間が発生していたため、PDCAの高速化が必須でした。
そこで、マーケティングインテリジェンスツールである「Datorama」を導入。広告代理店とも画面を共有するとともに、これまでスプレッドシートやプレゼンテーションソフトで作成してきた書類を全廃。マーケティング施策の進捗や変更、予算の配分などを、リアルタイムで確認・設定できる体制をとりました。
これにより、それまで広告施策のレポート作成に必要だった、2日間のタイムラグがゼロになり、目標達成の確度も大幅に上昇。施策の検証・改善を毎日行えるため、月次のミーティングも不要になりました。 PDCAをほぼリアルタイムで行うことで、施策を厳密に組み立てる必要もなくなり、大まかなプランを打って日々調整していくというスタイルを可能にしています。
事例2:高速PDCAによって、頭打ちだった施策がさらに伸びる
さまざまな形の「働きたい」をサポートする、株式会社リクルートジョブズ(現:株式会社リクルート)。同社が手掛ける「リクナビ派遣」は、継続的な関係性を求めて会員登録制をとり、メールによるコミュニケーションで成果を追求してきました。しかし、その効果が頭打ちとなったことから、リピーター獲得のための新たな施策が必要になりました。
そこで同社は、「Marketing Cloud」を導入し、ユーザー分析を開始。ターゲット層のペルソナ設定やカスタマージャーニーの構築を通じて、確度が高いとみられる層を設定。仮説構築とテスト、検証・改善を繰り返す、高速PDCAでアプローチするようにしました。
加えて、メールテンプレート別の開封の有無や、メール内リンクのクリックといった行動履歴をユーザーごとにログとして蓄積し、ひとりひとりに異なる情報を使い分けることも行いました。その結果をフィードバックし、改善を繰り返すことで、CVRは130%の向上を実現したのです。
同社がそれまでに行っていたメール施策は、何度も改善を繰り返したものであっただけに、効果の向上が見込めない状態に陥っていました。しかし、必要なツールを活用し、PDCAを高速化すれば、データを基盤とした確度の高い施策を実施でき、さらなる成果を期待できるのです。
事例3:PDCAを迅速に回して案件創出数が2倍に
日本経済新聞社は組織体制の見直しと情報基盤の整備のため、MAツールのPardotを採用。すでに利用していた「Sales Cloud」と連携させ、より一貫性のある顧客アプローチを行う基盤を整えました。
Pardotは簡単にシナリオが作成できるため、短期間で数多く施策を試せるように。毎週1回は新しい施策を実施できるようになりました。施策のチューニングも容易なため、PDCAも迅速に回せるようになったそうです。
さらに手作業だったことの自動化も行ったことで、ハンドリングできるリード数も増大。結果、案件創出数が以前の2倍になりました。
事例4:PDCAにより常時動かせるシナリオの数を大幅に増加
株式会社NTTぷららでは、実質3人ほどのメンバーでターゲットの抽出やキャンペーンの企画、シナリオの立案などを手動で行っていました。しかし、人材が足りず、顧客ごとに最適化したアプローチの継続的な実践は不可能でした。
そこで「Marketing Cloud」を導入し、顧客の閲覧履歴をもとにした最適なキャンペーンの案内や、購入金額に応じた特別クーポンの送付など、月間数本のキャンペーンと常時10本前後のパーソナライズメールのシナリオを実施。Marketing Cloudのおかげで、目的や対象者が多様なメールを少人数でも負担なく継続できました。業務負荷は体感で半分以下になり、PDCAのスピードが格段に速くなったそうです。
また、Journey Builderを利用してシナリオ立案・実装の作業効率を上げ、常時動かせるシナリオの数を大幅に増やしました。新たな施策を1ヶ月に1本のペースで追加して検証し、効果の出なかったものはやめる、というPDCAを繰り返しました。その結果、常に走らせるシナリオの数を2か月に1本ずつ増やすことに成功しています。
事例5:改善のPDCAを回して不具合の発生件数を削減
河西工業株式会社は品質向上を見据えたデータ活用の有益性は理解していたものの、なかなか実現できていませんでした。運用に工数がかかり、業務プロセスを支える情報システムも必要なためです。
現状の改善のため、入念な検討を重ねた結果、多言語対応や各拠点におけるカスタマーサポートを考慮してSalesforceを導入しました。
Salesforceのシステムでは、品質改善依頼書が発行されると、ワークフローに沿って自動的に関係者にメールが届き、回答期限が近づくとアラートが出ます。そのため、今までの半分以下の時間で、より多くの情報をより高いレベルで管理できるようになりました。
また、LLR(Lessons Learned Report)もデータベース化し、予防活動に役立てられるように。前回直して学んだ情報に、開発エンジニアが簡単にアクセスして次の製品に生かす、という改善のPDCAが回せるようになりました。これにより、不具合の発生件数の大幅な削減に成功しています。
PDCAとOODAの違いや使い分けについて
OODAとは何か?
OODAは個人の行動を管理し、その時々で変化していくさまざまな要因に対応しながら、より良い成果を導き出すためのモデルです。アメリカ空軍で開発されたといわれ、組織を運営するために使われる概念となります。
PDCAは課題や問題を管理・改善していくものですが、OODAは個人の行動を管理するという点が異なります。ですが、4つのプロセスを循環し、その継続によって最善を目指す」という点は共通です。
【関連コンテンツ】
OODAの4つのプロセス
PDCAのように、OODAも4つのプロセスに分かれています。このプロセスを継続的に高速で回すことで、成果につなげていきます。
- Observe(観察)
- Orient(現状判断)
- Decide(決定)
- Act(行動)
1. Observe(観察)
まずは現状観察です。業界の状態や競合の動向、自社内の事情など、今後の行動決定に関わる内外の状態を観察し、情報を集めます。集める情報の確度や鮮度は、この後の判断や行動の結果に、大きく影響を及ぼします。
2. Orient(現状判断)
集めた情報から現状を把握し、データの分析を行って、どのように動くべきかを判断。「Observe」で収集した情報の量と質が、この判断の精度を左右します。
3. Decide(決定)
現状判断できたら、それに沿った具体的な行動計画を決定します。
4. Act(行動)
行動計画にもとづいて行動し、その結果を観察します。こうして再び「Observe」に戻り、OODAサイクルを繰り返します。
PDCAとOODA、どうやって使い分ける?
PDCAとOODAは、それぞれ特性が異なります。ですから、そのときの状況や場面によって、使い分けることが重要です。
PDCAは元々、品質改善のためのモデルです。課題や問題を中長期的にとらえ、改善を重ねながら成長を目指していきます。
一方のOODAは、迅速な判断や行動が求められるときに有用なモデルです。一触即発の戦闘機戦を行う空軍で開発されたものだけに、いかにすばやく相手を圧倒するか、という思想が強いモデルといえます。
迅速で正確な意思決定が求められる場面ではOODAを、中長期的な改善が必要な場合にはPDCAをという具合に、それぞれの特性を理解した上で使い分けるといいでしょう。
OODAのフレームワークや使い分けについては、こちらのeBookがおすすめです。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
PDCAを理解して正しく運用しよう
近年では、PDCAに対して否定的な意見もありますが、その中にはPDCAの扱い方を誤っているケースもあるようです。業務を継続的に改善し進化させていく手段としては、PDCAサイクルは堅実な方法です。また、扱い方次第で、十分に成果を発揮できる手法でもあります。
まずは、それぞれのステップを意識しながら、PDCAサイクルを回していきましょう。そして、それが業務改善にどれほど役立つものなのか、確かめてください。
以下のデモでは、Marketing Cloud Intelligenceを使ってPDCAの高速化する方法を紹介しています。データを1つのシステムに集約し、レポート作成、効果測定、最適化するフローをご覧いただけますので、ぜひご覧ください。