売上予測とは?2種類の計算方法と精度を高める3つの方法

 
最終更新日:2025.6.2

売上予測は、企業の将来を左右する経営判断の羅針盤です。しかし、多くの企業で「営業担当者の経験や勘に頼っている」「顧客情報や案件情報がバラバラに管理され、実態が見えない」「データが部門ごとに孤立し、有効活用できていない」といった課題により、精度の高い予測が立てられず、機会損失や非効率なリソース配分に繋がっているのではないでしょうか。

変化の激しい現代において、顧客のニーズを的確に捉え、パーソナライズされた体験を提供し続けるには、データに基づいた体系的なアプローチ、スマートな営業への転換が不可欠です。

本記事では、従来の売上予測の課題を明らかにし、その精度を飛躍的に高めるための具体的な方法を解説します。特に、Salesforceが提供するCRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援システム)、MA(マーケティングオートメーション)、そしてAI(人工知能)といった統合ソリューションが、いかにして信頼性の高いデータ基盤を構築し、営業プロセスの最適化、そしてデータドリブンな意思決定を実現するのか、その具体的な仕組みと価値をお伝えします。

よりスマートな売上予測と経営判断のヒントをお探しの方は、ぜひ最後までご覧ください。

「どうやって予測の精度を高めているのか?」をさらに詳しく知りたい方は、Salesforceの営業部門が解説する動画をご覧ください ⇒ こちらから視聴する

 
 
 
【10分でわかる】
営業管理者のための売上予測の立て方
 
本動画では、SalesforceのSales Strategy部門が、どのようにして「データ、AI」と「現場の感覚、経験」を融合させて、精度の高い売上予測を立てているか、その方法について、わかりやすく解説します。

売上予測とは、過去の売上実績や自社の状況、環境要因などから将来的な売上の予測を立てること

売上予測とは、過去の売上実績や自社の状況、環境要因などから将来的な売上の予測を立てることです。

将来的に見込める利益を見極めるための重要な指標の1つで、売上予測が正確であれば今後の事業計画やリソース・予算の配分もより適切に行えます。

売上予測は、過去のデータを基にして予測を立てることが大切です。勘や慣習などから決めるのではなく、実際に積み上げたデータから導き出しましょう。

売上予測と売上目標の違い

売上予測と売上目標は似ている言葉ですが、実際はまったく異なる意味を持ちます。

売上予測は過去のデータに基づいて将来の数値を予測する統計的手法であるのに対して、売上目標はあくまで目指すべき目標値です。

売上目標は、そこに期待や努力、必要性などの要素も盛り込まれるため、必ずしも統計的に算出されるわけではありません。

売上予測の算出に必要な情報

売上予測を算出する際には、どのようなデータが必要となるのでしょうか。扱う製品やサービスの特性によって多少の違いはありますが、おおよそ次の情報は必要になるでしょう。

  • リード状態からの成約率(CVR
  • 商談期間
  • 月ごと、四半期ごとなど、一定期間での売上実績
  • 商品別の売上実績
  • 現在の案件化数
  • 平均成長率

商材が1回売り切りの製品ではなく、サブスクリプションモデルのように継続的に提供し続けるサービスであれば、これ以外にも「契約期間」「更新率」「解約率」といった情報も必要でしょう。

情報が多いほど予測の精度は高まりますが、あまり重要でない情報まで入れ込んでしまうと混乱が起こります。自社の売上予測において重要な指標となるものは何かを、定めるところから始めるといいでしょう。

では実際に、どの指標をどのように選び、売上予測に活かせばよいのでしょうか? Salesforceの営業戦略チームが、予測の立て方と情報の見極め方を動画で詳しく解説しています ⇒ こちらから視聴する

なぜ従来の売上予測はうまくいかないのか?多くの企業が直面する3つの壁

売上予測の重要性は理解していても、その精度に課題を感じている企業は少なくありません。その背景には、以下のような共通の壁が存在します。

壁1:経験と勘頼りの属人的な予測

個々の営業担当者の経験や感覚に依存した売上予測は、客観性に欠け、担当者間のばらつきも大きくなりがちです。優秀な営業担当者の退職や異動によって、予測精度が大きく揺らぐリスクも抱えています。

壁2:分散・サイロ化した見えないデータ

顧客情報や案件の進捗が、スプレッドシート、個人のメモ、部署ごとに異なるシステムなど、バラバラに管理されていませんか?これでは、必要な情報をタイムリーに収集・分析できず、正確な現状把握すら困難です。部門間のデータ連携がなければ、顧客に対する一貫したインサイトも得られません。

壁3:変化への対応が遅れる硬直的なプロセス

市場環境や顧客ニーズは常に変化しています。しかし、旧態依然とした営業プロセスや、柔軟性に欠けるデータ管理体制では、これらの変化に迅速に対応し、予測モデルをアップデートしていくことができません。

これらの壁を乗り越え、信頼性の高い売込予測を実現するためには、データに基づいた体系的なアプローチへの転換が急務です。

売上予測の2種類の立て方

売上予測の立て方には、おもに「過去の実績を基に算出する方法」と、「営業パイプライン(見込み顧客から受注までのプロセス)から算出する方法」の2種類があります。

オーソドックスなのは過去のデータから算出する方法ですが、新しい事業に取り組むときや方法を大きく変える場合などには、営業パイプラインからの算出が必要になることもあります。

ここでは、これら2つの算出方法を詳しく解説します。

<売上予測の2種類の立て方>

  • 過去の実績を基に計算する方法
  • 営業パイプラインを基に計算する方法

過去の実績を基に計算する方法

過去の実績を基に算出する方法は、前年同月の売上と年間成長率を用います。

たとえば、今年6月に見込まれる売上を出したいなら、昨年6月の売上に年間成長率を乗じて算出します。年間成長率と売上予測の算出式は以下のとおりです。

■年間成長率の計算方法
(前年同月売上-2年前の同月売上)÷2年前の同月の売上

■売上予測の計算方法
前年同月×年間成長率

■計算例
今年6月の売上を予測するとして

昨年6月の売上:8,000,000円
2年前の同月売上:7,000,000円場合

年間成長率=(8,000,000円–7,000,000円)÷7,000,000円=0.142…(約14%)
売上予測=8,000,000円×1.14=9,120,000円

営業パイプラインを基に計算する方法

営業パイプラインとは、受注までの一連の営業プロセスをパイプに見立て、「初回訪問→ヒアリング→提案→見積もり→受注」というプロセスをフェーズで分けて表したものです。

営業パイプラインを基に計算する方法は、それぞれの通過率や所要時間の実績を用います。
受注数予測と売上予測の算出式は以下のとおりです。

■受注数を予測する計算式
初回訪問数×各種工程の通過率=受注見込み数

■売上予測の計算式
受注見込み数×商品価格=売上見込み額

■例
販売商品の価格・・・200,000円
初回訪問数・・・100件
初回訪問からヒアリングに進む割合・・・60%
ヒアリングから提案に進む割合・・・50%
提案から見積もりに進む割合・・・50%
見積もりから受注に進む割合・・・60%

受注数の予測:100件×0.6×0.5×0.5×0.6=9件

売上予測:9件×200,000円=1,800,000円

SFA/CRM活用のポイント

この営業パイプラインに基づく予測は、SFA/CRMを活用することで、その精度と効率を飛躍的に向上させることができます。

SalesforceのようなSFA/CRMを導入することで、以下のような対応が可能です。

リアルタイムなデータ収集と自動集計

各営業担当者が入力した案件情報(フェーズ、金額、確度など)がリアルタイムに集約され、パイプライン全体の状況や各フェーズの案件数・金額、コンバージョン率などが自動で算出・可視化されます。手作業での集計ミスや手間を大幅に削減できます。

営業プロセスの標準化と徹底

システム上で標準化された営業プロセスを定義し、それに沿った活動を促すことで、データの質が向上し、予測の前提となる数値の信頼性が高まります。

AIによる予測支援

SalesforceのAIは、過去の類似案件の傾向や担当者の活動状況などを分析し、各案件の受注確度をより客観的に予測したり、売上予測値を自動で算出したりするのに役立ちます。

売上予測の精度を劇的に向上させるツール活用術

売上予測の精度は、算出に用いる数字の正確性や用いるツールなどに左右されます。また、予測期間も重要なポイントで、目先だけでなく、数カ月先まで見通しておくことで、将来起こりうるイベントに基づいた具体的な売上予測が可能になります。

【基盤構築】信頼できる顧客・案件情報を一元管理する (CRM/SFA)

スプレッドシートや個人の記憶に頼った情報管理から脱却し、顧客情報、商談履歴、活動内容、関連ドキュメントなど、あらゆるデータをCRM/SFAに集約。部門間での情報共有を促進し、「信頼できる唯一の情報源」を構築します。

常に最新かつ正確なデータに基づいた予測が可能になり、抜け漏れや二重入力、情報のサイロ化を防ぎます。調査によれば、CRMでデータが一元化されることで、信頼できる情報やインサイトの共有が促進されるとされています。

【プロセス改革】「顧客視点」の営業プロセスを可視化・標準化する (SFA)

属人的でブラックボックス化しがちな営業活動を、「顧客の購買プロセス」に合わせて再定義。SFA上で営業フェーズごとの活動基準、目標、ネクストアクションを明確にし、進捗をリアルタイムで可視化します。

チーム全体で標準化されたプロセスに基づいて活動することで、案件の進捗状況、滞留日数、各フェーズの進捗率などを正確に把握。データに基づいたボトルネックの特定と改善、そして予測精度の高いパイプライン管理が実現します。

【効率化と高度化】AIと自動化で予測業務をスマートにする (MA/AI)

営業担当者が反復作業やデータ入力に追われ、本来注力すべき顧客対応や戦略立案の時間が奪われている状況を改善します。

◼︎MA (マーケティングオートメーション) の活用

  • 見込み客の行動(ウェブサイト閲覧、メール開封など)をトラッキングし、スコアリングすることで、質の高いリードを自動的に特定
  • スコアや行動履歴に基づいて、適切な営業担当者へリードを自動的に割り当て
  • 商談フェーズや顧客の反応に応じた情報提供(事例紹介、キャンペーン案内など)を自動化し、商談の停滞を防ぐ
  • 失注顧客へのフォローアップ(ホワイトペーパー送付、セミナー案内など)を自動化し、再商談の機会を創出

◼︎AI (人工知能) の活用

  • 過去の膨大なデータから学習し、各案件の受注確度や売上予測値を客観的にスコアリング
  • 優先的に対応すべき案件や、リスクのある案件を自動的にアラート
  • 営業担当者に対し、次の最適なアクションを提案

【戦略的意思決定】データ分析に基づき、迅速かつ的確な判断を下す

経験や勘だけに頼った意思決定ではなく、客観的なデータに基づいた戦略的な判断ができない状況を改善します。

SFAのダッシュボードやレポート機能を活用し、売上実績、パイプライン状況、個々の営業担当者の活動量や成果などをリアルタイムで分析。これにより、最も重要な顧客の特定、有望なリードへのリソース集中、非効率な活動の特定と改善、ワークフローの刷新などが可能になります。

データに基づいたタスクリスト作成と勤務時間体系化も、影響力が高く効率的なアクションを特定するのに役立ちます。

 
 
 
営業向けAI活用
AIを活用して成約件数を増やす7つの方法
 
いまやAIはチームの一員となり、チームの収益増加に大きく寄与しています。本資料では、CRMに組み込まれた「予測・生成・自律型AI」がもたらす営業生産性の向上と、目標達成の実現方法を7つのユースケースに基づいてご紹介しています。

正確な売上予測を導き出すことが円滑な経営を後押しする

セールス部門は利益を生み出す最前線であり、そこで使われる売上予測は経営に関わる重要な数値です。

正確な売上予測は、円滑な経営を後押しする基礎となり、ひいては中長期的な計画立案や会社の事業の方向性を決定する際にも役立ちます。実際にシステムによって担保された正確な売上予測が、企業のIPOに大きく貢献した事例もあります。

そのためにも、メンバー1人1人がコスト意識を持つこと、数カ月先までの売上予測を立てること、ツールを用いること、この3点を意識して、計画面から営業活動を活発化していきましょう。

 
 
 
【10分でわかる】
営業管理者のための売上予測の立て方
 
本動画では、SalesforceのSales Strategy部門が、どのようにして「データ、AI」と「現場の感覚、経験」を融合させて、精度の高い売上予測を立てているか、その方法について、わかりやすく解説します。
 
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『マーケティング最新事情』レポート(第8版)
 

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