MRRの意味とは?評価指標や計算式、売上改善施策を解説
MRRとは、毎月継続的に得られる収益のこと
MRRとは、日本語で「月次経常収益」と呼ばれるMRR(Monthly Recurring Revenue)は、毎月継続的に得られる収益を指します。SaaSなどサブスクリプションモデルのビジネスが台頭するにつれ、注目されるようになった指標です。
MRRの値は、ビジネスの健全度合いを測る物差しとして利用できます。SaaSビジネスに取り組むなら必ず覚えておきたいところです。
MRRの4つの種類
MRRは、その属性により以下の4種類に分類されます。
- New MRR(新規MRR)
- Expansion MRR(アップグレードMRR)
- Downgrade MRR(ダウングレードMRR)
- Churn MRR(解約MRR)
それぞれのMRRは、月ごとに集計されます。
1)New MRR(新規MRR)は、新規顧客から新たに発生した月次経常収益
New MRR(新規MRR)とは、新規顧客から新たに発生した、初回の月次経常収益です。
たとえば、サブスクリプションサービスを契約した顧客の初月利用料や、システムの利用契約を結んだ顧客からの初月利用料などが該当します。
2)Expansion MRR(アップグレードMRR)は、既存顧客がサービスをアップグレードして新たに発生した月次経常収益
Expansion MRR(アップグレードMRR)とは、既存顧客がサービスをアップグレードしたことにより、新たに発生した月次経常収益です。アップセル・クロスセルが該当します。
アップセル:現在使用している製品よりも高価格なものへの乗り換えを促す
クロスセル:メイン製品とともに関連商品を提案、販売する
たとえば、サブスクリプションサービスのプランが2,000円、1,000円、500円の3種類ある場合、500円の利用者が2,000円のプランに変更すれば、1,500円分がExpansion MRRに該当します。
3)Expansion MRR(アップグレードMRR)は、既存顧客がサービスをアップグレードして新たに発生した月次経常収益
Downgrade MRR(減少MRR)は、既存顧客がサービスをダウングレードしたことにより、失われた月次経常収益です。
先ほどの例と同じくサブスクリプションサービスのプランが2,000円、1,000円、500円の3種類あるとして、2,000円の利用者が500円のプランに変更すると、1,500円分のDowngrade MRRが発生するという意味です。
4)Churn MRR(解約MRR)は、既存顧客がサービスを解約して失われた月次経常収益
Churn MRR(解約MRR)とは、既存顧客がサービスを解約したことにより、失われた月次経常収益です。
たとえば、2,000円のサブスクリプションサービスを利用している顧客のうち3人が解約した場合、6,000円分がChurn MRRに該当します。
MRRの計算方法
当月におけるMRRは、以下の計算式で算出できます。
MRRの基本計算式
「月額利用料」×「顧客数」
例)月額 500円、顧客数 150人の場合
500円×150人=75,000円
当月の顧客数が確定していなければ、前月のMRRをベースにした以下の計算式でも算出できます。
前月のMRRやNewMRRなどからMRRを算出する計算式
「前月MRR」 + (「New MRR」+「Downgrade MRR」 + 「Expansion MRR 」+ 「Churn MRR」)
例)前月MRR 75,000円、New MRR 8,000円、Downgrade MRR 2,000円、Expansion MRR 4,000円、Churn MRR 1,000円の場合
75,000円+(8,000円+(-2,000円)+4,000円+(-1,000円))=84,000円
契約期間が異なる場合は、契約金額を1カ月分に割り戻して計算
複数の月にまたがった契約プランがある場合は、契約金額を1カ月分に割り戻して計算します。
複数月契約のMRRを算出する計算式
「利用料」÷「契約月数」×「顧客数」
例)年間利用料 4800円、顧客数 150人の場合
4,800円÷12ヶ月×150人=60,000円
MRRを計算する際の3つの注意点
MRRを計算するときには、以下のようなイレギュラーに注意しましょう。
- 無料期間や値引き額を加味する
- 初期費用、オプション費用などは分ける
- 支払い遅延の未払金を含めないように気を付ける
これらの数値は、個別に対応が必要です。イレギュラーが多いと処理に時間がかかるので、効率的な処理方法を考えておきましょう。
MRRが重要視される2つの理由
1)SaaS Quick Ratioの分析に使用される
SaaS Quick Ratioとは、ポジティブな指標(New MRR、Expansion MRR)と、ネガディブな指標(Downgrade MRR、Churn MRR)を比較して、SaaSビジネスの成長度を測る指標です。
- SaaS Quick Ratioの計算式
SaaS Quick Ratio=(New MRR+Expansion MRR)÷(Churn MRR+Downgrade MRR)
SaaS Quick Ratioが高いほど、事業の状況は健全といえます。一方でSaaS Quick Ratioが低いと事業に問題があると考えられます。
2)投資家の判断材料になる
MRRの値は、投資家が企業の状況を測るための判断材料としても用いられます。特にNew MRRやExpansion MRRの値は、事業の成長度合いを知る重要な指標となります。
投資家は、事業の将来性を鑑みて投資を検討します。MRRの値が健全で将来性があると判断されれば、投資家たちもポジティブな印象を持つでしょう。
ARR、NRRとの違い
ARRとは、毎年繰り返し得られる収入のこと
NRRとは、既存顧客から得られたMRRがどの程度維持されているかを測る指標
【関連コンテンツ】
MRRの4種類の改善方法
1)New MRRの改善方法は、マーケティング施策を行うこと
New MRRは新規顧客をより多く獲得することで改善できます。そのためには、リード数増加や、コンバージョン率向上といったマーケティング施策が重要です。
たとえば、リード数を増やすには、ターゲティングの再検討や、コンバージョンへ導くためのコミュニケーション設計の見直しなどが考えられます。
【関連コンテンツ】
2)Expansion MRRの改善方法は、顧客ロイヤリティの向上を目指すこと
Expansion MRRは、既存顧客がサービスをアップグレードすると増加します。したがって、既存顧客に対してアップセルやクロスセルを増やす働きかけが重要です。
その具体的な方法としては、顧客の需要の掘り下げや、興味のありそうな商品・サービスのおすすめなどが考えられます。ここで前提としたいのは、顧客ロイヤリティの向上です。長期的なリピートを通じて、顧客を自社のファンに育成することを目的としましょう。
3)Downgrade MRRの改善方法は、サービス内容にある問題点を改善すること
4)Churn MRRの改善方法は、サービスの根本的な問題に注目すること
Churn MRRの改善は、原因特定と課題解決によって行われます。Churn MRRは、「サービス解約」という特にネガディブな現象により生じるものです。根本的な問題点が無いか、注意して確認しましょう。
たとえば、サービスとニーズのマッチング具合や、サービスの主要部分のクオリティ、料金などはチェックしておきたい部分です。また、サービスに問題が無くても、サポートに問題がある可能性も考えられます。
【関連コンテンツ】