カーボンニュートラルとは?世界や日本の具体的な取り組みを解説

 
最終更新日:2024.3.13

世界全体で地球温暖化の影響が顕著になっています。環境のみならず社会や経済などの分野においても、温暖化による変化が表れ始めており、温室効果ガス削減に取り組む企業が増えてきています。そのような企業が知っておきたい考え方のひとつがカーボンニュートラルです。

この記事では、カーボンニュートラルの考え方や達成を目指す背景のほか、日本の動向、カーボンオフセットとの違い、必要とされている取り組みなどについて紹介します。

カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素、フロンガスを含む温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体としてゼロにすることです。2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。

現在の日本は、社会全体で石炭や石油、天然ガスといった化石燃料によって年間で約10億トンの二酸化炭素を排出しています。温室効果ガスをゼロにするには、この膨大な化石燃料に代わるエネルギーを見つけて、代替していかなければなりません。しかし、現在の技術で完全に温室効果ガスの排出をゼロにすることは不可能です。

そこで、排出量は最低限に抑え、どうしても排出せざるをえない分については、同量を森林に吸収してもらったり、人為的な工夫で除去したりすることでニュートラル(差し引きゼロの状態)を目指そうという考え方がカーボンニュートラルです。

 
 

新時代のビジネス戦略「サステナブル経営」

 

SDGsの考え方を取り入れた経営方針として注目されているのが、「サステナブル経営」です。サステナブル経営とは、環境や社会、経済といった観点全てにおいてのサステナビリティ(持続可能性)を経営の根幹に据え、実現を目指すという経営方針のことです。

本資料では、SDGsをどのようにビジネスへ取り入れ、サステナブル経営を実現していくかを解説します。

2050年までのカーボンニュートラル達成を目指す背景は、パリ協定が採択されたから

日本では2050年までのカーボンニュートラル達成を目指しており、世界でも日本同様に2022年10月現在、150以上の国・地域が2050年までにカーボンニュートラル実現を目指しています。この背景には世界的な温暖化があり、2015年には、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることを目標としたパリ協定が採択されました。

パリ協定は京都議定書の流れを汲んだ国際的な枠組みで、気候変動枠組条約に加盟する196ヵ国(2015年12月時点)が、21世紀後半のカーボンニュートラル実現に向け、削減目標・行動をもって参加することをルール化している点が特徴です。これにより、一部の先進国だけでなく、世界各国でカーボンニュートラルの取り組みが進むことが期待されています。

2050年等の年限付きのカーボンニュートラルの実現を表明している国・地域は合計で150以上にものぼっており、これらの国・地域におけるGDPは世界全体のGDPの約94%を占めています。各国が目標を着実に達成し、さらなる削減を目指すことによって、カーボンニュートラルの目標達成が近づきます。

【引用:経済産業省 資源エネルギー庁】

カーボンニュートラルに向けた日本での3つの取り組み

日本では、2050年のカーボンニュートラルに向けた中間目標として、2030年に2013年度比46%削減、さらに50%削減に向けて挑戦する「2030年目標」を定めています。また、2030年目標を実現するために、法律を含め複数の施策を立案・実践しています。日本での取り組みをみていきましょう。

<カーボンニュートラルに向けた日本での取り組み>

  • 改正地球温暖化対策推進法
  • 地域脱炭素ロードマップ
  • グリーン成長戦略

改正地球温暖化対策推進法

日本での代表的な取り組みのひとつに、改正地球温暖化対策推進法があります。地球温暖化対策推進法は1998年に制定され、最近では2022年4月に改正され、2050年までのカーボンニュートラルの実現が明記されました。当改正は、政策の継続性や予見性を高め、脱炭素に向けた取り組み・投資やイノベーションを加速させるとともに、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取り組みや企業の脱炭素経営の促進を図ることが目的です。2022年の改正のポイントは以下です。

<改正地球温暖化対策推進法のポイント>

  • パリ協定、および2050年カーボンニュートラル宣言を踏まえた基本理念を新設
  • 脱炭素化を目指す市区町村から、地域の課題の解決につながる再エネ活用事業に行政手続きの特例を導入
  • 企業からの温室効果ガス排出量の報告をデジタル化

地域脱炭素ロードマップ

地域脱炭素ロードマップも、カーボンニュートラルに向けた取り組みのひとつです。地域の成長戦略につながる脱炭素の取り組みを、国と地方の協働で全国へ拡大するために策定されました。2022年の地球温暖化対策推進法改正を受け、地方創生につながる脱炭素の取り組みを促進するために策定されました。具体策は以下の2つです。

<地域脱炭素ロードマップの具体策>

  • 2030年までに少なくとも100ヵ所の脱炭素先行地域を創出する
  • 屋根置き太陽光発電やゼロカーボン・ドライブなどの対策を全国で実施し、地域の脱炭素モデルを全国に広げる
 
 

脱炭素DXはじめの一歩
中堅・中小製造業 脱炭素経営のススメ

 
本資料では、脱炭素化に向けた社会的な動向の解説から、脱炭素経営に欠かせないデジタル化によるビジネスの可視化まで順を追って解説します。脱炭素化への基本的な基盤作りに役立つ知識や情報をわかりやすく紹介します。さっそく、脱炭素経営へのはじめの一歩を踏み出してください。

グリーン成長戦略

グリーン成長戦略も2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた取り組みのひとつです。グリーン成長戦略はエネルギー関連産業や輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業の3領域14産業の実行計画で、対象分野には税制、金融、規制改革・標準化、国際連携などの政策を投入してイノベーションを助けます。具体的にはカーボンニュートラルに向けた投資促進税制や、グリーン投資促進ファンドの創設などが挙げられます。

カーボンニュートラルとカーボンオフセットの違い

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする考え方です。一方、カーボンオフセットは、温室効果ガスの排出の削減努力の結果、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動や温室効果ガスの吸収に貢献する取り組みに投資するなどして埋め合わせするという考え方です。

カーボンオフセットの取り組みを大きく分けると、再生可能エネルギーの使用や省エネ設備の導入によって温室効果ガスそのものを削減する「排出削減」と、植林や森林保護で吸収量を増やす「森林吸収」の2つです。削減・吸収された温室効果ガスは国が認証するクレジットとして売買できます。

カーボンニュートラル実現に必要な企業や個人の5つの取り組み

ここからは、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、企業や個人に求められる取り組みを紹介します。ひとつずつみていきましょう。

<カーボンニュートラル実現に必要な企業や個人の取り組み>

  • 二酸化炭素の排出量の削減・吸収量の増加
  • 省エネ設備導入、エネルギー効率化
  • 再生可能エネルギーの導入
  • カーボンプライシング
  • ネガティブエミッション

二酸化炭素の排出量の削減・吸収量の増加

国内の温室効果ガスの85%は二酸化炭素が占めています。そのため、まずはエネルギーを使用することによって発生する二酸化炭素を削減するか、あるいは吸収量を増加させることから取り組む必要があるでしょう。具体的には、以下のような取り組みが効果的です。

<二酸化炭素削減のための取り組み>

  • エネルギー供給源を再生可能エネルギーにシフトする
  • 社用車をガソリン車からEV車に変更する
  • オフィスや倉庫にLEDを導入する
  • 輸送を効率化して燃料使用を削減する
  • 冷房を1℃高く、暖房を1℃低く設定する
  • 森林を守る「美しい森林づくり推進国民運動」「緑の募金運動」などに協力する

省エネ設備導入、エネルギー効率化

エネルギー使用量を抑える省エネ設備の導入も、二酸化炭素削減につながります。カーボンニュートラルに向けた投資促進税制や補助金の対象になる可能性もあります。同時に、エネルギー使用量の現状を把握して使い方を効率化することも重要です。すぐに実践できる方法を確認していきましょう。

<エネルギー使用量削減のための取り組み>

  • 小まめに電気を消す
  • エアコンのフィルターをきれいに保つ
  • 古い家電製品を省エネモデルに変える
  • 過度なブレーキや加速を避けた効率的な運転で、燃費を向上させる
  • 公共交通機関の利用頻度を増やす

再生可能エネルギーの導入

石油や石炭、天然ガスから電力を作る火力発電は、二酸化炭素を非常に多く排出します。そのため、発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーの割合を増やすことは、カーボンニュートラルの実現に欠かせない取り組みです。再生可能エネルギーには、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などがあります。

  • 太陽光発電

太陽の光エネルギーを集めて、電気に変換する発電方法です。日本を代表する再生可能エネルギーで、中国やドイツと並んで世界をリードしています。

  • 風力発電

風車をまわし、その回転運動を電気に変換する発電方法です。風力発電に適した立地が限られることなどから導入は限定的ですが、洋上風力の拡大によって主力化を目指しています。

  • バイオマス発電

木くずや燃えるゴミなどを燃やす際の熱で電力を作る発電方式です。これまでは、発電コストの高さ、発電所の場所の確保などが課題となってなかなか導入が進みませんでした。現在は補助金の導入などにより、エネルギーの地産地消を実現するバイオマス発電所の建設が進んでいます。

カーボンプライシング

炭素に価格をつけたり、税を課したりすることによって行動変容を促す取り組みも有効です。二酸化炭素の排出量に比例して課税する炭素税、企業の排出量の上限を上回る企業と下回る企業で排出量を売買する排出量取引などが代表的です。

ネガティブエミッション

ネガティブエミッションは、大気中の二酸化炭素を回収・吸収する技術で、カーボンニュートラルの実現に効果的な手法とされています。二酸化炭素を回収して地中に貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)、回収した二酸化炭素を資源として再利用するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)、大気中から直接回収するDAC(Direct Air Capture)などがあります。

企業に求められる5つの取り組み

カーボンニュートラルに向け、企業に期待される取り組みについてそれぞれ確認していきましょう。

<企業に求められる取り組み>

  • 温室効果ガス排出量の可視化
  • 再生可能エネルギーへの切り替え
  • 生産性向上のためのシステムの導入
  • 低炭素製品・脱炭素製品の開発
  • バリューチェーンエンゲージメントの実施

温室効果ガス排出量の可視化

企業の経済活動と温室効果ガスの排出は切っても切り離せない関係です。効率的に排出量を削減するためにまずは、自社の排出量を把握しましょう。IoTセンサーや排出量を管理するシステムなどを導入すると、自社の状況を可視化することができます。

再生可能エネルギーへの切り替え

温室効果ガスを排出している活動のうち、再生可能エネルギーに切り替え可能なものは切り替えましょう。再生可能エネルギーの導入により、温室効果ガスの排出を抑制することができます。

生産性向上のためのシステムの導入

多くの温室効果ガスを排出する工場などでは、需要を予測したり、稼働・停止を自動化したりするシステムを導入することで、生産性を向上させ、エネルギー使用量が減少し温室効果ガスの排出量を抑えることができます。最新の生産管理システムの導入などで生産性の向上に取り組みましょう。

低炭素製品・脱炭素製品の開発

自社が取り扱う製品・サービスを低炭素、または脱炭素にすることは、製造段階だけではなく、原材料調達や輸送、使用段階なども含むバリューチェーン全体を通じた温室効果ガス排出削減に貢献します。LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施し、製品・サービスのライフサイクルを考慮した製品・サービスを開発していきましょう。

バリューチェーンエンゲージメントの実施

社会全体の温室効果ガスを削減するためには、自社の活動のみならず、サプライヤーや顧客が排出する温室効果ガスを削減することも必要です。自社のみで温室効果ガス排出を削減することには限界があります。サプライヤーとの協働や顧客への商品説明などを実施し、温室効果ガス削減の取り組みを加速していきましょう。

国が目指すカーボンニュートラルの目標達成には、企業の取り組みが不可欠

2050年までにカーボンニュートラルを実現し、温室効果ガスの排出量をゼロにするのが日本全体での目標です。規模の大小を問わず、企業にも温室効果ガス削減への取り組みが求められています。中小企業の温室効果ガス排出量は日本全体の排出量の1~2割弱を占めており、中小企業の積極的な取り組みも欠かせません。

Salesforceでは企業の温室効果ガスの管理や削減への取り組みに貢献するNet Zero Cloudを提供しています。Net Zero Cloudはエネルギー消費や二酸化炭素排出量などの可視化や、削減ポイントの特定などが可能で、排出量の削減を効果的に進めることができます。また、自社だけでなく、サプライヤーと繋がり協力して削減に向けた対策を進めていくための機能も備えており、サプライチェーン全体で温室効果ガスの削減を効果的に推進したい企業はSalesforceのNet Zero Cloudの詳細についてご確認ください。

 
 

新時代のビジネス戦略「サステナブル経営」

 

SDGsの考え方を取り入れた経営方針として注目されているのが、「サステナブル経営」です。サステナブル経営とは、環境や社会、経済といった観点全てにおいてのサステナビリティ(持続可能性)を経営の根幹に据え、実現を目指すという経営方針のことです。

本資料では、SDGsをどのようにビジネスへ取り入れ、サステナブル経営を実現していくかを解説します。

 
関連コンテンツ

ガイド

脱炭素DXはじめの一歩 中堅・中小製造業 脱炭素経営のススメ

製品

Net Zero Cloudのデモや無料トライアルはこちら
 
 

最新情報と斬新なアイデアを
メールでお届けします