SXとは?DXとの違いや重視される背景などについて解説
日本企業の稼ぐ力を高め、長期的・持続的に企業価値を向上するために役立つ考え方として、SXが注目され始めています。しかし、まだ実際に取り組みを実施できている企業は少ないのではないでしょうか。
ここでは、SXとDXの違いや、SXが重視される背景、SXを進めるために必要なダイナミック・ケイパビリティ、SXを進める上でのポイントについて解説します。
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SXとは企業と社会のサステナビリティを両立させること
SXは、サステナビリティ・トランスフォーメーションの略称です。企業が、社会のサステナビリティ(持続可能な社会に対する要請への対応)と企業のサステナビリティ(企業が長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の維持・強化)の両立を図ること、及びそのために必要な経営・事業変革を指します。日本では、2020年、経済産業省が公表した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間とりまとめ」においてSXが提言され、更に、2022年に公表した「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」においてSXの要諦が取りまとめられました。
社会のサステナビリティは、現在の社会が直面する課題を解決し、持続可能な社会を作っていくことを指します。具体的には、国連が2015年に採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で提示されたSDGsへの取り組みなどが該当します。
社会のサステナビリティは、企業にとっても多大な影響を及ぼしています。気候変動問題等の社会の課題に対応しない企業は、ステークホルダーから評価を得ることが出来ず、事業の継続にも影響が生じるおそれがあります。企業のサステナビリティを向上させていくためには、社会のサステナビリティをリスクとして対応するのではなく、企業の長期的かつ持続的な価値創造に向けた経営戦略の根幹をなす要素として捉え、経営に織り込んでいくことが重要であるといえます。
SXとDXの違い
SXとDX(デジタル・トランスフォーメーション)では目的が違います。DXは経済産業省の定義によれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。
つまりDXは、現時点での事業の効率化や他社に対する競争優位性の確立など、比較的短期的な成果に結びつけられる取り組みです。一方、SXは、長期的な時間軸での企業価値向上を目的とする取り組みである点に違いがあります。また、DXはITをはじめとするデジタル技術の活用がカギになるのに対し、SXはサステナブル(持続可能性)を重視するといった点にも違いもあります。
SXが重視される背景
世界情勢の変化
投資家や社会が企業を評価する基準の変化
SXの重要性が増している背景として、投資家や社会が企業を評価する基準の変化も挙げられます。かつて投資家の企業に対するおもな評価基準は、「稼いでいるか」といった点にありました。また、消費者が企業を評価する基準は、「よい製品・サービスを作っているか」であり、企業は主にこれらをクリアしていれば、高い評価を受けることができました。
しかし現在では、財務情報に加えて環境・社会・ガバナンスの3点も考慮した上で投資先を選ぶ、ESG投資が拡大しています。さらに、労働市場においても、ESGや事業の持続可能性といった要素が考慮されるようになってきています。この傾向は特に1980~90年代半ば生まれのミレニアル世代やそれに続く世代に顕著です。これらの世代は、消費のみならず、就職活動などにおいても、社会的な貢献度合いの高い企業を選ぶ傾向があります。人々が企業を選ぶ基準が変わってきているのです。
SXに必要なダイナミック・ケイパビリティとは?
ここでは、SXを進めるために欠かせないダイナミック・ケイパビリティついて説明します。
ダイナミック・ケイパビリティとは、日本語では「企業変革力」と訳され、環境や状況が激しく変化する中で、企業がその変化に対応して自己を変革する能力のことです。
経済産業省の「2020年版ものづくり白書」(2021年)によると、ダイナミック・ケイパビリティは、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクールのデイヴィッド・J・ティース教授によって提唱された、戦略経営論の学術用語です。環境や状況が大きく変化する中で、企業がどうすれば持続的に競争力を維持できるかという問題意識を背景に、考案された戦略経営論です。ダイナミック・ケイパビリティは、企業経営を取りまく環境の不確実性が高まっている現代を生き抜くための重要な経営戦略として、世界から注目されています。
ダイナミック・ケイパビリティを構成する要素
センシング(感知)
ダイナミック・ケイパビリティを構成する要素のひとつがセンシングです。センシングは、顧客ニーズや市場の情勢、同業他社の状況、社会情勢などの外部状況をいち早く感じ取る能力を指します。企業を取り巻く環境の変化をすばやくとらえることなくして、変化に対応していくことはできません。
センシングの能力を磨くには、日頃から情報収集に取り組み、各部署が保有する情報を全社で共有できる体制を構築する必要があります。また、情報収集・分析に基づいて、自社が取り組むべき課題を明確化し、経営戦略を策定することが重要です。
サイジング(補捉)
サイジングもダイナミック・ケイパビリティを構成する要素のひとつです。サイジングは、企業が競争力を維持・獲得するために、どのタイミングで、どう動けばよいかをとらえ、既存の資産や知識、技術を再構成して、競争力を獲得する能力のことです。
既存の経営資源を再分配・再利用するだけではうまく対応できない場合は、事業戦略そのものを見直さなくてはいけないこともあります。また、自社だけでは経営資源が不足している場合は、サプライヤーや協力企業、取引先などを含めて、サプライチェーンや組織の在り方の見直しが必要な場合もあります。
トランスフォーミング(変革)
トランスフォーミングもダイナミック・ケイパビリティを構成する要素です。トランスフォーミングとは、企業が競争優位性を保つために、社内外にある資産や知識、技術などの資源を再構築して、持続的に自己を変革する能力を指します。
企業を取り巻く状況が変化しているのに、社内のルールや組織、資源の活用法などが従来のままでは、変化に対応していくことはできません。自社の強みを最大限に活かすには、外部の変化に合わせてルールや組織を変えることが重要です。変化には、労力やコストを伴いますが、変化しないことによって損失が生じる可能性もあります。自社の持続的な競争優位性を確立するためには、従来の考え方に囚われず、資源の再構築・再配置、再利用を通じて変革していくことが求められます。
企業がSXを進めるためのポイント
長期的な持続可能性向上への取り組み
SXを進めるためのポイントは、中長期的な持続可能性向上のための取り組みを行うことです。SXを実現するには、企業の「稼ぐ力」と「中長期的な持続可能性(サステナビリティ)」の両方を高めなくてはいけません。特に「中長期的な持続可能性」を向上させるためには、新しい取り組みが必要となります。
「稼ぐ力」については、自社の強みを活かし、価値ある製品やサービスを提供し、自社の競争優位性を確保することによって達成されます。また、「中長期的な持続可能性」を向上させるには、時代の変化を的確に把握し、どうすれば自社の強みを最大限に活かせるのかを常に考えて、ビジネスモデルや資源の配分を改良したり、技術面でのイノベーションを続けたりしていくことが必要です。
レジリエンスの強化
レジリエンス(強靭性、回復力)の強化も、SXを進めるためのポイントです。企業が困難を乗り越えられるようレジリエンスを強化することは、不測の事態が発生したときに迅速な対応が可能になるだけでなく、平常時の製品やサービス提供の基盤を作ることにもつながるでしょう。
レジリエンスの強化に向けては、ガバナンスやファイナンス、組織・人事、企業ブランド、技術など、各分野別の能力を高めることが重要です。これにより、さまざまな事態に対応できる組織や、他社と差別化されたブランド力や技術力が実現されます。
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