事業の急成長を支えるCRM・マーケティング基盤、 コロナ禍に伴うコミュニケーション課題を解決
スケーラビリティとカスタマイズ性に優れたCRM基盤、マルチチャネルのきめ細やかなマーケティング施策を可能にするプラットフォーム。さらにはデジタル上で業務を完結できる「デジタルオフィス」をSalesforceで実現。
1. 事業成長のスピードにシステムが追随できない
日本最大級のアルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」や総合求人情報サイト「はたらこねっと」などの運営で広く知られるディップ株式会社(以下、ディップ)。同社はこれらのサイトをはじめとした各種求人媒体の事業とともに、法人顧客向けに業務効率化・自動化を支援するDX事業も手掛けており、多くのユーザーや企業に利用されています。
同社は特に有期雇用労働者の就業を支援し、人手不足に悩む企業側とのマッチング率を高めることで社会課題の解決に貢献することを目指しており、そのためにデジタル技術の積極的な活用を進めています。早くからWebやメールを中心としたデジタル媒体に特化することで競合他社との差別化を図ってきたほか、社内の業務にも積極的にデジタル技術を導入しており、特にCRMへの取り組みには早くから着手していたといいます。
「営業部門ではかなり前に、Salesforceのプラットフォーム上にCRMシステムを構築して利用していました。その後に弊社の人材紹介サービス『ナースではたらこ』でCRMシステムを導入する際に、あらためてSalesforceを採用することにしました」
こう語るのは、ディップ 執行役員 商品開発本部 本部長 進藤圭氏です。ナースではたらこのサイトは当初、Salesforceとは別のSaaSアプリケーションをベースに構築していましたが、運用を続けるうちに幾つかの点で課題が持ち上がってきました。
「当時弊社のビジネスは急成長していましたが、導入したSaaSアプリケーションが規模の拡大に対応しきれなくなってしまったのです。またカスタマイズやデータ連携の自由度も低かったため、ビジネス側の要請にシステムが迅速に応えられませんでした」(進藤氏)
2. スクラッチ開発と比較し1/3〜1/4のコストで構築
こうした課題を解決すべく、同社はCRMの導入によるシステムの刷新を検討することにしました。早速さまざまな製品・サービスを比較検討した結果、最終的に同社が選択したのは、以前より営業部門で利用実績があったSalesforceでした。その選定理由について、進藤氏は次のように説明します。
「100人の同時利用という大規模利用にも十分対応でき、また自社の業務フローに合わせてシステムを柔軟に組み立てられる開発の自由度を備えている点が弊社の要件にまさに合致していました。外部のさまざまなツールとAPI連携できるコネクタを備えており、データ連携を容易にできる点も高く評価しました」
さらにはSalesforce製品の開発や導入、運用を支援する認定パートナー企業も多数存在するため、開発リソースに困ることがない点も選定理由の1つだったといいます。同社 商品開発本部の吉川由紀氏によれば、実際の開発・導入作業もパートナー企業およびSalesforce社の万全の支援を得ることで極めてスムーズに運んだといいます。
「同規模のシステムを一からスクラッチ開発した場合と比べれば、コストは3分の1から4分の1に抑えられたと思います。実際の運用を始めてからも、業務フローの変更に合わせてシステムを改修する作業が発生しましたが、Salesforceは柔軟に対応することができました」
こうして同社はビジネス環境の変化に柔軟に対応できるCRM基盤を実現するとともに、その後の急速な事業成長を支えたのです。
3. メルマガのより効果的な配信を実現
さらに同社では「バイトル」と「はたらこねっと」を運営する部門で、これまでも求人の応募者に対してメルマガ配信ツールを使用してメルマガを配信してきましたが、ビジネスが成長するにつれその機能や使い勝手に不満が生じてきました。
「従来はすべての応募者に対して同じ内容のメルマガを一斉配信することしかできませんでした。より効果を高めるために応募者の属性や応募履歴などに応じてセグメントやシナリオ、コンテンツを分けてきめ細かな施策を打ちたいと考えていました。しかし既存製品でこれを実現しようとすると、膨大なコストと工数がかかりました」(進藤氏)
そこで同社は、既存製品に代わる新たなメルマガ配信の仕組みを導入することにしました。さまざまな製品をピックアップし、それぞれの機能を比較検討したところ、最終選定に残ったのはSalesforceの「Marketing Cloud」でした。同製品を選んだ理由について、同社 商品開発本部 メディアプロデュース統括部の堀俊氏は次のように説明します。
「Marketing Cloudはメールだけでなく、LINEや広告レコメンデーションなどさまざまなチャネルに対応しています。また外部サービスとも広く連携可能で、その名の通りマーケティングにまつわる機能を網羅していた点を高く評価しました」
既存のメルマガ配信製品をMarketing Cloudにリプレースしたところ、応募者の属性や行動履歴に応じたきめ細かなメルマガ配信を効率的に実施できるようになり、メール配信の処理自体も極めて安定しているといいます。
導入効果を受け、現在同社ではメールだけに留まらず、LINEメッセージやモバイルアプリのプッシュ通知などを通じた応募者への訴求をMarketing Cloudを使って実現すべく、開発作業を進めています。
4. Slackの全社導入で「デジタルオフィス」へ
こうしてSalesforceの各種サービスを用いてさまざまな業務課題を解決してきたディップですが、2020年にコロナ禍が発生し、大半の社員が一斉にテレワーク体制に移行した際にには課題に直面しました。
「約2000人が一斉にリモート環境で働き始めたのですが、これまでオフィスで互いに顔を合わせてカジュアルにコミュニケーションをとっていた場が失われてしまったことで、社内コミュニケーションの密度が一気に薄くなってしまったのです」(進藤氏)
そこで同社はこの問題を解決すべく、オンライン上にバーチャルなオフィスを設ける「デジタルオフィス」の構想を立ち上げ、これを実現するためのコミュニケーションツールの導入検討に乗り出しました。さまざまなツールを比較検討した結果、最終的に同社が選んだのがSalesforceが提供するビジネス向けコミュニケーションツール「Slack」でした。
ディップ 商品開発本部 メディアプロデュース統括部 PROエージェント編集部 部長 吉野雄大氏は「スタンプ機能などを用いて、若い社員同士がカジュアルにコミュニケーションをとれる点が弊社の社風にマッチしていました。また社内のさまざまなITツールをまとめる“ハブ”としての機能も持たせたかったのですが、その点Slackは外部システムとの連携を柔軟に行えるため弊社のニーズにぴったりでした」と説明します。
2020年11月から全社で一斉にSlackの利用を始めましたが、その直後から利用率が一気に約9割にまで達し、あっという間に利用が定着しました。Slack上でコミュニケーションをとりながら仕事を進める文化が短期間のうちに根付いたことで、社内メールが月間で800万通減ったほか、会議の数も1500減るなど、従来のコミュニケーション手段がSlackに置き換わったのです。
当初企図していた「デジタルオフィス」の構想を、Slackの導入によって実現したディップ。進藤氏はこの結果を受け、今後Salesforce製品の利用をさらに高度化していきたいと抱負を述べます。
「例えばSlackをGPTのAI技術と連携させたり、SalesforceのAIプラットフォーム『Einstein AI』と自社開発のCRMシステムと連携させるなど、AIを使ったソリューションにぜひチャレンジしたいですね。また現状ではSalesforceの製品がサービスによって別々に運用されていますが、他のシステムも含めてOneプラットフォームとして互いのデータを連携させることで、より高度なデータ活用を実現できればと考えています」