サポートセンター/コールセンターを持たない製造業がとるべき障害・クレーム対応
インシデント発生時に1次窓口となる「現場」の実態
重要な顧客接点のひとつでもあるサポートセンターやコールセンター。しかし、すべての製造業がその体制を持てるわけではありません。インシデント対応や保守サポートを受けるための専用窓口を持たない企業は、営業部や品質管理部、技術開発部といった、多岐にわたる「現場」の部署がその対応を担当することになります。顧客からの連絡がインシデント報告やクレームである場合は、迅速な対応と解決が必要となり、通常業務よりも高い緊急性が求められます。
多くの企業では、インシデント発生時の対応プロセスは事前に決められています。現場が混乱するのは、インシデント発生時に詳細を知る担当者が不在だったなど、想定外のケースの場合です。迅速な解決を求めるがゆえに、関係者の間でさまざまな情報が交錯し、混乱を一層加速させてしまうという事態も起きてしまいます。
対応に時間がかかれば、顧客が被る損害も大きくなる
迅速さが求められるインシデント対応において、関連情報の分散は致命的にもなりかねません。迅速かつ最適な対応には、インシデントの詳細情報、顧客情報、契約内容、案件の詳細情報、関係する社内外関係者一覧など、多くの情報が必要になります。
しかし、対応に必要な情報が分散している場合には、その都度収集することになり、多くの手間と時間がかかります。また、情報伝達についても、関係者へのメールに情報記載する、情報のファイルを添付する、情報ファイルへのリンクを貼る、などさまざまな方法をとらざるを得ず、ところどころで情報伝達のぬけ漏れが発生して情報の交錯を招く恐れがあります。このようにインシデント対応時のコミュニケーション手段がメールである場合、他業務の受信メールと混在して重要なインシデントメールを見落とす可能性もあります。
情報基盤の整備で、クレームを顧客満足度向上につなげる
顧客情報の分散は、インシデントやクレームなど迅速性が求められる対応の足かせとなり、顧客満足度の低下を招く大きな要因となります。反対に、顧客に関するあらゆる情報が一元管理されていれば、顧客から連絡があった場合に、これまでのやりとりや契約内容などを把握した上で最適な対応ができ、顧客から信頼を失うことなく、信頼が増すことすらあります。
企業における顧客情報の一元管理を担うのが、CRM(Customer Relationship Management)です。CRMは営業部門の営業支援や、コールセンターやサポートセンター用の情報管理として活用されるツールです。顧客カードのようなプロファイルはもちろん、顧客からの連絡内容や保守サポートの作業内容も蓄積し、顧客企業とのやりとりや顧客企業における自社製品・サービスの稼働状態がすべて把握できます。導入済み製品の情報だけでなく現在進行中の商談など顧客に関するあらゆる情報が一元管理されるため、顧客からの問い合わせに誰でも適格で迅速な回答と対応ができるようになります。
IoT活用との連携で顧客対応を迅速にかつ確実に
専用のコールセンターやサポートセンターを持たない企業にとって、現場の人的リソースだけで最適な顧客対応を可能にするIoTと連携したCRMツールはとても大きな恩恵をもたらします。
バーチャルチームで顧客対応するための基盤「Service Cloud」
CRMのなかでも保守サポートやサービス部門の基盤として多く利用されているのが、米国セールスフォース・ドットコムの「Service Cloud」です。システム構築が不要なSaaS型で、スピーディーに導入と利用ができることも多くの企業で利用が進んでいる理由のひとつです。
顧客情報の一元管理とともにコミュニケーションの効率化も実現できる機能があることも大きな特徴です。Chatterと呼ばれる社内SNSの機能を使えば、Facebookのような手軽さで複数人での情報共有をスムーズに進めることができます。Chatterであればプロジェクト単位でのやりとりを簡単に表示できるためコミュニケーションが効率化できます。メールの受信トレイの中から苦労して探す必要がありません。
インシデントやクレームに関する対応をService Cloud上で行うことで、すべての活動記録がService Cloudに残ります。もし同様のインシデントやクレームが発生した場合、それらの活動記録は解決のための情報として利用できるため、部門としての業務ノウハウを蓄積できるようになります。優れた部門の解決対応方法をベストプラクティスとして企業全体で共有することもできます。
インシデントやクレーム管理をメールや表計算ソフトで行う時代は終わりました。整理された情報は顧客満足度向上の武器になると気づいた企業は、クラウドサービスを利用したサービス部門の活動管理へと、組織的対応の仕組みを進化させているのです。